アラン・ロンバールの幻想交響曲 | geezenstacの森

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アラン・ロンバール

幻想交響曲

 

曲目/

 

 

仏エラート 2564699088-18

 

 

 ここで取り上げるのは、ボックスセットの走りとなった2007年に発売された「エラートの100ボックス」の中に収録されているアラン・ロンバール/ストラスブール管弦楽団の「幻想交響曲です。一時期は国内盤としても発売されたことがあります。下記の上がレコード、下がCDで発売されたものです。


 

 このコンビは上り調子だった1976年に来日しています。まあ、この後ロンバールが爆炎型の指揮者として認識されたところがあります。アラン・ロンバールは1940年生まれで、1966年のミトロプーロス指揮者コンクールで優勝しています。その後、バーンスタインの助手をつとめ、アメリカでメトなどで活躍し、オペラ指揮者としての才覚もあらわしました。
71年からは、母国ストラスブール・フィルの音楽監督となり、エラートとの契約も成立し、当時、オーケストラ録音にこぎ出したエラートの看板コンビとして、大量の録音を残しました。その後は、ボルドー・アキテーヌ管弦楽団、続いて、スイス・イタリア語放送管弦楽団の指揮者として活躍しました。現在85歳で現役なんですが、ほぼ忘れられています。エラート時代に残した演奏の数々は、当時も今も、フランスのエスプリと、ストラスブールという多面的な顔を持つ街のオーケストラの特色を引き出した点で、大いに評価されていい指揮者だと思います。

 

 この幻想、快速です。47分ぐらいで駆け抜けます。時代だったのでしょうがリピートはしていません。そして、速さと同時に、勢いと若さがありまして、これはまた意気軒昂とした超前向き演奏と感じました。同時期のカルロス・パイタのような超爆演系じゃありませんが、スピーディで、スマート。細部にこだわらないようでいて、意外や緻密な構成でロンバールの強い意志も感じます。この疾走感あふれる幻想は、いくつもある幻想のなかでも、ユニークな存在だと思います。


 1970年代に日本コロムビアから、RCAに発売権が写ってからややエラートというレーベルは埋没してしまいましたが、古豪レーベル復活をかけたエラートの熱意と、ほぼ録音などなかった指揮者とオーケストラの前向きささが融合した素晴らしい録音を残しています。ただ、アルミン・ジョルダンやこのロンバール、更にはグシュルバウアーという指揮者をRCAは育てきれなかったように思います。其れで次第に忘れ去られていったんでしょうなぁ。

ドイツ的なきっちり感と、オペラのオーケストラでもあるストラスブールフィルに、ラテン系だけれども、スマートな側面も持ってるロンバールの、ステキな名コンビの結実です。
 彼らの「幻想」は、掛け値なしに、かっちょよくって、大好きですよ。


弦などの美感は今ひとつで、ストラスブール・フィルは石田をコンマスとして迎えていればさらに良い音楽になっていたに違いないのですが、勢いで最後まで聴かせてしまう迫力というか、若さのようなものがここにはあります。そしてそれが小生にはとてもまぶしく感じられました。それは第1楽章で最も顕著に思えます。
一方で第3楽章のようにのどかな世界の表現でも、やや一本調子になるところはありますが、集中した良い演奏で聴かせています。決して青臭い激情で進んでいるわけではないのだ。

 4楽章からフィナーレにかけては下のライブで聴かれるような名演そのままにCDでも聴くことができ、はるかかなたの錆び付いた記憶が甦った次第です。
この曲は色々名演があり、このロンバールは小生のようなちょっとした想い出がある人間だけのものかも知れないが、それにしてはなかなか良い演奏ではないかと思う。機会あれば一度ご賞味あれ!

 

 メジャーに躍り出ることは、いまに至るまでなかったけれど、


ストラスブールは、地政学的な文化面で言うと、ドイツであり、そして、政治的な存在としてはフランスなのです。
ライン川を隔てて、ドイツのケールという街と一体化してます。
さらに、地図で地名を見てみると、フランス内のストラスブール周辺は、ドイツ的な地名ばっかり。
シュトラスブルク、ドイツ語では、そうなるんですね。
EUの街、そして交通の要衝となってます。

ロンバールとストラスブールフィルのコンビは、確か70年代に、日本にも来たと記憶しますし、ロンバールも読響あたりに来演してたと思います。
いまは、太っちょになってしまったロンバールですが、エラート時代の録音の数々は、クライバーや、デビュー当初のレヴァインもかくやと思わせる、新鮮で、イキのいい、ピッチピチの演奏を造り上げる指揮者でした。
しかも、エラートの録音が、また鮮明で実によかった。
ラヴェルやドビュッシーのレコード、FMでエアチェックした幻想や、カルメンなどなど、そのイメージは脳裏に刷り込まれてます。

 とにかく勢いがすごい。アンサンブルはフランスのオケにしてはこれでもかなりマシなほうです。ソロも、潤いという点ではちょっと劣りますが、存在感があり、なかなか聴かせてくれます。それにしても、こんなに一直線に、豪快に鳴らしているとは想像だにつきませんでした。特に打楽器がすばらしく、打ち込みは小気味よいし、何よりここぞというときの迫力が凄い。これは隠れ名盤でしょう。

 

ほんの一部だけですがこのセッション音源がネットに上がっていました。

 

 

 ロンバールはこの幻想交響曲とは別にストラスブールとの末期の1982年にベルリオーズの序曲集を残しています。このCDにはその中から「ベンベヌートチェルリーニ」序曲と「ローマの謝肉祭」序曲が収録されています。こちらも早めのテンポでオーケストラを自在にドライブしているさまが見事です。