文学と音楽 堀辰雄 | geezenstacの森

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音楽を楽しむ会

文学と音楽 堀辰雄

 

 

 堀辰雄の文学者としての側面を音楽との関連で語られた今回の「音楽を楽しむ会」でした。小生なんか純文学の世界は疎いもので、「風立ちぬ」も2013年のスタジオジブリの映画作品と結び付けたくらいで、堀辰雄は名前は知っていれどどのような作家で会ったかについてはとん尊いままです。今回その人となりを聞き、またwikiでその概略を知るにあたり、日本の文学氏に多大な影響を与えていたのだなぁと、と感心しました。そして、代表作の「風立ちぬ」が宮崎映画にかなり影響を与えていたことを回確認した次第です。この作品、その原典はフランス人作家のポール・ヴァレリーの詩『海辺の墓地』の一節"Le vent se lève, il faut tenter de vivre."だそうで、この一節は、現代語訳としては「風が立つ、生きようと試みなければならない」となるが、堀は「風立ちぬ、いざ生きめやも」と訳しています。

 

 まあ、それはそれとして、堀辰雄は文学史的には、それまで私小説的となっていた日本の小説の流れの中に、意識的にフィクションによる「作りもの」としてのロマン(西洋流の小説)という文学形式を確立しようとした。フランス文学の心理主義を積極的に取り入れ、日本の古典や王朝女流文学にも新しい生命を見出し、それらを融合させることによって独自の文学世界を創造した。

とwikiには書かれています。ただ、どう見ても多分に私小説的な題材を多く小説にしているような気がするんですけどねぇ。

 

 ただ、今回はその堀辰雄の独特のクラシックの音楽館にスポットを当ててのコンサートでした。堀辰雄が加増していたレコードの目録が上に挙げられています。この中からテーマに沿って音源が演奏されていきました。それにしても堀辰雄氏のコレクションは一般の愛好家とは少し違う嗜好の持ち主であったとも言えるでしょう。

 

 最初に取り上げられたのがビクトリアのアベマリアでした。こういうアヴェ・マリアもあるんですなぁ。こちらは音源がなかったということで、コンサートではレーゲンスブルグ大聖堂少年合唱団の演奏が流れました。ここではスコラ・カントルムの演奏を聞いてみることにします。

 

 

 ドビュッシーの歌曲などほとんど知りません。この曲もこの演奏で初めて知りました。ここで使われたのは、クロードパスカルのボーイソプラノによる演奏でした。

 

 

 普通バッハのG線上のアリアはバイオリンで演奏されるのが常ですが、ここで取り上げられたのはハンスポッタームントと言うチェリストの演奏でした。この人長年ベルリンフィルのチェロの出席を務めていたということで、なかなか味わいのある演奏が繰り広げられています。

 

 

 バッハのブランデンブルグ協奏曲は全集を持っていたようです。堀辰雄のコレクションを見ると、バッハは結構系統していたような気がします。アドルフブッシュの指揮するこのブランデンブルグは、当時は定番みたいなものの演奏だったようで、ピアノはルドルフ・ゼルキン、フルートはマルセル・モイーズが吹いています。コンサートで使われたのは、時間の関係で第3楽章でしたが、ここでは第一楽章を聞いてみましょう。

 

 

 今回取り上げられているのは本来はすべてSPの音源です。次のシューベルトの歌曲集、冬の旅の「菩提樹」は、ゲルハルト・ヒッシュのバリトンによる演奏でした。この人は日本とも関係が深く、1961年から2年間東京芸術大学で声楽を教え、また愛知県立芸術大学他、日本各地にて教壇に立ってもいました。

 

 

 SP時代の大ベストセラーと言うと、カールソーの歌曲だったそうですが、この時代は演奏時間の関係もあって、声楽曲が1番録音されたようです。ここで取り上げられているフォーレの歌曲集「やさしき歌むはこれも聞いたことがありませんでした。バリトンはパンゼラでピアノも奥さんのマドレーヌ・パンゼラの演奏でなかなかしっとりとしたフォーレらしい作品だなぁと思いました。

 

 

 第一部の最後はブラームスのアルトラプソディーです。堀辰雄のコレクションはブラームスはこのアルトラプソディーと歌曲集しかありません。交響曲ではなかったんですね。ここでコントラルトを披露しているジークリート・オネーギンは北欧の出身の歌手だったらしく、堀辰雄は、彼女の北欧訛りを見抜いていたと言う事は結構聞き込んでいたのでしょう。

 

 

 蓄音機のコンサートでは、最初にアルベルト・シュヴァイツァーのオルガンでバッハの小フーガト短調がかけられました。シュヴァイツァーのオルガンをじっくり聴くのは久しぶりです。一般には医者としてのシュヴァイツァーの方がよく知られていますが、もともとはオルガン奏者だったと言うことを再認識させられる演奏でした。

 

 

 堀のコレクションを見ると、フォーレは何枚も持っていたようです。もちろんレクイエムもありますが、バイオリンソナタも揃えていたのは、やはりこの曲の持つ親しみやすさだったのでしょう。現在でも名演とされるジャックティボーのバイオリン、ピアノはアルフレッド・コルトーの演奏によるこのフォーレは、聞き始めると聴き耳を立ててしまいます。

 

 

 映像で楽しんだのは、朝比奈尚4新日本フィルのベートーベンの田園から第1楽章でした。朝比奈と堀辰雄はほぼ同時代を生きた人でした。そういうことでこの演奏が取り上げられていました。この朝日奈による田園はいくつか残る映像で確認できますが、唯一楽譜を使わないで演奏している珍しい録音です。そのため店舗も非常にゆっくりしていて、田園の雄大さを感じさせます。堀辰雄はベートーベンの中ではこの田園交響曲だけを所有していました。これは生活の中心を軽井沢と言う都会とは違う場所で過ごしていたせいもあったのでしょうか。

 

 

 今回は文学と音楽ということで、堀辰雄が取り上げられていました。こういうテーマで開催されると、今年もノーベル賞を逃した村上春樹なんかは格好の材料になるのでしょう。ただ彼の場合はクラシックもそうですが、ジャズのウェイトが結構高いので、選曲に困りますね。

そうそう、今愛知県図書館では作家の城山三郎が取り上げられて集中展示が行われています。この城山三郎もクラシックが好きだったようで、銘板解説の本も出しています。名古屋出身の作家ですから、取り上げても面白いのでしょうかね。