ガーディナー ベートーヴェン 交響曲第1、2番 | geezenstacの森

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ガーディナー ベートーヴェン

交響曲第1、2番

 

曲目/

Beethoven: Symphony #1 In C, Op. 21 

1. Adagio Molto, Allegro Con Brio    8:22

2. Andante Cantabile Con Moto    6:33

3. Menuetto, Allegro Molto E Vivace    4:05

4. Finale Adagio, Allegro Molto E Vivace    5:31

Beethoven: Symphony #2 In D, Op. 36

1. Adagio Molto, Allegro Con Brio    12:08

2. Larghetto    10:19

3. Scherzo Allegro    4:26

4. Allegro Molto    6:08

 

指揮/ジョン・エリオット・ガーディナー

演奏/オルケストル・レヴォリューショネル・エ・ロマンティック

 

録音/1993/03  モールティングス・コンサート・ホール、スネイプ 1 ライブ

   1991/11  ブラックヒース・コンサート・ホール、ロンドン 2

 

P:ペーター・チェルニー

E:ウルリヒ・ヒュッテ

 

DGG  00289 479 2986

 

 

 

 この一枚も「グレート100シンフォニ」ーに収録されている一枚です。録音データがいい加減なセットで、プロデューサーとかエンジニアについての記載が全くないという欠陥だらけのセットのため今まであまり取り上げてきませんでした。しかし、この一枚を含むガーディナーのベートーヴェン交響曲全集は、1994年レコード・アカデミー賞、クラシック・アウォード、ゴールデン・ハーモニー・アウォードを受賞した名盤でした。まあ、この時代は、大手の各社がブームのピリオド楽団のベートーヴェンの交響曲全集を競って発売していました。デッカのホグウッド、フィリップスの18世紀オーケストラ、EMIのノーリントン、独立系ではニンバスのハノーヴァーバンド、やや遅れてソニー系はターフェルムジーク、そしてDGG系はピノックが頑張っていましたが、このベートーヴェンだけはガーディナーが請け負っていました。その真打のガーディナーがレコード・アカデミーを掻っ攫ったのでした。ただ、個人的には既にノーリントンやハノーヴァーバンド盤で全曲揃えていましたからこのガーディナーには当時は手を出していませんでした。この「グレート100シンフォニ」にはベートーヴェンの交響曲は全曲収録されていますが、この1、2番は初期の作品ということでこのガーディナーの演奏が収録されています。ちなみに、3番4番はアバド、5、7番はドゥダメル、6、8番がベーム、そして9番がバーンスタインとなっています。このセットは2014年に発売されていますが、DGGの大黒柱だったカラヤンの名前は見当たりません。クラシック界にも流行があるのでしょうなぁ。

 

 そもそもここで演奏している「オルケストル・レヴォリューショネル・エ・ロマンティーク」はベルリオーズの「幻想交響曲」に適したもの、というコンセプトで結成されたもので、18世紀の楽器をそのまま持ち越して使うのではなく、「19世紀オーケストラ」とでも言うべき過渡的な時代のものを使っています。また、この時代話題になっていたベーレンライター新全集の内容を先取りした演奏となっており、当時の同全集には校訂者ジのョナサン・デル・マーの解説が掲載されていました。ただ、他の演奏でもそうですが、100%遅羽実に演奏しているかというとそうではなく、ガーディナー自身が最終的には判断しているということになります。この第1番はライブで収録されていますが、ベートーヴェンの作品の中ではライブの方が極層が盛り上がるということでそうされたことがわかります。下はそのリハーサルと曲についてガーディナー自身が語っています。

 

 

 その演奏が下になります。

 

 

 今聴いて思うのは当時は、最先端のピリオド奏法の実践だったかもしれませんが、今となってはいくつかある演奏の一つといっていいでしょう。ここでも、必ずしも忠実に洋式にのっとって演奏しているわけでもなく、あるフレーズではヴィヴラート奏法を取り入れていることも映像で確認できます。

 

 ガーディナーは上の解説でも述べていますが、第1番の第2楽章でのティンパニの使い方について、そのリズムと音の扱い方に新しい解釈を取り入れています。映像でもマレットを使わず、撥でたたいているシーンが見受けられますが、乾いた音はこうして出していたことがうかがい知れます。

 

 続く第2番はセッション録音で収録されています。全集でライブ収録されたのは1番、3番、5番の3曲のみで、あとはすべてセッションで収録されています。これは、その前年での日本公演での反応を見てこういうアプローチがベストだろうということで恣意的にそういう収録で完成させたということです。

 

 

 作品番号順では2番ですが作曲されたのはこちらの方が先ということで、ベートーヴェンの交響曲に対する未知への挑戦と若さが感じ取られます。曲は「ハイリゲンシュタットの遺書」に先立って作曲されています。そこはじっくり受け止めようとするガーディナーです。ベートーヴェンの確固たる意思に優しく寄り添って、たぶん一番地味なこの曲をじっくりと歌い上げています。上の解説と解釈を参考にこの曲を味わってほしいものです。

 

 

 いまは、このアルバムはUHQ仕様で再発売されたようです。この時代のエポックとして古楽演奏の一つの到達点として聴く

のも乙なものでしょう。