ガンゼンハウザー
ドヴォルザーク交響曲第2番
曲目/ドヴォルザーク
Symphony #2 In B, Op. 4
1. Allegro Con Moto 15:57
2. Poco Adagio 14:57
3. Scherzo: Allegro Con Brio 11:58
4. Finale: Allegro Con Fuoco 11:03
Legends, Op. 59 *
5.. Allegro Con Moto 5:17
6 Allegretto Grazioso 2:51
7. Un Poco Allegretto E Grazioso 4:04
8. Andante Con Moto 2:41
9 Andante 4:19
指揮/スティーブン・ガンゼンハウザー
演奏/スロヴアキア・フィルハーモニー管弦楽団
チェコ・スロヴァキア放送交響楽団*
録音/1990/05 レデュタ・コンサートホール ブラティスラヴァ
1991/05 チェコスロヴァキア放送ホール*
P:マーティン・サウアー
E:ギュンター・アッペンハイマー
NAXOS 8.550267
レコード時代は、ドヴォルザークの交響曲は7番以降しかほとんど聴いたことがありませんでした。もちろん全集はケルテスとかクーベリックはありましたが、その程度だったのではないでしょうか。何しろドヴォルザークはそれほど交響曲作家とは思われていなかった節があります。それがCD時代になって状況が一変します。1980年代の終わり頃からナクソスが大量にCDの文庫本とも言うべきシリーズを発売しだしたからです。小生もその恩恵に預かりました。そこで出会ったのがこのガンゼンハウザーとチェコ放送交響楽団によるドヴォルザークの全集でした。何しろCDで 1曲ずつ聞くことができる全集になっていました。ですからこの2番は衝撃を受けました。作品番号は4番ですが非常に完成された作品で、いっぺんに気に入りました。まぁ、こういう交響曲作品は、他にもCD時代になってからいっぱいあります。それまではロンドン交響曲の中で埋もれていたハイドンの交響曲第92番オックスフォード、シベリウスの交響曲の中でもほぼ無視されるような交響曲第3番が小生の感性に触れました。
多分このガンゼンハウザーによるドヴォルザークは、レコード芸術では取り上げられたことがありませんから、ほとんどの人は知らないでしょう。ですが、他の指揮者による全集に比べても全く聴き取りがしません。90年代の初め頃は、ドヴォルザークの交響曲はこの第2番だけを集中して聴いていました。ジャケットの表記は
この交響曲が作曲されたのは1865年です。ブルックナーの交響曲第1番が完成したのは、1866年で実際に初演されたのは1868年という事は、まだブルックナーの交響曲が世に現れていない時期に作曲された作品ということです。そしてこの交響曲は、全曲を演奏するのに50分以上の時間がかかります。この交響曲の規模の大きさがわかろうかと言うものです。
ドヴォルザークはメロディーメーカーと言われる事はあまりありませんが、この作品に限っては溢れんばかりのメロディーが溢れています。まぁそういうところがこの交響曲を気に入った理由の1つでもありますが、長大な作品でありながら少しも弛緩することなく、曲が進むところに魅力があります。
1773年に建設されたバロック様式によるレデュタ・コンサートホール
第一楽章からして、ガンゼンハウザーはじっくりと歌い込んでいきます。まぁオケが地元のオケと言うこともあって、チェコフィルに通じるひなびた音がするのも曲の情緒を誘っています。この曲の録音に使われたホールはやや小ぶりなホールです。ただ録音はオーソドックスなもので、特に音が良いと言うわけではありませんが、弦の合奏から木管の響きまで過不足なく収録しています。
ガンゼンハウザーはアメリカの指揮者ですが、マルケヴィチやストコフスキーに師事し1979年から実に40年間の長きにわたってペンシルベニア州にあるランカスター交響楽団の音楽監督を務めていました。中堅ですがなかなかの実力者だったのでしょう。交響曲の方はスロヴァキア・フィルハーモニー管弦楽団が演奏しています。録音当時はアルド・チェッカートが常任だったはずですが、1年で辞めていますからあまり良好な関係ではなかったのでしょうか。
スティーブン・ガンゼンハウザー
第2楽章もポコ・アダージョのテンポでじっくり音楽を歌い上げています。この時点でランカスター交響楽団の常任を10年以上勤めていますからオケをまとめる手腕は十分です。変に尖ったところや古風なスタイルに陥ることもなく、きっちりまとめています。第1番の交響曲に関しては「作曲コンクール」に提出するという目的があったようです。しかし、この第2番の交響曲に関してはその様な明確な動機はどこにも見いだせず、当然の事ながらそれが演奏される見込みなどは全くなかったのです。作品の書かれたのは22-23歳の頃です。まあ、一般の人なら異性に恋心の一つでもありそうなものです。
ドヴォルザークの音楽家としてのキャリアはチェコ歌劇場のオーケストラのヴィオラ奏者からスタートするのですが、その歌劇場の中にいた一人の女性に熱烈なる憧れを抱くのです。残念ながらその恋愛は片思いに終わり、彼女は伯爵夫人となってしまうのですが、その代わりと言っては変なのですが、彼女の妹だったアンナを妻とすることになるのです。ということで、この作品は交響曲というスタイルをとったラブレターみたいなものではなかったでしょうか。作品番号は4万ですが、実際に出版されたのは交響曲第7番と8番の間でその時大幅な改訂をしています。そのため、作品としては充実したものになっているといえます。
この交響曲の一つの聴きどころは第3楽章にあります。形の上ではスケルツォですが、魅力的な旋律が次々と登場して軽快なアレグロ・コンプリオのテンポに乗って弦と木管の掛け合いが楽しい楽章で、ガンゼンハウザーはメリハリのある音の組み立てで曲の魅力を引き出しています。
第4楽章は古田9番と同じようにAllegro Con Fuocoのテンポです。この指示のあるのは2番と9番だけです。どの楽章も10分以上の大作ですが、ガンゼンハウザーのテンポはこの楽章だけやや重たいのが唯一の欠点といえば欠点です。もう少し、弾むようなテンポならもう少ししられた演奏になるのになぁという思いはあります。
ドヴォルザークの「伝説」は元々はピアノ連弾用の曲ですが、これもオーケストレーションしています。10曲からなる曲集ですが、収録時間の関係でここでは後半の5曲しか収録されていません。交響曲全集はは数々あれどこの曲まで録音している大御所はクーベリックしかいないのではないでしょうか。全曲を演奏するには40分以上かかる作品です。元々はスラヴ舞曲の人気にあやかってその続編として書かれた経緯があります。
多分この曲集で一番しられているのは最初に収録されている第6番でしょうか。小オーケストラのために編曲された作品ですが、ドヴォルザークらしさの漂う導入部で弦と木管の絡むシユ大はなかなか魅力的です。ガンゼンハウザーは前半の5曲を録音しなかつたのは惜しまれるところです。