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グスターボ・ドゥダメルと若き指揮者たち

 

編集、著作:能地 祐子

小室敬幸  (著), 坂口安紀  (著), 鈴木淳史  (著), 本間ひろむ  (著), 前島秀国  (著), 山田真一 (著), 奥田佳道  (その他), 吉原真里  (その他), 亀田誠治 

出版:DU BOOKS

 

 

来日記念出版!
映画『ビバ・マエストロ! 指揮者ドゥダメルの挑戦』も大好評。
配信作品が2025年グラミー賞で3部門受賞、2026年にはニューヨーク・フィルの音楽監督就任。
いま、世界で最も注目される指揮者ドゥダメルについての、はじめての本!

 

 日本のクラシック論壇では意外と、ドゥダメルがしっかりと語られる機会は少ない。人気のわりには。ベートーヴェンと16ビートを地続きで指揮してしまうドゥダメルの全貌はなかなかこれまでのクラシック音楽史観だけでは語れない、ということもあるのだろう。でも、間違いなく21世紀のクラシック音楽世界を変えたすごい指揮者だし、特にドゥダメルをきっかけにクラシックが好きになったポップ、ロック系の音楽ファンはとても多いんじゃないかと思います。なので、ドゥダメルや新世代の指揮者に注目している音楽ファンにとっては興味深い、クラシック読本だけどジャンルレスなアプローチの、濃いけど楽しい本を作りたいと思いました。で、想像していた以上に面白い本ができたのではと思います。まだ刷ってるとこなんで、くわしい内容やご寄稿いただいた方々については後日あらためて書きたいと思いますが。ちょうどドゥダメル、マケラ、ヤマカズと来日公演が続き、しかもヤマカズはベルリンフィルにデビューしたばかり…という、偶然にもここでとりあげられた指揮者たちに注目が集まるグッドタイミングでの発売となりました。---データベース---

 

 2004年にバンベルクで開かれた第1回グスタフ・マーラー国際指揮者コンクールに優勝し 一躍時の人となったのが南米はベネズエラ出身のグスターボ・ドゥダメルです。若干18歳でベネズエラのシモン・ボリバル・ユース・オーケストラの首席指揮者に就任しています。コンクールの2年後には、ミラノ・スカラ座にデビューし、2009年からはロサンジェルス・フィルハーモニックの音楽監督を務めています。

 

 そのキャリアの根にあるのはベネズエラで生まれた「エル・システマ」による音楽教育であり、指揮者に転向する前はヴァイオリンを学んでいます。ドゥダメルのキャリアの中で特に華々しいプロジェクトは、2012年に行われたマーラーの交響曲ツィクルスであり、ロサンジェルスとカラカスにて、それぞれ20日以上かけてロサンジェルス・フィルとシモン・ボリバル・ユース・オーケストラ両方の楽団を指揮したのです。まさに破竹の勢いで、DGGと契約し、デビュー盤はシモン・ボリバル・ユース・オーケストラとのベートーヴェンとの交響曲第5番と7番をカップリングしたものでした。

 

 

 

 今年9月日本の河口湖で開催された日本版ワルドビューネコンサートも大成功だったようです。それもありこの本は今年の5月に発売されています。内容的にはドゥダメルの紹介本といったところで、それほど内容があるわけではありませんが、2009年にロサンゼルスフィルの音楽監督に就任して以来のドゥダメルの動きというのがよくわかるようになっています。また本来ならシモン・ボリバル・ユース・オーケストラと世界ツアーができたものがベネズエラの内紛によってそれが不可能になってしまった事はこの本で初めて知りました。そして公開された映画です。ドキュメンタリー映画でこのベネズエラの内紛の事まで描かれています。

 

<主な内容>
Introduction ドゥダメルの現在地──音楽の力が未来を照らすとき

1部 ドゥダメルから始まった新時代
奥田佳道×能地祐子 ドゥダメルと二十一世紀の若き指揮者たち──朝日カルチャーセンター講義
グスターボ・ドゥダメルの歩み 能地祐子
吉原真里インタヴュー バーンスタインからドゥダメル、そして新世代指揮者たちの時代
ドゥダメルとふたりの〝ジョン〟──現代アメリカを代表するふたりの作曲家が託すもの 前島秀国
グスターボ・ドゥダメル全作品ガイド

2部 映画『ビバ・マエストロ! 指揮者ドゥダメルの挑戦』を読む(劇場版パンフレット増補版)
ドキュメンタリー映画がとらえた、ドゥダメルの示す〝新世界〟 能地祐子
映画『ビバ・マエストロ!』に寄せて 山田真一
政治の渦に巻き込まれたドゥダメル――ベネズエラで何が起きているのか 坂口安紀
エル・システマとの衝撃的な出会い 豊田泰久
音楽プロデューサー・亀田誠治が語る『ビバ・マエストロ!』とグスターボ・ドゥダメルの魅力

3部 これからの若手指揮者ガイド
いま聴いておきたい! 二十一世紀の若手指揮者たちの聴きどころ 鈴木淳史
巨匠への道が約束されたクラウス・マケラという天才 小室敬幸
世界で活躍する若き日本人指揮者たち 本間ひろむ
これからが楽しみ! 本書執筆陣とディスクユニオン スタッフが注目する、新世代の若手指揮者59人

 


デュダメルのリハーサル

 様々な人との対談やエッセイが収録されています。必ずしも統一された内容ではありませんが、基本的にドゥダメルの絶賛本といったところです。ただこの本の面白いのは従来の大家と言われる指揮者の事にはほとんど触れていません。要するに、これから次世代を担うデュダメルを代表とする指揮者にスポットを当てて構成しているところです。この本ではディダメルとともにマケラがその筆頭に挙げられています。マケラと言えば、先日パリ管と来日したばかりですが、今度はアメリカのシカゴ交響楽団もその手中に収めると言うことで、八面六臂の活躍をしています。そうそう、アムステルダムコンセルトヘボウも彼を常人に迎えようとしています。こんな指揮者は今までいません。そういうところの視点を持って、今後活躍しそうな若手指揮者を59人取り上げています。映画が中古レコード店のディスクユニオンが配給したと言うこともあり、そのディスクユニオンの店長がその若手指揮者を取り上げています。また鈴木淳史氏による若手演奏家の考察もなかなか興味深いところです。その中には日本の指揮者も含まれていますし、女性指揮者も取り上げているところが今までにない視点です。日本の若手指揮者の筆頭は、先ごろベルリンフィルにも登場した山田一樹です。また原田慶太桜や川瀬賢太郎、さらには鈴木優人などがピックアップされています。世界的な期待指揮者としては、先の寺を筆頭にピエタリ・インキネン、シシト・ウルバンスキ、ヤクブ・フルシャ、アンドレア・バッティストーニ、マキシム・パスカル、ペトル・ポペルカなどの名前が上がっています。また女性指揮者としては、沖澤のどかを始め注目株の名前が上がっていますが、それはこの本を読んで確認していただきましょうか。

 

 これからの音楽界を担うということでは、これは結構面白い本です。自分の一押しも含めいちど確認されると良いでしょう。