トマトが真っ赤に熟れるまで 第13章 営業のいろはの続き? | 【税理士】社長と会社を元気にする会計事務所

 

 

こんにちは、松井です。

 

 

 

 

 

この「トマトが真っ赤に熟れるまで」は、

毎月、クライアント向けに書いている

ストーリーです。

 

 

 

 

 

きっと何かのヒントになると思うので、

少し長めですが、どうかおつきあいください。

 

 

 

 

 

 

是非こちらも読んでみてください。

⇒ トマトが真っ赤に熟れるまで 第9章

⇒ トマトが真っ赤に熟れるまで 第10章

⇒ トマトが真っ赤に熟れるまで 第11章

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トマトが真っ赤に熟れるまで

 

 

 

【前回までのあらすじ】

 

  主人公の藤原和彦は、淡路島でトマトを生産する農業生産者。ある冬の寒い日、藤原のハウスに侵入したみどりは、藤原にみつかって逃げようとしてラックにぶつかったショックで記憶障害になってしまう。

 

 

 

  資金繰りに困った藤原は、融資の相談に行った銀行で、公認会計士の三浦と出会う。初対面なのに自分の状況をズバリ言い当てる三浦の心眼に心服するが、ポルシェを売ることを相談に乗る条件と言われて困ってしまう。

 

 

 

  ポルシェを藤原に売った張本人の角川のフォローもあって、三浦からのお題もなんとかクリアする。角川に環境整備について教えてもらった藤原は、すぐに実践しようと意気揚々と帰宅するが、唯一の取引先である小売店の店長からの「取引中止」の電話に無意識に快諾してしまう。困った藤原は角川に泣きついて、情熱と笑顔の重要性を教わって意気揚々と帰宅する。三日坊主で落ち込む藤原はみどりと角川から貴重なアドバイスを受けるのだった。

 

 

 

 

 

 

第13章 営業のいろはの続き?

 

「またよろしくお願いします」

 

 藤原は、持ってきたサンプル用のトマトを袋に入れて、丁寧にお辞儀をしてから事務所を出た。これでもう断られるのは何軒目だろうか。

 

 藤原は、スーパーを片っ端から回っている。藤原が持っていったサンプル用のトマトを食べると、誰もが「美味しい」と言ってくれる。できれば置きたいとも言ってくれる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 しかし、もう先に仕入れているトマトがあるので、それに代えて仕入れようとは思わないと、判で押したようにみんな同じことを言うのだ。どうすればいいのだろう……。

 

 角川に営業のいろはを教えてもらってから二週間が経っていた。毎朝、自分の仕事に情熱を持つようにしており、三十分の笑顔の練習も欠かさずやっている。最初の頃こそ、寝坊したり忘れたりして自分を責めそうになって、みどりに注意されていたが、今ではすっかり習慣化していた。

 

 

 

 

 

 当初は、笑顔になれなくて苦労したが、朝の特訓のおかげで、少しずつできるようになってきていた。まだまだ笑顔が足りないのかなぁ。

 

 そう思ってポルシェに乗り込もうとした時、誰かが後ろから駆け寄る音が聞こえてきた。振り返ると、さっきまで話していたバイヤーだった。

 

 

 

 

 

「何か忘れ物でもしましたか?」

 

「いえ、忘れ物はありません」

 

 そう言ったきり、バイヤーは黙りこくっている。藤原は、次の言葉を待っていたが、いつまで経っても話そうとしないので、焦れて先を促した。

 

 

 

 

「どうかしましたか?」

 

 どうやら続きを話すのをためらっている様子だったが、少し間を置いて、ようやくバイヤーが言葉を口にした。

 

「ボクが言ったことは、内緒でお願いします」

 

「……わかりました」

 

 

 

 

 

 

 少し迷ってから、小さくうなずいた。バイヤーが何を言おうとしているのか皆目検討がつかなかったが、早く先を聞きたかった。

 

「いったい何をしたんですか?」

 

 バイヤーの言う意味がわからなくて、オウム返しに聞いていた。

 

「いったい何をしたか? えっ、どういう意味ですか?」

 

 

 

 

 

 

「あなたの噂は最悪ですよ。約束は平気で破る、連絡しても無視する、挙句の果てに乱暴まで振るう。だから、たぶんどこのお店に行っても、断られると思いますよ」

 

 噂の犯人の顔がすぐに思い浮かんだ。藤原は、教えてくれたお礼を言って、その場をあとにした。

 

 どうしてそんな根も葉もない噂を流すのだろう……。そう思ってから、藤原はみどりが店長に平手打ちをしている絵を思い浮かべた。そうか、根も葉もない訳でもないか……。それにしても……。

 

 

 

 

 

 

 藤原は、いつもならクルマの運転をしている間中、運転する歓びでいっぱいなのだが、今日ばかりはどうしても気分が盛り上がらない。

 

 トマトは、とりあえず産直(産地直売の売場)に持っていっているため、売り先がみつからなくてもトマトを捨てる必要はない。

 

 しかし、その産直のやり方は、トマトが売れれば売上になるが、売れ残った場合は返品(実際には廃棄される)のため、結果がすぐにわからない。しかも、売値は、産直が決めるため、全体の量が多いと安値になる可能性がある。

 

 

 

 

 

 しかも、二ヶ月後の入金のため、今どれだけのお金が使えるのかが皆目わからないことになる。そもそも、全量近く売れればいいが、ほとんど売れない場合は、捨てたのと同じだ。

 

 そんなこともあって、藤原はなんとしても早く新しい売り先をみつけたかったのだが、まさか邪魔されていたとは……。道理でどこに行っても相手にしてもらえなかった訳だ。

 

 藤原は散々迷ってから、意を決して角川に電話を掛けた。

 

 

 

 

 

「もしもし、和(かず)ちゃん、どうした? 彼女でもできたか?」

 

 いつもの弾んだ声が電話の向こうから飛んできた。

 

「い、いえ……。彼女はまだいません……」

 

「ははは、わかってるよ。相変わらずマジメやなぁ。どうせ営業がうまくいってないんやろ?」

 

 

 

 

 

 

 角川には全部お見通しだ。

 

「そうなんです……。実は、前の取引先の店長が悪い噂を流しているみたいで……」

 

「そら十分あり得るわな。あのお嬢ちゃんがその店長さんをひっぱたいて、和ちゃんも謝りにも行ってないんやろ? で、顔も見ずに電話口で向こうの言うたとおり、取引を停止したんやから。そのぐらいはされてもおかしくないやろ」

 

 

 

 

 

 角川はさも当然という感じで、全く気にしていない様子だった。

 

「確かにうちにも非があるとは思いますが、それにしてもやり方が……」

 

「陰湿やし、最低やと思うよ。だからこそよかったやん。そんなところと決別できて。それとも何か? またその店長を評価して怒りのダークサイドに落ち込んでるんか?

それとも、自分を評価してるんか? この前話したこと忘れたんか?」

 

 

 

 

 

 

 

 藤原は、角川に「自分も他人も評価するな」と言われたことを思い出した。

 

「和ちゃん、ラベリングしてるか? 完全に妄想に飲み込まれてるで」

 

「妄想? 妄想なんてしてませんよ。ただ、なぜそんな噂を流すんだろうって、それが気になって……」

 

 

 

 

 

 

「それが妄想やん。あのな、人間が考えるほとんどは妄想やねん。店長のことを思い出して、あーでもない、こーでもないって想像してたんやろ? 実際にあったことではなく、たぶんこういうことやろうって頭の中でつい考えてしまうのが妄想や。その話はまた今度するとして、それで和ちゃんはどうするつもりなん?」

 

 藤原は、角川にそう聞かれて、困ってしまった。どうすればいいか全く思いつかなかったからだ。考えろ! 考えろ! 藤原は、心のなかで自分に向かって叫んだ。

 

 

 

 

 

 

「さっきのバイヤーに、もう一回話をしに行こうと思います」

 

「なんでそう思ったん?」

 

「気さくで親切そうだったし、なによりボクの噂が流されたことをこっそりと教えてくれたので、何回か通ってもっと仲良くなれば、取引してくれそうな気がするからです」

 

 

 

 

 

「なるほどな。逆に、厳しい人はおらんかった? 全く話を聞いてくれへん人とかおらん?」

 

「いましたよ。ボクのトマトに目もくれないで、今は忙しいから帰れってけんもほろろに……。もう二度と会いたくないです……」

 

「その人がええわ。その人にもう一回会いに行って営業しておいで」

 

 

 

 

 

「え〜〜〜〜〜っ! 嫌ですよ! どうしてそんなイジワル言うんですか!」

 

「イジワルなんてしてへんよ。ホンマにその人がええと思うから薦めてるんやん」

 

「ちゃんと理由を言ってください」

 

 電話の向こうで一瞬間があってから、角川は言った。

 

 

 

 

 

 

「さっき会ってたバイヤーさんは、和ちゃんも電話しやすいやろ?」

 

 角川が何を言おうとしているのか、藤原にはわからなかった。

 

「……はい、そうですね」

 

「で、会いやすいし、話しやすいんちゃう?」

 

 

 

 

 

 

 角川は当たり前のことを聞いてくる。

 

「そのとおりです。だから、いいかなって」

 

「和ちゃんが会いやすいって事は、他の人も会いやすいってことやで?」

 

「えっ、どういうことですか?」

 

 

 

 

 

 

「他の営業マンも会いやすい。つまり、いろいろな人から営業を受けやすいんや。だから、ライバルも多いってことや。ということは?」

 

 あっ、と藤原は声を漏らした。

 

「難しい相手ってことですか?」

 

「そのとおりや」

 

 

 

 

 

 

 電話の向こうで角川がニヤニヤしているのがわかる。

 

「逆にさっきの会ってくれなかった人。ホンマにその時はすることがあって忙しかっただけかもしれんやん。そういう人ってな、最初は冷たくしておいて、それでも向かってくる奴だけを相手にするっていう、会う人を選んでる場合が結構あるんやで」

 

「そうなんですか!」

 

 

 

 

 

 

「うん、最初に試すんや。簡単に引き下がるか、それでも向かってくるか。それとな、さっきの逆でそういう人は、ライバルが少ないから一旦気に入られると大事にしてくれる事も多い。他の誰かを紹介してくれたりな。だから、難しそうな人から狙うのも手やねん」

 

「なるほど!」

 

 そう言ってから、また藤原は弱気になった。

 

 

 

 

 

「でも、ボクはまだ営業のいろはをやっと教えてもらったばかりなので、あの人を落とせる自信がありません……」

 

「しゃあないな。じゃあ、オレがいっちょ手本を見せたろか?」

 

「えっ! ホントですか!」

 

 藤原は、嬉しくなって思わずその場で飛び跳ねたのだった。

 

 

 

 

 

 翌日、大雨の中、藤原と角川は「グリーンスーパー」にいた。例のバイヤーに会うために。さっきから一段と風が強くなり、横なぐりの雨が二人の服を濡らしていた。建物から出てきた男を見て藤原が言った。

 

「あの人です」

 

 手足がひょろ長いその男は、細身のネイビーのスーツを着ていた。スーツが新しそうなのに対して、銀縁のメガネは年代物に見えた。スーツと眼鏡がなんともアンバランスだった。

 

 

 

 

 

 

 二人が近づいて会釈をすると、男は神経質そうな表情を藤原に向けた。

 

「ん? 誰だっけ?」

 

「こんにちは、トマトを作っている藤原です」

 

 藤原は、できる限り明るい声を出した。

 

 

 

 

 

 

「あー、この前の? 懲りずに来ても結果は一緒。では」

 

 男が立ち去ろうとするのを、藤原は手をあげてなんとか制した。

 

『ちょっとだけでいいので、お時間をください!』

 

 男は怪訝そうな視線を走らせた。藤原が角川に目配せする。

 

 

 

 

 

「あのですね……」

 

 角川が上ずった弱々しい声を出す。いつもの自信満々の声のトーンではなかった。

 

「いい天気ですね……?」

 

 三人とも傘をさしているのを忘れたのか……。

 

 

 

 

 

 

「は?」

 

 明らかに男はいらだち始めていた。

 

「その……なんと言うか……」

 

 明らかにいつもの角川ではなかった。数秒の沈黙があって、角川が言い放った言葉を聞いて、藤原は自分の耳を疑った。

 

 

 

 

 

 

「その眼鏡どうしたん? なんかえらい年季入ってるけど。ハッキリ言うて、その眼鏡とスーツ、全然似合ってないで」

 

 男の顔が、みるみる赤らむ。藤原は自分でも血の気が引いていくのを感じた。

 

「人を呼び止めて言うセリフがそれか! 帰ってくれ!」

 

 

 

 

 

 男はそれだけ言うと、大股で歩いて行ってしまった。藤原は、角川の顔を見る気にもなれなかった。藤原の気持ちを表すように、雨が激しさを増した。傘を持つ手が冷たくて、仕方がなかった。

 

 

(つづく)

 

 

 

 

 

 

 

 

さて、話の展開が少し変化してきましたが、

次回、角川さんがどんな言い訳をするのか、

私も楽しみです(笑)

 

 

 

 

何かのヒントになることを祈りつつ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


  松井浩一公認会計士税理士事務所
  兵庫県芦屋市宮川町1-10-304 
  0797-25-1575(平日9:30~17:30)
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