リッちゃんの質問に、答える間もなく、光がクロスしているところに着いた。

サブちゃんの声が聞こえてきたので、リッちゃんが

『ちゃんと聞かなくていいの』って、僕に言った。僕は、リッちゃんの言ったことに、返事をする間もなく、自分の意志の全く関係なく、リッちゃんの背中から、すーっと光がクロスしている真ん中に体を持っていかれた

『元ちゃん、元ちゃん』って言う、リッちゃんの声が後ろから聞こえているし、サブちゃんの声も、はっきりと聞こえている。

地上では、やっぱり、誰かがボタンを押したんだ、一度は回避されたのに、きっと多くの人が犠牲になったんだろうな。それで、地球が怒ってしまって、大雨を降らせているんだ。地上には、人間じゃいない生き物もいっぱい住んでいるのに、また人間の犠牲になったんだ。人間の中の、ほんのわずかな一握り人間の行ないでって、いろんなことを、僕は勝手に思った、一瞬の間に。でも、サブちゃんの言っていることが、僕の想像していたのと違う、僕とリッちゃんは、勝手に誰かがボタンを押したって、そしてどこかの空には、恐ろしいきのこ雲がって思ってしまった。

ああ、あれ、そうじゃないんだ、ふー、良かった。えー、じゃあ、なんで大雨なんだ、それも世界中がって、僕は思った。サブちゃんに聞きたい事は、いっぱいあるけれど、今の僕は、光がクロスしている真ん中にいって、今まさに僕の前足と後ろ足が、壁に出来ている僕の足跡伸びそうになっている。そんな中で、質問をする余裕が、僕にはない。みんなが、サブちゃんに質問しているのを、あーあ、僕の手が足がって思いながら、聞いているしかない。

リッちゃんは、僕がスーッと吸い込まれるように光のクロスの中に入ってしまったら、何故か、僕の方を見ようとしたら、自分の意志とは関係なく、体が勝手に下に下りてしまった。

みんなは、リッちゃんが下りて来たので、上を見ようとしたんだけれど、みんな上を見ることが出来なくなっていた。多分、それはいいことだと思う。だって、猫の手と足がダーって伸びているんだ、自分で想像しただけでも気味が悪いし、そんな僕の姿をみんなが見たら、心配するだろうから。

ただし、ホープ君だけは、見ていたんだ。ホープ君は、僕が光のクロスの真ん中に入ってからは、身動きも出来なければ、言葉も発せられなくなっていたから、僕の方を、ただ、心配そうに見ているしかなかったんだ。


みんなは、何で上を見ることが出来ないのかなって思いながら、サブちゃんに

『落ち着いて、話して、何があったの、きのこ雲じゃないんだよね』って、アッちゃん


          つづく


『元ちゃん、どうしたの。そんなに強く舐めると、毛が引っ張られて痛いよ』って、少しだけ笑いながら、でも、目だけは笑わずに、リッちゃんが言った。

『うんん、なんかリッちゃんが可愛くて』って、僕が言うと

『リッちゃんの方が、体が大きいけれど、リッちゃんは、元ちゃんの弟なんだものね』って、愛ちゃん

『そう、どんなに体が大きくても、僕の可愛い弟だから』って、僕

『集めたよ。みんなの涙、さあ、始めよう。えーと、どこにかけようか』って、空君が

『じゃあ、首と胸にかけて』って、僕

『元ちゃん、今度は、ちゃんと戻ってね』って、愛ちゃん

『愛ちゃん、そんなに深刻な顔しないで、僕は、ちゃんと帰ってくるから』って、僕

『愚かな人間のせいで、本当に申し訳ない』って、隊長さん

『やだな、隊長さん、そんなこと言わないで、僕らには、いっぱい守りたいものあるんだから』って、僕。

『リッちゃん、お願い』って、僕が言って、りっちゃんの背中に乗って、さあ、っていう時に、サブちゃんからテレパシーが

『元ちゃん、すごい雨が、風も、公園の木が根元から倒れたり、川も水が溢れている。他所の町では、土砂崩れとかしているみたい。それと、この雨は、日本だけじゃないらしい、よく分かんないんだけれど、飼い猫さんたちや飼い犬さんたちからの情報によると、世界中が大雨なんだって、それも突然。空も真っ暗だし、長老たちは、何か悪いことの前ぶれだって言うし、鳥さんたちもどこかに、みんな飛んで行ってしまった。虫さんたちは地中の中に、僕らは、隠れるところがないんだ。ほら、みんなが雨露をしのいでいた小屋が取り壊されたから、みんな右往左往している』って、サブちゃんが悲痛な声で、その声に混じって、猫さんたちが騒いでいる声が聞こえる。

『サブちゃん、もう少しだけ待って、もう少しだけ頑張って、これから地軸を元に戻すから』って、僕

『いったい、地上では、何が起きたの。地上には、モンスターはいないんだよ』って、空君が聞く。

僕は、サブちゃんからの返事来る前に、光がクロスしているところに向う、ほんの何秒っていう間、僕はリッちゃんの背中で

『誰かが、ボタンを押した』って、つぶやいた。

『元ちゃん、それって』って言いながら、リッちゃんの背中が震えた。


      つづく




ホープ君は、両掌に石を乗せたまま、動けなくなっている。

『元ちゃんは、僕、この体制から、動けないよ。手も足も、固まっているみたい』って、ホープ君

それは、ホープ君に言われなくても、みんな、ホープ君の姿を見ているだけで分かった。

『分かった、きつくない』って、僕が聞くと

『それは、大丈夫だけど、僕が、このまま動けないってことは、僕がすることは、これだったってことになる。父さんと母さんの石から出ている光は、元ちゃん、元ちゃんが』って、ホープ君

『そうだよ、元ちゃん、あとは、元ちゃんが、ホープ君とホープ君の、お父さんとお母さんからの、バトンを繋げなくちゃ。それにしても離れてすぎているよね、どうやって右と左の壁の足跡に足を掛けるの。猫の股割きになっちゃうよ』って、真剣な顔でリッちゃんが

『えっ、股割き。駄目だよ、そんなこと。ああ、みんな、僕のその姿を想像している』って、僕は、むっとして言った。

『そんなことないよ。けど、じゃあ、どうするの。どうやって、地軸を元に戻すの』って、空君が、僕の方を見た

『やってみるしかないか』って、僕が言うと

『僕が、元ちゃんをあの光のクロスしているところまで、連れて行くよ。元ちゃんのこと股割きなんかにさせないから、危険な空気がしたら、僕が守るから』って、リッちゃんが、涙目になりながら言った。

『ホープ君、手、熱くないの』って、愛ちゃんが

『それは、大丈夫。この石は、父さんと母さんだから』って、ホープ君

『そうか、お父さんとお母さんか、ホープ君は、石に守られているんだよね。僕は、ママやキャットマザーやドッグマザーに、そしてみんなに守られているんだ。絶対そうだ。ねえ、ママたちが、僕らが、天界を出るときに言っていたの覚えている。何か困った時は、ペンダントの涙が助けてくれるって、だから、僕にかけて、みんなのペンダントの涙を』って、僕が言うと

『忘れていた、僕らの涙、ママたちの涙も入っていたんだ。絶対に、元ちゃんのこと守ってくれるよ』って、アッちゃん

『そういうことなら、人前で涙を流すことは好まないけれど、私の涙も、使って欲しい』って、隊長さん

『僕の涙も、役に立てるだろうか』って、エナジーさん

『ああ、僕のも使って』って、ホープ君

『わー、なんか、僕、勇気が出てきた』って、僕

『元ちゃん、頼もしい』って、愛ちゃんが

『じゃ、みんなの涙を元ちゃんのペンダントに集めよう』って、空君

『今度は、ゲーム機のときみたいに、暗闇の中を彷徨わせたりしないから、安心して』って、リッちゃんが目茶苦茶シリアスな顔で言った。

そんなリッちゃんのことが、僕は、たまらなく愛おしくなって、リッちゃんの頬をジャリジャリと舐めた。


       つづく