第96回市民会館名曲シリーズ 〈ベートーヴェンPLUSⅠ〉 | geezenstacの森

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第96回市民会館名曲シリーズ 

〈ベートーヴェンPLUSⅠ〉

 

曲目/

 チン・ウンスク:スビト・コン・フォルツァ
▊ ベートーヴェン:交響曲第4番変ロ長調 作品60
▊ ベートーヴェン:交響曲第5番ハ短調 作品67『運命』

 

指揮/アドリアン・ペルション

小川響子(コンサートマスター/名フィル コンサートマスター)

演奏/名古屋フィルハーモニー交響楽団

 

 

 今年の名フィルの「ベートーヴェンPULS」シリーズの第1回ということで今回演奏されたのが上記の曲目です。そして、これに先立ってシミ間会館の名曲シリーズでは恒例のロビーコンサートが開催されました。今回はマリンバを使った作品が3曲演奏されました。これがひじょうにおもしろく、多分普段のコンサートでもマリンバをマジかで聞くことはないと思うので興味深く観客の皆さんが聴いていました。

 

 

 最初はベートーヴェンの「エリーゼのために」がマリンバで演奏されました。低音まで響くマリンバの音色は聞き手を暇つけるには十分でした。そして、次に演奏されたのはスティーブ・ライヒの「手拍子のための音楽」でした。これも意表をつくもので二人が向き合って手拍子を打つものですが、左右でリズムが違います。最後は一致するのですがそれまではずっとぢがうリズムで演奏されるのです。

 

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下の映像にはリズムの違いが表示されています。

 

 

 そして、ライヒの作品はもう一曲演奏されました。これは2台のマリンバのための作品で、それこそ「名古屋・マリンバ」という曲です。

なんとこの曲は閉館してしまいましたが、1994年にしらかわホールのこけら落とし公演で初演された作品で、名古屋音楽大学の名誉教授である栗原幸江氏によって委嘱されました。2台のマリンバのために書かれており、 初演は栗原氏および、名古屋音楽大学教授である髙藤(栗原)摩紀氏が行っています。そして、編成も小さいことから、ライヒの作品のなかでも演奏される機会が多く、世界各地で演奏されています。

 

 

こんな曲です。

 

 

 こんな曲が演奏されて、現代音楽への抵抗がなくなり、いよいよ本番のステージでチン・ウンスクの「スビト・コン・フォルツァ」につながっていきます。2020年のベートーヴェンの生誕250年を記念して作曲された作品でクラウス・マケラ指揮のアムステルダム・コンセルトヘボウ管弦楽団により初演されています。

 

 

 今回のステージ構成、この曲でもマリンバが使われています。今回は対抗配置で、コントラバスは左に配置されていました。古典作品を演奏する時のステージ構成です。開演前でも新曲の演奏は緊張するようで結構な眼バーがさらっていました。曲は聞いて貰えばわかるようにベートーヴェンへのオマージュ作品で、冒頭の出出しは「エグモント」の和音がつかわれていますし、途中のピアノは「皇帝」のフレーズを弾いています。下はその初演者のマケラガオスロフィルを指揮した演奏です。

 

 

 最近の現代音楽は静かに終わる曲が多く、ベートーヴェン的終わりかたを期待していたら肩透かしを喰いました。
 
 さて、肝心のベートーヴェンですが、チン・ウンスクの曲が2管編成で書かれた作品であったのでこのままの編成で第4番が演奏されました。つまり、弦は14-12-10-8-7です。これほどの編成で演奏されるベートーヴェンは最近ではほとんど見かけません。で、指揮のアドリアン・ペルションは最近の傾向であるノンヴィブラート奏法でこの曲を演奏しました。ですからピリオドオーケストラ並みの早いテンポでぐいぐいとオーケストラを引っ張っていきます。これはノンビブラートだと音が間伸びしてしまうのでどうしてもテンポが速くなってしまうということがありますからその流れでしょう。ただ、今回は大編成でこのスタイルですからやや違和感がありました。
 
 休憩後の第5番も同じ趣向です。まあねピリオドスタイルの演奏と思って聴く分にはこれでもいいのでしょうが、冒頭の運命の動機もテンポが速いのでやや軽く感じてしまいます。そして、一番びっくりしたのが提示部の繰り返しがなかったことです。で第4楽章はこちらは提示部をリピートしているのですからこれも違和感のひとつでした。せめてホグウッド並みの考証をしろよと言いたくなってしまいました。

 

 今回初来日のペルションは佐渡裕の跡を継いで現在はラムルー管弦楽団の音楽監督を務めているようですが、プログラムがちょっとあっていなかったのかな?次回はお得意のフランスもので勝負をしてもらいたいものです。