カラヤンのドヴォルザークとブラームス | geezenstacの森

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カラヤンのドヴォルザークとブラームス

 

曲目/

ドヴォルザーク/交響曲第8番ト長調Op.88*

第1楽章 7:07    

第2楽章 11:09    

第3楽章 6:07    

第4楽章 9:35

ブラームス/交響曲第3番へ短調Op.90**

第1楽章 9:47

第2楽章 8:14

第3楽章 5:56

第4楽章 8:52

 

指揮/ヘルベルト・フォン・カラヤン
演奏/ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団

 

録音1961/10*, 1960/10** ソフィエンザール 、ウィーン
P:ジョン・カールショウ

E:ゴードン・パリー*
ジェームス・ブラウン**

 

DECCA 417744

 

 

 1960年代初めのウィーンフィルとのカラヤンの一連のレコーディングは以降のDGへのベルリン・フィルとの怒濤のような量の重厚で厚化粧されたものよりもはるかに洗練されていて楽しめます。録音会場も「ソフィエンザール」と、ほぼデッカのスタジオと化した最良のホールで録音されウィーンフィルの艶やかで絹のよう美しいサウンドが楽しめます。この最良のコラボレーションの一枚がこの演奏となって現れているような気がします。レコード時代は1000円盤で初めてこれらの演奏を耳にしたのを懐かしく思います。

 

 特にドヴォルザークの8番はカラヤンの最初のレコーディングて、コテコテのベルリン・フィル、デジタル化して残したかっただけに思われる後のウィーンフィルの2回目の録音より壮年期の若々しいこの録音の方がはるかに味わい深くボヘミア情緒を堪能出来きます。まあ、この曲には「イギリス」なんてニックネームがついてはいますが、タイトル好きの日本人だけに通用するもので、ベートーヴェンの「運命」と一緒でしょう。別にそれに縛られることは無いのですが曲想は相通ずるものがあり、田舎ののどかな田園風景と妙にマッチする曲調であるといえます。個人的には、この曲を最初に聴いたのがワルター/コロムビア響のLPで、そのジャケットのデザインがまさにこの田園風景だったからよけいそう思えるのかもしれません。

 

 

 さて、演奏は第1楽章から躍動感あるリズムをチェロが奏でるともう目の前には広大な田園風景が目の前に広がります。この曲は美しいメロディの宝庫でそれが次々に聴く者を楽しませてくれます。そして、どっしりとした音の中からシルクトーンの弦が表情豊かに謳い管楽器が絶妙のバランスで応えています。第2楽章のアダージョも絶品の美しさです。圧巻は第4楽章でしょう。高らかなファンファーレのあとに続くチェロのユニゾンは重厚そのもので、またフルートの2重奏が聴きものでウィーンフィルの芸達者ぶりが窺えます。この終楽章はややアップテンポで小気味良く聴いていて誠に気持ちがよく自然と音楽の中に浸ることが出来きます。変な小細工をしないで曲を聴かせるカラヤンの棒はやはり凄いに尽きます。圧倒的なクライマックスで聴き終えるとすかっとした気分で田舎暮らしもいいもんだなと思わせてくれます。

 

 

 次のブラームスは時代的にはドヴォルザークと同時代で結構交流があったようです。ちなみにブラームスのハンガリー舞曲のいくつかはドヴォルザークがオーケストラ編曲しているのは知られているところです。個人的にはブラームスは若い頃はあまり聴く気がしなかった作曲家です。今でも好んで聴くのは交響曲第1番とヴァイオリン協奏曲、弦楽八重奏曲といったところでしょうか。しかし、年を重ねて、ようやく最近はこの渋さが理解できるようになり、今では3大Bの作品はドイツ音楽の本流として受け入れています。

 

 ブラームスの第3番は第3楽章が映画で使われてポピュラーにはなっり最近はベートーヴェンより演奏会では頻繁にブラームスの交響曲は盛んに取り上げられています。ただ、この第3番は、第1楽章の冒頭こそフルオーケストラで華々しく開始されますが、後はまことにイージーリスニングを聴いているようでいとも簡単に睡魔に襲われてしまいます。アレグロ・コンブリオはベートーヴェンの「エロイカ」と同じ指定なのですがどうしても鈍重のテンポにしか聴こえません。まあ、これがブラームスとしての音楽の特徴なのかもしれません。このカラヤンの演奏にしてもベートーヴェンのエロイカではキビキビとした棒の運びですが、ことブラームスに関しては印象はそんなに変わりません。特にこのアルバムでは、ドボ8の華々しいコーダの後に始まるから誠に分がちょっと分が悪いとしかいいようがありません。曲順がが悪いのでしょうかねぇ?この2曲がカップリングされた他の指揮者のアルバムはありません。救いはウィーンフィルの美音でしょう。響きは室内楽的ながら充分に厚みがありそれでいて艶があります。第2楽章の弦楽の合奏の部分は聴いていてゾクゾクする艶があります。そして、第3楽章。映画「恋人たち」でどのようなシーンで使われたかは未見なので知る由もありませんが、情景としては休日の昼下がり池のある公園のほとりに恋人同士が寄り添いながら佇み語らいあっている様が目に浮かんで来ます。生涯独身であったブラームスがなんでこんなにメロディアスな曲が書けたのだろうかと不思議に思ってしまいます。第4楽章でもカラヤンは金管の響きをオーケストラの響きの中に閉じ込めて内声的に処理しています。ここら辺が1960年代までのムードミュージック的に響く要因かもしれませんなぁ。個人的には4楽章が全体として同じようなテンポで奏されるのでやっぱり眠ってしまいます。そして気がついたら演奏は終わっていたなんてことになります。夢見心地になれるということは生理的にリラックスしていることなのでやはりいい演奏なんでしょうなぁ。

 

 ドボ8でストレスを発散するような快感を味わい、ブラ3では緊張を解きほぐす睡眠にひたれる、まさに1枚で2度おいしいディスクということでしょうか。そう考えると絶妙なカップリングということができます。