こんばんは!まずは皆さん、乾杯っ!赤ワイン

 

 

遂にこのワインを飲む日がやってまいりました。そのワインは「シャトー・ムートン・ロートシルト 1998」です。20年くらい前に漫画「神の雫」を読んで知った高級ワイン。第1巻で主人公の雫とライバルの遠峰一青が、神咲邸を賭けて挑むブラインドテイスティングに登場したのが、ムートン・ロートシルトでした。あの時の衝撃は今でも覚えています。

 

シャトー・ムートン・ロートシルト 1998 タマヨラベル

 

とてもワインに支払える額では無いと思い、私の人生とは関係の無いワインだと思っておりました。ボルドーの五大シャトーといえば、ワインに縁の薄い下戸でも名前だけは知っている、雲の上の存在。当ブログでは同じポイヤックのシャトー・ランシュ・バージュ 1994や、ムートンの造り手が手がけるアニョー・ルージュで、その「麓」までは登ってきましたが、頂上は見上げるだけのものでした。

 

 

が、人生とは数奇なもので、この「シャトー・ムートン・ロートシルト 1998」を飲む機会が巡ってまいりました(タダってわけでは無いですよw)。目の前に現れた1998年のラベルは、メキシコの画家ルフィーノ・タマヨ『ブリンディス(乾杯)』デザイン。赤い太陽の下で杯を掲げる人物が描かれた、力強く、どこか土の匂いのする絵です。はい、既に緊張しております。

 

 

ムートンといえば、1945年から毎年、世界的なアーティストにラベルを描いてもらっていることで知られています。ピカソ、シャガール、ミロ、ウォーホル。ワインを飲む前に、ラベルの絵を眺めるだけで一つの美術館。そして1998年のタマヨのラベルには、裏ラベルに書かれた、少し切ない物語があります。それは後ほど。

 

 

果たしてその味わいを理解し愉しむことができるのか!? 下戸で酒初心者の私が、27年熟成の五大シャトーを前に、何を感じ取れるのか。ペアリングには和牛のステーキ。グラスに注がれた深い色の液体を見つめながら、まずは深呼吸ですウインク

 

 

シャトー・ムートン・ロートシルト 1998とは?

シャトー・ムートン・ロートシルト ロゴ

 

まずはシャトー・ムートン・ロートシルト(Château Mouton Rothschild)について。所在地はフランス・ボルドー、メドック地区のポイヤック村。裏ラベルには「ポイヤックに75ヘクタールの畑を持ち、ボルドーの典型的な品種を植えている」とあります。1853年、ロスチャイルド家のナタニエル・ド・ロスチャイルド男爵がこの畑を取得し、シャトーの名前に「ロートシルト(ロスチャイルド)」を加えたのが始まりです。

 

 

ムートンを語る上で欠かせないのが「格付け昇格」の物語。1855年のメドック格付けで、ムートンは第2級とされました。ラフィット、ラトゥール、マルゴー、オー・ブリオンの4つが第1級。これを悔しがったのが、1922年に20歳でシャトーの運営を任されたフィリップ・ド・ロスチャイルド男爵(1902-1988)。「一級にはなれず、二級には甘んじず、我はムートン」という格言を掲げ、半世紀にわたって働きかけ続け、1973年、ついに第1級への昇格を勝ち取ります。1855年の格付けが変更された、唯一の例です。格言はこの時「我は一級、かつては二級、ムートンは変わらず」に書き換えられましたニコニコ

 

 

フィリップ男爵のもう一つの功績がアーティストラベル。1945年の終戦を記念して画家にラベルを依頼したのを皮切りに、1946年以降は毎年、世界的な芸術家がムートンのラベルを描いています。ピカソ、ミロ、シャガール、ダリ、ウォーホル、そして日本からも堂本尚郎(1979年)や塩田千春(2021年)が名を連ねています。裏ラベルには「1945年以来、毎年、著名なアーティストが完全な自由のもとでムートンのラベルのために作品を制作している」と書かれています。男爵の死後は娘のフィリピーヌ・ド・ロスチャイルド男爵夫人がシャトーを継ぎ、このボトルの裏ラベルにも彼女の名前が記されています。

 

シャトー・ムートン・ロートシルト1998 ルフィーノ・タマヨラベル

 

さて、1998年のラベルについて。描いたのはメキシコの画家ルフィーノ・タマヨ(1899-1991)。裏ラベルを訳すと、こんな物語が書かれています。「1990年、メキシコの偉大な画家ルフィーノ・タマヨは、ラベルの制作を引き受けてくれた。しかし運命はそれを許さなかった。彼の遺族は、作品の一つを私たちに託すことで、芸術家の遺志を今日叶えることを望んだ」。タマヨは依頼を受けた翌年に亡くなり、遺族が遺作の中から「ブリンディス(乾杯)」を選んでラベルにしたのです。「赤く燃える太陽の下、描かれた飲み手は、ありふれた民衆の儀式を、剥き出しの欲望の鮮烈な寓意へと変容させる」。ラベル一枚に、これだけの物語があります。

 

 

本題の1998年ヴィンテージについて。公式によれば、セパージュはカベルネ・ソーヴィニヨン86%、メルロー12%、カベルネ・フラン2%。収穫は9月28日から10月6日。ボルドーの1998年は「右岸の年」と言われ、メルロー主体のサンテミリオンやポムロールが大当たりした一方、メドック側は9月から10月の雨で厳しい収穫を強いられました。それでもポイヤックでは力強いカベルネが出来た年で、ムートン1998はその中でも傑出した一本とされています。

 

 

評価も高く、ロバート・パーカーは96点をつけ、「飲み頃の真っ只中」と評しています。パーカーの見立てでは飲み頃は2012年から2050年までと長く、評論家のジェブ・ダナックも2023年に95点をつけ、やはり「飲み頃の真っ只中」と評しています。容量は750ml。アルコール度数は公式には記載がありません。前回のランシュ・バージュ1994が「30年の時が溶かしたポイヤック」なら、こちらは27年。同じ村の、格付けの頂点。前回の経験が、どこまで通用するでしょうか。

 

 

シャトー・ムートン・ロートシルト 1998をチェック!

 

シャトー・ムートン・ロートシルト1998ラベルとワイン

タマヨ「ブリンディス」のラベルと、鳥の首のようなデキャンタ。

赤いキャップシールにロスチャイルド家の紋章。

 

 

シャトー・ムートン・ロートシルト1998 タマヨラベル

グラスの中は深いガーネット。

27年の熟成でエッジにわずかにレンガ色が差しています。

 

 

シャトー・ムートン・ロートシルト 1998 タマヨラベル

裏ラベル。

ポイヤック75haの畑、フィリップ男爵(1902-1988)と娘フィリピーヌ、1945年以来のアーティストラベル、そして1990年に依頼を受けたタマヨと遺族の物語。

スペックは以下の通り。

 

 

銘柄 Château Mouton Rothschild 1998(シャトー・ムートン・ロートシルト)
格付け・産地 メドック第1級(1973年昇格)/フランス ボルドー ポイヤック(AOC Pauillac)
セパージュ カベルネ・ソーヴィニヨン86%、メルロー12%、カベルネ・フラン2%(公式)
収穫 1998年9月28日〜10月6日
ラベル ルフィーノ・タマヨ『ブリンディス(乾杯)』(1990年依頼、1991年逝去、遺族提供)
所有者(当時) フィリピーヌ・ド・ロスチャイルド男爵夫人
評価 ロバート・パーカー96点(飲み頃2012〜2050)/ジェブ・ダナック95点
容量 750ml(アルコール分は公式記載なし)
参考価格 750ml 実勢12万円前後(蔵出し木箱入りの例)

 

 

シャトー・ムートン・ロートシルト 1998を飲んでみての評価

 

シャトー・ムートン・ロートシルト1998 タマヨラベル

 

デキャンタからグラスへ、深いガーネット色の液体がゆっくりと注がれます。縁にうっすらとレンガ色が差しているのは、27年という時間の証。グラスを回すと、その時点でもう、テーブルの向こうまで香りが届きそうなほど、華やかな香りが立ち上ってきました。

 

 

神の雫で雫が「ミレーの晩鐘」と表現したムートン。あの漫画を読んでいた20年前の自分に、「いつかこれを飲むよ」と教えてあげたい。緊張で少し手が震えますが、和牛のステーキが運ばれてきた今が、その時です。まずは香りから、ゆっくりと。

 

 

:

:

:

尋常ではない華やかさ。

27年の時が溶けた、黒カシスとミネラルの余韻。

 

 

 

 

何と言っても香りの華やかさが尋常ではありません! グラスを近づける前から、香りがこちらに向かってくる。私の鼻で感知できたのは、よく熟した黒カシスのような果実感が広がり、その奥からひんやりとした深いミネラル感が支えているように感じました。カベルネ・ソーヴィニヨン86%の黒い果実が、27年の熟成で角が取れて、甘く、深く、それでいて芯に冷たい石のような硬さがある。ランシュ・バージュ1994で感じた熟成香よりも、果実がまだ生き生きしている印象です。

 

 

アタック(口当たり)はとてもシルキーでマイルドな質感が広がり、アルコール感が優しい果実味に心地よく包み込まれているようです。ボルドーの第1級というと、若いうちは渋くて硬いイメージがありますが、27年を経たこの一本は、口に入れた瞬間から絹のように滑らか。アルコールの刺激がまったく前に出ず、果実味の中に溶けています驚き

 

 

そして余韻。熟成によって美しく溶け込んだタンニンの渋味が、どこまでも続くかのような長い余韻の中で心地よく泳ぎ続けます。タンニンはもう「渋い」というより「輪郭」。口の中に、ずっと細く長く残り続けて、次の一口を促してくる。エレガントな余韻のなかで、贅沢な一体感を堪能できます。香り、果実、ミネラル、タンニン。どれかが突出することなく、全部が一つになっている。これが「五大シャトー」の意味なのか、と腑に落ちました。

 

和牛ステーキの断面、赤身と脂のバランスが良い

ペアリングは和牛のステーキ。

サシの入った赤身に、焼き目の香ばしさ。

 

ペアリングに食べた和牛のステーキですが、和牛ならではの旨味の乗った脂と赤身が、ムートンの果実感とタンニンの渋みがギュギュっと美味しさを濃縮し、口の中いっぱいに美味しさが広がっていきます。脂の甘さを果実が受け止め、赤身の旨味をタンニンが引き締める。ワインとステーキ、という王道の組み合わせがなぜ王道なのかを、これ以上ないお手本で教えてもらいました。

 

 

温度が上がるにつれて、黒カシスの奥から、杉やタバコの葉のような熟成香もかすかに顔を出してきます。パーカーが「飲み頃の真っ只中」と評した通り、まだ果実が元気で、それでいて熟成の深みもある、いちばん良い時期に出会えたのだと思います。もう少し先、2050年まで飲み頃が続くというパーカーの評価も、この余韻の長さなら納得です。

 

 

総評として、こんな贅沢いいのでしょうか?と、罪悪感と優越感を覚える奇跡体験でした。20年前に漫画で知り、人生とは関係ないと思っていた一本。それが目の前に現れて、しかもちゃんと「分かった」。下戸で酒初心者の私でも、香りの華やかさ、口当たりのシルキーさ、余韻の長さは、はっきりと理解できました。評価は、迷う余地なく★★★。ラベルのタマヨの飲み手と同じく、太陽の下で杯を掲げたい気分です照れ飛び出すハート

 

 

今日は映画(洋画)でペアリング!

 

 

シャトー・ムートン・ロートシルト 1998と一緒に楽しみたいのは、映画「セント・オブ・ウーマン/夢の香り」(1992年)です。監督はマーティン・ブレスト、主演はアル・パチーノ。この作品でパチーノは念願のアカデミー主演男優賞を獲得しました。盲目の退役軍人フランク中佐と、彼の世話係として感謝祭の週末を過ごすことになった苦学生チャーリー(クリス・オドネル)。ニューヨークへの豪華な旅と、有名なタンゴの場面、そして最後の演説で知られる名作です。

 

 

この作品を選んだ理由は、まず「香りで世界を把握する男」の物語だから。フランク中佐は目が見えない代わりに、香りで女性の名前や使っている石鹸まで言い当てます。今回のムートンで私がいちばん驚いたのは、何よりも香りの華やかさでした。見た目では分からない、香りだけが教えてくれる世界の深さ。あの中佐の鼻を少しでも借りられたら、この一本からもっと多くを受け取れたはずです。

 

 

もう一つの共鳴は、「人生最後のつもりの、贅沢な週末」という構造です。中佐は、ある決意を胸に、最高級ホテルに泊まり、最高の料理とワインを楽しみ、フェラーリを運転する。生涯に一度の贅沢を、惜しみなく使い切る。「人生とは関係の無いワインだと思っていた」一本を、罪悪感と優越感の中で飲み干した私の夜と、スケールは違えど同じ構造です。贅沢は、それが一度きりだと知っているときに、いちばん深く味わえる。

 

 

そして味わいの面。このワインの「シルキーな口当たりの奥に、どこまでも続くタンニンの余韻」は、中佐の「粗野で乱暴な言葉の奥にある、消えない誇り」と重なります。甘く優しく始まって、芯には硬いものがある。あのタンゴの場面で、盲目の男が見知らぬ女性を完璧にリードするときの、優雅さと緊張感。それをグラスの中で再現したような一本です。

 

 

上映時間は約157分と長めなので、デキャンタに移したムートンを、時間をかけて。前半のニューヨーク到着の場面で香りの華やかさを、タンゴの場面でシルキーな口当たりを、そして最後の演説で、長い長い余韻を。一度きりの贅沢に、ふさわしい映画だと思いますおねがい

 

 

下戸の酒好き評価点

 

 

※下戸の酒好き評価は味の良し悪しを計るものではありません。

下戸で酒初心者の私があくまで個人的な感覚で評価したものになります。

 

 

★★★

 

 

★★★ … 下戸にも酒初心者にもオススメしたい

★★☆ … 下戸、酒初心者に丁度良く幅が広がる

★☆☆ … 下戸、酒初心者には少し理解が難しい

 

 

シャトー・ムートン・ロートシルト 1998の価格&どこで買える?

 

シャトー・ムートン・ロートシルト 1998の参考価格は、750mlで実勢12万円前後。シャトー蔵出し・木箱入りのものが12万円台で、それより安い出品も見かけますが、保管状態の分からない古酒は避けた方が無難です。五大シャトーの中では比較的手の届きやすいヴィンテージとされますが、それでも一本で10万円を超える世界。「人生とは関係ない」と思っていた私の感覚は、まったく正しかったわけです(笑

 

 

買える場所は、ボルドーの古酒に強いワインショップ。エノテカのような輸入商社系の直営店や、百貨店のワイン売り場、古酒専門の通販で見つかります。1998年のような熟成ヴィンテージは、蔵出し(シャトーから直接出荷された)かどうか、保管温度が管理されていたかが命。価格だけでなく、来歴をちゃんと書いているお店を選んでください。

 

 

楽天市場やAmazonでも「ムートン ロートシルト 1998」で検索すれば出てきます。贈り物にするなら木箱入りの蔵出し品が安心。そして一本買う勇気が出ないなら、今回の私のように、レストランやワインバーでグラス一杯、あるいは仲間とボトルを分け合う、という選択肢もあります。五大シャトーは、一口でも飲む価値がある、と今回しみじみ思いました。

 

 

ムートンへの入口として、同じバロン・フィリップ・ド・ロスチャイルド社のアニョー・ルージュは千円台から。同じポイヤック村のランシュ・バージュなら、熟成の片鱗を数万円で。そして頂上のムートンへ。神の雫を読んでいた頃の自分に、ようやく報告できましたウインク

 

 

楽天市場でお得に買うならコチラ

 

 

 

 

Amazonでお得に買うならコチラ

 

 

あわせて読むともっとお酒に詳しくなれる関連記事↓

ボルドー・ロスチャイルド家のワイン

フランスワインの記事

神の雫で知ったワインたち

晩酌図鑑でこのお酒をもっと詳しく