クリュイタンスの「展覧会の絵」
曲目/
ムソルグスキー/組曲「展覧会の絵」
A.16:06
B.15:50
指揮/アンドレ・クリュイタンス
演奏/パリ音楽院管弦楽団
録音:195/04/17-21
東芝 Angel CD1005
クリュイタンスはステレオ録音には恵まれない人でした。この録音は1958年ではあるもののモノラルです。イギリスEMI以上にフランスバテ・マルコニはステレオには懐疑的でこの録音もモノラルでしか残っていません。クリュイタンスはセッション録音で3度この曲を残していますが、そのいずれもモノラルでした。手元にあるアルバムは25㎝LPで発売されたものです。珍しいレーベルがブルーで盤自体は東芝名物赤盤です。
このレコードは、クリュイタンス(1905年-1967年)指揮のパリ音楽院管弦楽団による演奏ですから、期待しないほうがおかしいというものです。なお、録音はモノラルで、分離が悪く、明快とは言えない残念な録音です。しかし演奏は素晴らしいもので、重厚かつ軽快、繊細なものです。冒頭の「プロムナード」は、朗々と音を張った、華麗なトランペットの吹奏で開始されます。これぞコンセルヴァトワールと、嬉しくなるようなオープニングです。上品で都会的な「展覧会の絵」、ロシア的な土臭さとは最も対極にある演奏です。
随所に聞かれる粋で洒落た表現はパリ音楽院管の色彩的な響きも影響しているようです。
演奏全体としては、即興性を排した、細部まで計算され尽くした印象です。数ある演奏の中でも特に遅いテンポの「ビドロ」、反対に「殻をつけた雛鳥の踊り」は極めて早いなど緩急の差が大きな演奏になっています。ただ、テンポの移行はごく自然で違和感はありません。
「ババヤーガの小屋」から「キエフの大門」にかけて、計算された細かなテンポの動きに合わせ、音量の微妙な変化を関連付けながら次第にクライマックスを築く場面など、さすがの貫禄を感じます。
残念なのは低音が膨れて中音域をマスキングしているような録音という事です。下は、その最後の部分を貼り付けてあります。