引き続き、大井川鐵道(大井川鉄道)井川線。
(※1月14日放送の『ブラタモリ』に登場する区間です)
土本駅の手前で、大井川から分かれた寸又川を渡る。
ここには横沢という細い川もあり、3本の川が1本に合流するこの場所は、三叉峡とよばれている。
機関車が牽引する列車特有の、前後の揺れ。
土本(どもと)駅では、マンガ『鉄子の旅』でも書かれている、「駅周辺のお宅4軒のうち3軒が土本さん」という解説を聞けた。
気づいたら、ずいぶん急な崖の上を走っている。
川根小山駅で、千頭行きの列車とすれ違う。
今朝のツアー客の例があるから、奥泉駅で多くのお客さんが乗り込むかと思ったが、この列車ではそうでもなかった。
泉大橋と朝日岳が見えるビュースポットで、速度を落として走る。
この橋の下を通り、大井川を渡って、遂にアプトいちしろ駅に到着した。
アプトいちしろ('09.12.2)
(千頭(せんず)~川根両国~沢間~土本(どもと)~川根小山(かわねこやま)~奥泉~)
ここから、隣の長島ダム駅までは、アプト式区間となる。この区間には、90パーミル(9パーセント。100メートル進む間に9メートル高くなる)という、日本の鉄道では最も急な勾配がある。
箱根登山鉄道の最急勾配が80パーミルだから、あれより傾いている。
これだけ急勾配だと、普通の鉄道では上れないので、2本の線路の間に、凹凸のあるラックレールを敷き、機関車の床下についた歯車をかませて進むのだ。
これがそのラックレール。
3本のレールが、少しずつずらして敷かれている。
複数のラックレールをこのように組み合わせる方式を「アプト式」という。
アプト式の線路は、昭和30年代まで、信越本線の横川-軽井沢間にあったが、現在、日本ではここにしかない。
この駅で、アプト式の電気機関車が連結される。
その連結作業を見ようと、お客さんが全員ホームに降りた。
アプト式機関車がやってきて、編成の最後尾に連結された。
ディーゼル機関車や客車との、大きさの違いが際立つ。
さすがに90パーミルの急勾配。列車がすごく傾いていることが感覚でわかる。
このダムが建設される際、もともとあった線路がダムに沈むことになったため、新たに造られたのが、このアプト区間を含む路線である。
だからここにアプト式区間ができたのは、1990年(平成2年)と、比較的新しい。
長島ダム
5分ほどでアプト区間は終了。
電気機関車が切り離される。
長島ダム駅から見た方が、この区間の傾斜がよくわかる。
ダムの向こうに、噴水が上がるのが見えた。
長島ダム駅を出ると、ダム湖の接岨湖が見えるが、南向きで逆光になってしまった。
難読地名のためひらがなになった、ひらんだ駅(漢字だと「平田」と書くらしい)。
ここからも、引き続き接岨湖がきれいに見える。
駅を出て、長いトンネルに入った。
トンネルを抜けてすぐ、真っ赤な橋を渡る。
事前に想像していたよりも、高さがある。
次の奥大井湖上駅は、2本の橋に挟まれている。2本まとめて「レインボーブリッジ」と名づけられている。
東京にある同名の橋より、こちらの方が先にこの名前になった。
橋の開通も、アプト式区間と同じ1990年なので、東京のレインボーブリッジより早い。
奥大井湖上
(~ひらんだ~)
奥大井湖上駅は、接岨湖に突き出した細長い陸地の上に設けられた。
つまり三方を湖に囲まれている。
もっとも、ここまでずっと湖のすぐそばを通ってきたので、車窓から景色をながめただけでは、そういう特殊な場所にあることがわかりづらいかもしれない。
鉄道マニアとしては、ダム建設前の旧線のトンネルや鉄橋が、対岸にはっきりと見えるのが興味深い。
接岨峡温泉が近づく。川の対岸は遊歩道になっているらしく、つり橋や太鼓橋が並ぶ。
(タイミングを逃して、写真は撮れなかった)
接岨峡温泉駅で、千頭行きの列車とすれ違う。
接岨峡温泉を出ると、渓谷はいよいよ深くなる。
線路と同じ高さに、つり橋の歩道橋が2本ほど架かっているが、歩く人はいるのだろうか?
秘境駅として有名な尾盛駅を過ぎ、閑蔵駅へ向かう。周囲は杉林。
視界に入る風景に、線路以外の人工物がない。
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