バーンスタイン マーラー/交響曲第1番「巨人」 | geezenstacの森

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バーンスタイン

マーラー/交響曲第1番「巨人」

 

曲目/

 マーラー:交響曲第1番ニ長調『巨人』

1 .第1楽章:ゆっくりと、引きずって、自然の音のように― 16:23 

2 .第2楽章:力強い動きで、しかし速すぎずに―トリオ:適度に緩やかに   8:55

3 .第3楽章:荘厳に、そして威厳をもって、引きずらないように    10:25

4 .第4楽章:嵐のような動きで    20:09

 

指揮/レナード・バーンスタイン

演奏/ロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団 
 

録音/1987/10      アムステルダム、コンセルトヘボウ大ホール

 

DGG 00289 479 3009

 

 

 実際に手元にあるのは、「100グレートシンフォニー」と題されたボックスセットの中の一枚です。このセットのジャケットはただ作曲者名が書いてあるだけで曲名すら書かれていませんから意味がありません。そんな事で不評を買っていました。で安売りされていたので捕獲しました。また、この1番はバーンスタインの演奏が収録されていますが、5番は当時売り出し中のドゥダメルの演奏が収録されているなど、一貫性がありません。

 

 さて、この曲がその作曲年代からマーラーの青年期の感受性の発露であることに異論はありませんが、所謂青春の詩的に捉えるとこの演奏の最大の真価を聴き損なうかもしれないでしょう。 バーンスタインのこのDGへの録音シリーズでは、極めて濃密な解釈を大きく動かされるリズムやテンポで思いの丈を訴えた、稀にみる独自の主観的な演奏を繰り広げています、ややもするとくどくまた時として停滞しかねないそれらの表現も、マーラー独特の楽想に於いては非常な説得力を持ち得るのだし、この1番では曲想の軽さが表現の重さを幾分緩和していると感じろものです。もともとレコード時代はマーラーの代表曲というとこの第1番の「巨人」で、丁度LPむ一枚に収まる長さがその大きな理由を占めていたと考えられます。第5番がその座を奪ったのは、CDが発売されて以降で、70分以上が収録可能になったことと映画の「ベニスに死す」でマーラーが注目されてからでしょう。

 

 バーンスタインの最初の録音はCBSの1966年の録音で、この頃のCBSの録音は、乾いた音質と極端に左右が分離した、いわゆるピンポンステレオ録音で、不自然な音質に加えて、アナログ録音特有の磁気テープに起因するヒスノイズが耳障りなものでした。そして、やや高域を強調したバランスり録音で這い上がりなのが気になった部分がありましたが、このコンセルトヘボウとの録音は、DGのドンシャリ的な癖が残っているとはいえ、やはり録音会場がいいのでしょう、バランスの取れたいい録音になっていると思います。

 第1楽章は、やや重心が低めながらダイナミック・レンジの幅広さが増した豪快な演奏となっています。テンポの緩急が非常にわかりやすく変化がつけられており、それぞれの面でベストな音色で特に木管の響きがさすが、コンセルトヘボウという趣が出ています。曲のイメージとしての壮大な巨人の姿を想像することができるような始まりでしょう。

 

 第2楽章は推進力というよりは安定感が重視された演奏で、ここでも同様にやや低めの重心によって演奏されています。特にこの楽章ではチェロやコントラバスが全体の流れを作っています。中間部に入る前や終結部に向かう際にやや速くなったいますが、バーンスタインの起伏の大きさが音楽を一回り大きく感じさせています。さらに、中間部の優雅さはコンセルトヘボウ管の木管を中心とした牧歌的なサウンドと響きはニューヨークフィルにはない魅力があります。

 

 第3楽章も重心の低い響きはこの楽章の持つ雰囲気にマッチした響きになっています。この楽章ではテンポの細かい変化が感じられますが、バーンスタインの進化の証でしょう。より、心情的に深くマーラーの音楽に共感しています。DGはあまりコンセルトヘボウとの録音をしていませんが、こういう演奏を聴くと、もっとこのオーケストラを起用した録音を増やしてほしいと思わざるを得ません。

 

 第4楽章のバーンスタインの表情付けはここでも、細かくテンポを揺らしながら起伏の大きな表情で音楽を組み立てています。さすがマーラーの音楽の伝道者という雰囲気です。 もともと、マーラーの演奏に一家言を持つオーケストラですから愛称は抜群です。ここでは、特に金管楽器なのだが聴き手を圧倒するような分厚めの音圧が素晴らしいと思える頂点が何回もあるのでその時の衝撃が非常に心地よいです。終盤でホルン知友審の金管軍が全体を圧倒する時の破壊力はたまりません。映像で残るウィーンフィルとの演奏のさらなる進化系の姿がここにあります。