バレンボイムのトリプル協奏曲/合唱幻想曲 | geezenstacの森

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バレンボイム

トリプル協奏曲/合唱幻想曲

 

曲目/ベートーヴェン 

三重協奏曲 ハ長調 Op.56 (for p,vn & vc,1804) 

1. Allegro    17:03

2. Largo    5:37

3. Rondo alla Polacca    12:51

合唱幻想曲 ハ短調 Op.80 (1808) 

1. Adagio    3:562a. Finale. Allegro - Meno allegro    5:01

2.2a. Finale. Allegro - Meno allegro    5:01

2b. Allegro molto -    1:35

2c. Adagio ma non troppo -    2:54

2d. Marcia, assai vivace - Allegro -    2:10

2e. Allegretto ma non troppo (quasi Andante con moto) - Presto    4:07

 

指揮、ピアノ/ダニエル・バレンボイム

ヴァイオリン/イツァーク・パールマン

チェロ/ヨー・ヨー・マ

演奏/ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団

P:ジョン・フレーザー

E:ジョン・カーランダー

録音/1995/02/15,16 フィルハーモニー、ベルリン ライブ

 

 

 

 冒頭収録されているトリプル協奏曲はビデオでも収録されていて初出当時はレーザーディスクでも発売されていた記憶があります。バレンボイムは最近ではムター、ヨーヨーマと組んだ録音も発売されていますからやや影が薄くなっている部分がありますが、こちらの方はベルリンフィルがバックということではサウンド的には充実しています。映像で確認するとコンマスは当時は安永徹氏でフルートにはエマニュエル・パユ、オーボエはシュレンベルガーの姿が確認できます。

 

 1990年代の前半はベルリンの壁の崩壊からスタートしていますから全体に平和ムードが漂っていて、古碑の演奏会もオールベートーヴェンのプログラムが組まれていました。そして、何よりも国際色豊かなメンバーによる演奏ということで新しい形のベートーヴェン像が提示されている演奏といってもいいでしょう。パールマンはイスラエル出身、バレンボイムはアルゼンチン生まれのユダヤ人、そしてヨー・ヨー・マは中国系のアメリカ人です。この曲の名盤と言われるカラヤン盤は重厚な響きで非常にドイツ的な演奏ですが、ここで聴かれるトリプル協奏曲はそういうナショナリズムを排したある意味ユニヴァーサル的なベートーヴェン像を打ち出した演奏というものになっていると思います。

 

 この演奏に当たって、「ベートーヴェンの音楽は普遍的です。世界中のどこにいようと、彼の音楽はあらゆる人々に語りかけてくるのです」とダニエル・バレンボイムは述べています。

 

 ヨーヨーにとってこのトリプルコンチェルトは2度目のレコーディングになります。ただ今回のヴィオリン奏者がパールマンであることが注目されます。そしてピアノがバレンボエム。パールマンとバレンボエムは今は亡きデュプレと沢山の演奏活動をしていました。その二人とヨーヨーがデュプレの愛用していたダビドフで共演しています。映像を確認するとヨー・ヨーマがパールマンを意識しながら、デュプレの魂をダビドフに込めて演奏している様が観て取れます。ある意味同世代の仲間である三人の演奏が一つになって音の世界が無限に広がります。これは映像付きのビデオで鑑賞した方がさらに感動を呼ぶ演奏でしょう。

 

 オーケストラは超一流で、それで充分とばかりにスーパー・オーケストラはコンマスの安永徹氏を中心に見事なアンサンブルで三人をサポートしています。こういう演奏ではコンマスの果たす役割は大きいでしょうなぁ。2つの楽器のための協奏曲は数々あれど、3つの独奏楽器を伴った協奏曲はそうそうあるものではありません。この曲はベートーヴェンの中でも特に好きな作品で興味深い演奏があれば次々と手に入れています。多分この分野でもベートーヴェンは先駆者として大きな足跡を残した作品と言えるでしょう。まるで大きな室内楽のようにも感じられる演奏です。