カラヤン/ウィーンフィルのベートーヴェン | geezenstacの森

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カラヤン/ウィーンフィル

ベートーヴェン/交響曲第7番

 

曲目/ベートーヴェン

交響曲 第7番 イ長調 作品92 

1.第1楽章:Poco sostenuto-Vivace 11:44

2.第2楽章:Allegretto 08:39

3.第3楽章:Presto 07:42

4.第4楽章:Allegro con brio   06:43 

 

指揮/ヘルベルト・フォン・カラヤン

演奏/ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団

 

録音:1959/03/09,10 ソフィエンザール、ウィーン

P:ジョン・カールショー

E:ジェームズ・ブラウン

 

キング GT9004

 

 

 カラヤンといえども時代を感じさせる録音です。こののち1960年台後半からは標準になってくる提示部のリピートはこの頃は全くありません。ここでは第1楽章、第4楽章共提示部反復なし、第3楽章も反復なしということで、この録音は行われています。また、この録音は先にも書いていますが、RCAのために行われたものです。RCAはよほどカラヤンが欲しかったんでしょうなぁ。そして、これはウィーンフィルと録音したカラヤン唯一のベートーヴェンのセッション録音です。まあ、今の時代ならもう1曲カップリングがあって当然の録音ですが、初出はこれ1曲のみで、尚且つRCAは高価なデラックス仕様のソリアシリーズで発売しています。下がそのソリアシリーズで発売されたジャケットです。右下にソリアシリーズのマークがついています。豪華な解説付きの見開きジャケット仕様でした。

 


カラヤンの代表的な交響曲第7番の録音

    第1楽章   第2楽章   第3楽章   第4楽章
ベルリン国立歌劇場(1941) 12:46 9:12 7:36 6:28
フィルハーモニアO(1951) 12:45 9:09 8:43 7:00
ウィーンフィル(1959) 11:44 8:39 7:42 6:43
ベルリンフィル(1962) 11:23 7:57 7:48 6:36
ベルリンフィル(1976) 13:28 7:57 7:17 6:24
ベルリンフィル(1982) 11:11 7:40 7:28 6:24
         

第1楽章は次のベルリンフィルの演奏と似たようなテンポでこの当時としてはやや早め序奏になっています。このあたりはトスカニーニを引き継いでいるのではないでしょうか。は中やや速、序奏は大体の指揮者が遅く演奏するので、良い意味でこれは個性的。主部が快速なのに序奏だけやたら遅い演奏より説得力があります。のちに「のだめ」でこの曲が取り上げられ大きくクローズアップされますが、これぐらいの快速性がちょうどいいでしょう。後年のようなレガートは殆どなく、ウィーンフィルの柔らかい弦楽を前面に出した素直な演奏といえます。カラヤンのいつもの流儀で提示部繰り返しは行っていないので音楽の流れがあり聴きやすいのではないでしょうか。

 


 ベートーベンの交響曲第7番と言えば、昔はこの第二楽章のアレグレットが代表する楽章でした。何しろ初演時から好評で、アンコールでも演奏された位の楽章です。映画でもショーン・コネリーが主演した「未来惑星ザルドス」なんかにも使われていました。それが「のだめカンタービレ」から第1楽章がクローズアップされるようになり、この楽章はそれほど今は目立たない存在になってしまいました。まぁ、これは日本だけの現象ですが残念ですなぁ。ここでのカラヤンもやや早めのアレグレットで、この楽章をすっきりとまとめています。本来はクレンペラーのようなどっしりとした遅いアレグレットが好みなのですが、他の楽章とのバランスから俯瞰するとこの速度は納得できるものです。刻みのリズムを抑えてよくメロディを引き立てているのが特徴で、中間部は逆に速度をやや落とし、ウィーンフィルという楽器の特性をうまく引き出しているといえます。



 

 第3楽章は中庸のテンポといっても良いでしょう。カラヤンは50年代末から60年代前半にかけてはこのテンポで演奏するのが常なようでした。そういう意味では、この楽章はオーケストラの主体性に任せた演奏と言っても良いのではないでしょうか。まあ、当時はウィーン国立歌劇場の総監督も兼任していたじきでもあり、ウィーンでのウィーンフィルの立ち位置を一番理解していたカラヤンですからねぇ。



 

 第4楽章は早めの推進力のある演奏で、一気呵成にこの楽章を進めていきます。ここでもやはり提示部の繰り返しがないのも特徴で、音楽が途切れることなくコーダに向かって突き進んでいるのがわかります。このウィーン・フィルトの演奏はレガートほとんどかけていないので、音楽がスッキリとしていて、推進力があるのがわかります。こういうベートーベンは、ウィーン・フィルならではの音色を生かした演奏で、カラヤンがウィーン・フィルとベートーベンの全曲を録音を残さなかったのが残念です。