『シェイプ・オブ・ウォーター』『15時17分、パリ行き』感想 | へちまとろん

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多少ネタバレあります。ご注意ください。

 

空気です。最近続けて映画館に行ったので感想です。

 

『シェイプ・オブ・ウォーター』
話題の作品。一言で言うなら異類婚姻譚。
予告でもわかるようにモンスターと人間のラブストーリーだった。
そこに時代的背景や、様々な差別、言葉の壁等の要素が主人公たちを飲み込んでいく。
最初はイライザが声を出せないことに気付かなかったり、画家のジャイルズと親子に見

えたりと混乱する部分があったが(あんまり前情報を見なかった)、イライザの周りの

人間を見ていくといろいろ面白い。彼女は手話を使うが、それがなくても表情や仕草で

お互いの気持ちを読み取っていく。ゼルダなんかは一方的にしゃべっているように見え

て、なんだかんだでイライザの一番の理解者。トイレでストリックランドに話しかけら

れたシーンでも、彼は「おしゃべり楽しかった」的なことを言っているがあれは完全に

彼からの一方通行で、ゼルダとイライザの「おしゃべり」とは全く違う。
またモンスターとイライザの心を通わせていくシーン。モンスターは表情がわかりにく

いが、”彼”自身は相手の表情を読み取り感情を察することができる生き物だと思う。

人間は「言語を使う生き物」が知性的と思いがちだが、”彼”も決して知能は低くない

のだろう。そして、最初こそ指を食いちぎったりと凶暴だったが、本来優しい生き物な

んだろう。
「言葉」といえば、ゼルダが夫が裏切ったとわかった時に言った(ちょっとうろおぼえ

だけど)「そんなことしか言えないならもう二度としゃべらないで」という夫婦間の亀

裂、ジャイルズが思いを寄せていたケーキ屋の男が糞野郎とわかった時に舌を丁寧に拭

って見せるしぐさ(これは『まずい』ってことも表現しているんだろうけど(笑))、ス

トリックランドがホフステトラー博士にいった「ロシア語を話したな」というシーンが

私の中で印象的。言葉がないと伝わらないし言葉で責め合うし言葉が差別を生むし、も

う言葉じゃ通じ合えないこともある。こういうのは映画ならではの表現なのかなと思う


この映画は最初から最後まで童話的で、様々な現実的な問題を突き付けてくるわりに最

後には「二人には幸せになってほしいな」と素直に思うことが出来る。
ラストシーンでイライザの靴が脱げるけど、あれは『逆人魚姫』を表現しているんだろ

うか。パンフレットには『アンチ美女と野獣』と書いてあったけど。

 

 

『15時17分、パリ行き』
実際に起こったテロ事件を映画にしたもの。
私は朝の情報番組でちらっと聞きかじっただけで予告も見ていなかった。
事件に遭遇した本人たちが出演しているのは知っていたけどそれだけだったのでよかっ

たと思う。事前情報が少ないとかなり衝撃的な映画だ。
ただ本当に何もない日常の中にテロが唐突に現れるから、日常シーンで退屈する人はい

るかもしれない。
主人公として描かれているスペンサーは「大きな運命に動かされている」ということを言っていたが、子供のころから問題視されていても努力が報われずに思った道に進めなくても、決して腐らず自分の意思を貫いていたスペンサーが、大参事の運命を変えたように見えた。
まあ、シンプルな話なので多く語ることはないが、見終わってなんだかすごく旅行に行きたくなった(笑)安全な旅行ね。