もやしの唄には、一彦という恵五郎の弟が出てきます。
粋がっているのに、甘ったれの寂しがりやですが、恵五郎は一彦を気にかけて心配していて、喜助さんにも可愛がってもらっていました。
作者の小川さんは、一彦を写真好きな青年にして、3回写真を撮らせています。
この写真がこの物語では非常に意味を持った存在になっています。
写真は、その瞬間を100分の1秒という短い時間で切り取るものです。
一彦の撮った写真は、いずれも良かった時の瞬間を捉え、変わらないものの象徴として出てきます。
でも、その後写真に写っていたほとんどみんな変わってしまったんです。
高度成長期、色んなものが変わっていった。変わらなくてもよい日本もあったはず。その象徴として、写真が出てきたのだと思います。
とみさんの「みんな変わってしまったのね。変わらないでもよかったのにね。」という最後の台詞に凝縮していると思います。