トライアルの西友買収 | geezenstacの森

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トライアルの西友買収

 

 

 このブログでは、今まで趣味のことに関してしかほとんど書いてきませんでした。ただ去年の年末から騒がれていた西友の売却がこの3月5日に正式にトライアルへの譲渡が決まったということで、ちょっと気になりましたので、記事にしてみます。

 

 私事ですが、人生の大半をスーパーマーケットで過ごしていきました。ですから、この激変には少なからず関心がありました。何を隠そう、ウォールマートの西友買収の折には、その当事者である西友に身を置いていた者だからです。小生がスーパーマーケットと言う職業に興味を持ったのは、1972年にTBSで放送された田宮治郎主演の「知らない同士」というテレビドラマが大きく影響しています。そんなことで、スーパーマーケット業界の変遷には自身も大きく関わってきました。この業界よくも悪くもセルフレジの導入から革新が起こり、現在に至っています。またそれと並行に小生は仕入れの担当いわゆるバイヤーを長く務めましたので、そこに付随する仕入先の問屋の存亡も眺めてきました。

 

 1980年代の高度成長を経て、スーパー業界は様がわりをしていきます。GMSの雄といわれた「ダイエー」が没落し、またそれを取り巻く「長崎屋」「ニチイ」なども時代の波に乗り込まれていきました。そして2000年代になり、この当時、お隣韓国までウォルマートは進出していました。その流れの中でウォルマートは日本の「西友」を吸収します。ただ、韓国のウォールマートはスーパーセンターという形態を取っていたオランダのスーパーを買収してでの進出ということで、「西友」との差は歴然です。日本の西友はまるで形態が違います。果たしてうまくいくものかと思っていたところ、やっぱり案の定と言う結果になりました。形態の違う日本の西友はオペレーションもなかなかうまくいかず、早々に経営から手を引いていました。そして、今では韓国のウォールマートも売却されています。そんな中西友は最近では、九州や北海道を切り売りし、本州の関東、中部、大阪圏だけの存在になっていました。

 

 そんな状態の中、この西友の買収には3社が名乗りを上げていました。イオン、「ドン・キホーテ」を運営するパン・パシフィック・インターナショナルホールディングス(PPIH)、そしてトライアルホールディングス(HD)がその3社です。その中で、小生が一番可能性が高いのは「トライアル」だろうと見ていました。その要因は、

 

1.24時間営業スタイルの両者

2.基本EDLPスタイル

3.ネットスーパーへの取り組み

 

これらの条件に一番合致するのが「トライアル」ということです。今では生鮮を扱っているドンキは増えましたが、それでも店舗限定です。イオンはありません。西友はウォルマート翼下の時基本24時間営業に切り替えています。この点でも親和性は高いでしょう。今ではそうとも言えませんがウォルマート時代のEDLPスタイルは残っています。さらにネットスーパーとしての取り組みは現在のトライアルも取り組んでいるので、この点はドンキは2018年に撤退しているし、ダブってしまうイオンのシステムとはどうなんでしょう。シナジー効果が出るのはトライアルだけです。

 

で、3月5日にはんな発表がありました。

株式会社西友の株式の取得(完全子会社化)に関するお知らせ

当社は、2025年3月5日開催の取締役会において、以下のとおり、株式会社西友(以下「西友」といいます。)の株式を取得し、完全子会社化することについて決議いたしましたので、お知らせいたします。

1.株式の取得の理由
 当社グループは、九州を中心にディスカウントストアを運営する流通小売事業及びIoT/AI等のデジタル技術を活用し流通小売業界のデジタルトランスフォーメーション(DX)に取り組むリテールAI事業を展開しています。

 流通小売事業では、Every Day Low Priceによりインフレ時代において高い集客力を実現していますが、更なる成長戦略として既存店成長と新規出店、「食」の強化、収益性向上による持続的な成長を掲げています。具体的には、リテールテックの導入を主とした店舗改装、美味しくて安い惣菜やプライベートブランド(PB)商品の開発、ローコストオペレーションの強化に注力していく方針です。

西友は、関東エリアを中心に駅に近接した好立地の店舗を多く保有しており、強固な事業基盤を有しています。また、PBを中心とした商品力、自社保有の製造拠点、メーカーをはじめとしたお取引先との強固な関係を保持しています。

今回の西友の完全子会社化により、当社グループの基盤である九州に加えて人口集積地である関東エリア、中部エリア及び関西エリアでの事業基盤確立を迅速且つ効率的に実現することが可能となり、連結売上高1兆円超の小売グループが誕生します。なお、西友と当社グループの店舗は地域的に重複が少なく、商圏のカニバリゼーションによる退店等といったディスシナジーについては認識していません。また、「みなさまのお墨付き」、「食の幸」をはじめとした西友のオリジナル商品及びプロセスセンターやセントラルキッチン等の製造拠点を獲得することで、当社グループ全体の「食」の強化と生産・物流の最適化にも貢献が期待できます。また、西友が展開するEC事業も当社のEC事業が更なる飛躍をする上でのシナジーを期待しています。

リテールAI事業では、メーカーとのデータ連携による流通業界の「ムダ・ムラ・ムリ」の解消や、当社グループが自社開発するタブレット決済機能付きのレジカード「Skip Cart」の導入によるお買い物体験の向上、リテールメディアの収益化を重点施策としています。

西友と当社グループの顧客データの一体化、Skip Cartやインストアサイネージ等の各種デバイスの導入台数増加によって、業界横断の「ムダ・ムラ・ムリ」の解消がより促進され、西友と当社グループのみならず、メーカーや卸、物流企業を含めたサプライチェーン全体の効率化・収益性の改善が実現可能と考えております。

西友が当社グループの中核会社の1社として加わることで、当社グループの企業価値をさらに向上することに加えて、「リテールDX」を通じ、流通業界全体の変革に向けた取り組みを推進してまいります。

2.異動する子会社(株式会社西友)の概要

(注1)西友は、2024年6月1日付で、西友を存続会社、株式会社西友ホールディングス(以下「西友HD」といいます。)を消滅会社とする吸収合併を行っているため、上記2022年12月期及び2023年12月期は西友HDの連結経営成績及び連結財政状態を記載しております。
(注2)なお、西友は、2024年8月に九州地域の、2024年10月に北海道地域の事業を吸収分割により第三者に譲渡しております。
(注3)西友は、2021年3月に企業買収に伴い会計基準を変更しており、2021年12月期は年間(通期)での決算を行っておりませんので財政状況及び経営成績について記載をしておりません。

3.株式取得の相手先の概要
1)SY Investment L.P.

注4)設立根拠等、組成日、出資の総額、出資者・出資比率・出資者の概要、業務執行組合員の概要、国内代理人の概要については先方希望により非開示とさせていただきます。

(2)アジア・リテール・ファイナンス任意組合

(注5)設立根拠等、組成日、出資の総額、出資者・出資比率・出資者の概要、業務執行組合員の概要、国内代理人の概要については先方希望により非開示とさせていただきます。

4.取得株式数、取得価額及び取得前後の所有株式の状況

注6)エスワイ・インベストメント・エルピー及びアジア・リテール・ファイナンス任意組合以外の少数株主が保有する種類株式が存在するものの、株式譲渡実行日までの間に普通株式へ転換され、当該株式についても当社が取得する予定です。そのため、上表の「(2)取得株式数」及び「(4)異動後の所有株式数」は、当該転換後の普通株式の数も含めております。

 5.日 程

注7)本件実行日は2025年7月1日を予定しておりますが、競争法に関する手続き等の進捗状況により変更となる可能性がございます。

6.資金調達方法
 株式取得資金については、当社の健全な財務体質を活かし、手元資金に加えて取引銀行から新たに3,700億円(概算)の借入金を調達して充当することを想定しております。
 なお、当社は、本件実行後においても当社の財務健全性を維持できると考えているため、本件の株式取得において増資等の新株発行を伴う資金調達(エクイティファイナンス)を実施する予定はありません。

7.今後の見通し
 2025年6月期業績予想につきましては、現在精査中でございます。本件実行による業績見通しを精査の上、開示すべき事項が判明した場合、速やかにお知らせいたします。
 なお、本件実行に伴い当社の株主構成、役員構成、商号、所在地に変更はございません。

 

 まあ、問題点もいろいろ出てくるかもしれません。例えばクレジットカードで、声優とセゾンカードの提携は2022年3月に終了しています。現在は楽天カードがメインになっていますが、この扱いがどうなるかでしょう。基本トライアルはカードは簡単には使えません。以前は衣料品、家電や日用雑貨には使えましたが今はそれが廃止になって、クレジットカードからトライアル独自のカードにチャージしてから使用する形に変更になっています。まあ、これで食品も使えるようにはなりましたが、このチャージは3001円以上でないとできません。こんなことで、カードの扱いが今後の問題点になるでしょうかねぇ。両者はITに強い会社ですから、そうそうこの問題が差し迫った案件になるような気がします。

 

 加盟店はカード会社に対し、カードでの売り上げから一定割合の手数料を支払うことから、ディスカウントストアなどではカードの取り扱いを行っていないケースが少なくありません。カード手数料をなくすことで、コストを抑えているわけです。そのため、トライアルが飲食料品等においてカード利用を制限していることに理解を示す声も多いともいえます。実際小生も利用時はそのシステムに甘んじていますが、システムさえ理解すれば便利と言えば便利です。ちなみに、ネットストアではクレジットカード払いが可能で、昨年の年末はトライアルでおせちを購入しています。

 

 そうそう、特徴としてはトライアルは全て税込表示で価格は一本の表記です。それでいて他のスーパーより価格が安いのですから利用価値が高いと言えます。ドラッグストアのコスモス薬品も税込価格で現金決済だけです。面白いのはそのどちらも九州のの企業だということです。価格表記で税抜き表記は今では意味がありません。騙されないようにしましょう。

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