寸又峡温泉(すまたきょうおんせん)('09.12.1)
温泉街を歩く。温泉街といっても派手なものではなく、山懐に抱かれた集落といった感じ。
寸又峡温泉バス停の前に、カモシカの像があった。
この先にある入口から、寸又峡プロムナードと呼ばれる道に入っていく。
すれ違う人は何人かいるが、これから入っていく人は、私以外に見当たらない。
1周90分かかるらしいので、今から行ったら多分、帰りは日没後になるだろう。
ここには車が入れないので、歩きやすい。
この道路はかつて、千頭森林鉄道の線路だったらしい。
はるか下方を流れる寸又川。
猿並橋というつり橋が架かっている。
滝の音が聞こえる。
というか、それしか聞こえない。
トンネルの中で、中部電力の車とすれ違った。
この先にあるダムの管理をしているのだろうか。
こういう車が通るからか、トンネル内には、歩行者道なのに両サイドに歩道がある。
そしていよいよ、「夢の吊り橋」が眼下に見えてきた。
観光ガイドブックに必ず出てくる、寸又峡の名所だ。
軽い気持ちで渡り始めたはいいが、揺れるし、長いし、下が見えるしで、橋の真ん中少し手前あたりから、急に怖くなってきた。
無事に渡り終えた後も、しばらく体が揺れているような感覚がおさまらなかった。
さて、おそらくつり橋よりも大変と思われるのがこの先。
延々続く上り階段だ。
昨日、金谷の東海道の石畳でえらく疲れたので、その轍を踏まないよう、こまめに休みながら上がる。
それでも相当きつい。
階段の途中から、大間ダムがよく見える。
ダム湖には「チンダル湖」という名前がついている。
なぜこんな名前かというと、チンダル現象によって、湖水が鮮やかな青色に見えるから。
“チンダル現象”とは、1ミクロン以下のごく小さな微粒子に光が反射する現象で、チンダル湖では水中の微粒子に、太陽光の青い光のみが反射するため、湖水は透き通らず、青い色に見えるのだそうだ。
よく、木漏れ日が白く見えることがあるが、あれもチンダル現象のせいらしい。
かなり上った所にベンチがあった。「くろう坂」と書かれていた。
……苦労している。
さらに階段は続く。
「やれやれどころ」でやっと、階段の終わりが見えてきた。
最後の階段を上がり、平坦な道に出た。
分かれ道を左へ進む。(右へ進めば展望台があったらしいが、気づかなかった)
飛龍橋を渡る。
もともと鉄道橋だったためか、がっしりとした造りだ。
長さ72メートル。
水面からの高さは70メートルもある。
正面の山は、岩壁となって、まるでこちらに迫ってくるようだ。
左右の山々をながめると、本当にこんな山深い秘境に来て、大丈夫かなと不安になる。
プロムナードの入口へ向かって歩く。
川の見える場所で写真を撮るが、もう写真を撮れる限界に近い暗さだ。
カメラの画面で見た写真は、実際の景色よりかなり明るく写っている。
ようやく人間界に戻ってきた! と思ったが、その先はさらに暗い山道。
まだ温泉街にはたどり着かない。
かろうじて今歩いている道路が見える。人間の目って、暗さにけっこう慣れるもんだ。
はるか後ろから、カップルとおぼしき話し声がかすかに聞こえるのだが、その姿までは確認できない。もしかしたら空耳かもしれない。
家々の明かりが見えてきたときはホッとした。
と同時に、自分が夢の中かどこかを歩いているかのような感覚に襲われた。
5時14分、プロムナード入口に到着。
途中の上り階段をあんなゆっくりしたペースで歩いて、90分弱で抜けられたのだから、「1周90分」という説明は、現実に即していると言えよう。無理なく歩いて90分。
日が暮れかけた山道を1人で歩いているときは、「これで人生観変わるかも」と思ったけど、真っ暗になるとそんな余裕もなく、ただひたすら「早く脱出したい」という一心で歩いていた。
温泉街もかなり暗くなっていた。
さっきここからプロムナードへ向かうときには、多くのお客さんがいたのだが、もうそれぞれの宿に入ったようだ。
午後5時20分、奥大井観光ホテル翠紅苑に帰ってきた。
6時半から夕食。ヤマメの塩焼き、猪鍋、さまざまなきのこなど、山の幸をたっぷりと堪能。
食後そのまま大浴場へ。昨日・今日と歩き回った疲れを癒そう。
泉質は硫黄泉で、お湯がつるつるとした感じ。あったまる。
露天風呂の場所は寒かったけど、風呂に入って出てくると寒くなくなった。
本館と大浴場の間にあるゲームコーナーへ。
UFOキャッチャー、ワニワニパニックのほかに、なんと『ザ・キング・オブ・ファイターズ'98』があった。(※2009年当時)
しかし、ランクが高く設定されていたのか、1面でゲームオーバー。
再挑戦してみるも、やっぱり1面もクリアできずにゲームオーバー。
8時15分から、大浴場の男湯と女湯が入れ替わる。
9時頃、もう一度大浴場へ行き、もう一方の浴室に入ってきた。
露天風呂から空を見上げると、まんまるい月が輝いていた。
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