デシャブル/アモイヤルのグリーク | geezenstacの森

geezenstacの森

音楽に映画たまに美術、そして読書三昧のブログです

デシャブル/アモイヤルのグリーク

 

曲目/

 

 

仏エラート 2564699088-35

 

 こういうCDは市販はされていません。この全集用にコンパイルされたものでグリーグの作品が集められています。最初がフランシス=ルネ・デシャプールとグシュルバウアーが組んで録音したピアノ協奏曲、それにピエール・アモイヤルとピアノのミハイル・るでぃが組んだヴァイオリン・ソナタ第3番、それにローレンス・フォスターがモンテカルロ国立管弦楽団と組んだ「ペール・ギュント」から「朝」が申し訳程度に一曲収録されているという構成のCDです。

 

 単品としてはCDとしてディシャプルのグリーグはラフマニノフの第2番とカップリングされて国内盤は流通していました。こんなジャケットでした。

 

 

 フランソワ=ルネ・デュシャブルは、1952年4月22日パリ生まれのフランス人ピアニストです。1973年、サシャ・シュナイダー財団賞を受賞。以来、ヨーロッパ、アメリカ、カナダ、そして日本など、世界各地でリサイタルを開催していますが2003年に引退しました。生まれながらの鍵盤楽器の才能に恵まれ、パリ音楽院に入学。13歳でピアノ部門第1位を受賞しました。3年後(16歳)、ベルギーで開催されたエリザベート王妃国際音楽コンクールで11位を獲得。アルトゥール・ルービンシュタインに才能を見出され、惜しみない支援を受けました。2003年に国際的な演奏活動を止め、仏アヌシー湖畔に居住して劇場や野外、自然の中でのコマーシャルベースではない演奏活動は継続しているようです。まだ70代の前半ですからねぇ。でも、もう今ではほとんど忘れ去られているような気がします。まあ、それは指揮者のグシュルバウアーにも言えることですけれどもね。

 

 このグリーグのピアノ協奏曲、全く期待していなくて再生したのですが、これがことのほか心地よい演奏でびっくりしました。この曲の名盤としては、以前取り上げているルプー/プレヴィン盤や、ツィメルマン/カラヤン盤が知られていますし、手持ちにはネルソン・フレイレ/ケンペ盤やリヒテル/マタチッチ盤もありますが、それほどそれほど夢中になるものではありませんでした。


 今回この演奏を聴いてこの曲の魅力を再発見したのは朗報でした。「胸のすくような」快演で、早めのテンポでカラヤンやプレヴィンの指揮による演奏のように大上段に構えるでなく、実に心地よいテンポで曲が進んでいきます。もともと、グリーグのピアノ協奏曲はどっしりとしたドイツ的な響きではないし、曲自体メロディアスで歌謡調です。デシャプルはそういう曲の本質をしっかり理解して、早めのテンポで流れるようにメロディアスに演奏しています。そんなことで、やっと「これだよ、これ」という協奏曲の演奏に出会えた気がします。管弦楽の音のやや軽めの響きが、デュシャブルの、硬軟のタッチを使い分けてつくり出す多彩なピアノの響きにより、青年グリーグの覇気とロマンが聴く者に迫ってくる演奏になっています。

 

 

 

 

 

 

 2003年の引退の際は、エリート主義体制からの決定的な脱却を示すために「ホロヴィッツ」のピアノを池に沈めるというパフォーマンスを行い話題になったこともあります。加えて、最後のリサイタルの後、彼は自身の舞台衣装、「キャリア、競争、そしてライバル関係を象徴する燕尾服」を燃やすという事もしています。

 

 さて、2曲目はアモイヤルの弾くヴァイオリン・ソナタです。ハイフェッツの弟子としても有名でいろいろエピソードがありますが、、ハイフェッツ譲りのコシの強い美音と、速いパッセージを端正に演奏する正確さに加え、フランコ・ベルギー派の流れを受け継ぐ幅広いヴィブラートが挙げられる。独特の音の伸びや音色の多彩さを利用したテンポ・ルバートも個性的なものです。

 

 

 

 

 最後はおまけとしてローレンスフォスター/モンテカルロ国立歌劇場の演奏で「朝」です。まあ、グリーグの作品の中では一番ポピュラーな曲でしょう。商品ですが、いい仕事しています。目立ちませんが、80-90年代のエラートはいい仕事を残しています。それがセールスに結びついていないのは親会社のBMGが怠慢だったのでしょうなぁ。