レコード芸術1974年1月号 1 | geezenstacの森

geezenstacの森

音楽に映画たまに美術、そして読書三昧のブログです

レコード芸術

1974年1月号

1

 

 

 今回から取り上げるのはレコード芸術1974年1月号です。レコード芸術は毎年1月号で前年度の「レコード・アカデミー賞」を発表していました。ネットもSNSもない時代でしたから発表はこの雑誌の新年号を見るまでは全く情報がありませんでした。ただ、前年の9月に始まった第4次中東戦争の影響で石油の危機で俗にいう「オイルショック」の波が押し寄せていました。それはレコードの値上がりという形で侵食していきます。ですからレコード産業の一つのピークはこの1973年だつたと言えるのではないでしょうか。

 

 

 今号の目次です。レコードアカデミーの特集ということでまずはそれから取り上げます。この年はベームが大活躍です。この号の表紙はカラヤンですが、カラヤンは全く顔を出していません。

 

 

各賞の審査員のメンバーがまず紹介されます。一年間のレコード芸術で採れあげられ推薦盤になったものがエントリーの対象となります。

 

 

 この年の特徴は、レコードアカデミー賞、4条前、選定委員によって対象が決まったのは今回が初めてです。そのレコードアカデミーの対象に選ばれたのは、なんと霊夢がバイロイト音楽祭で演奏した学劇にルンベルグの指輪全曲だと言うことです。これはフィリップスから発売されていますがベームの録音がフィリップスで発売されるのも珍しいことでした。

 

 下が書く部門で選定されたアルバムの一覧です。特徴を見てわかるのは全集が2点も含まれていることです。特別部門賞でもベームのシューベルト交響曲全集が選ばれています。これは必ずしも全曲が新譜と言うわけではなく、全集としてまとめられたということが評価されています。また、還元額部門では小澤征爾の「火の鳥」全曲が受賞しています。ただ、このアルバムがレコードアカデミーを取ったということは、もうあまり知られていないのではないでしょうか。

 

 オペラ部門で選ばれたベームのニーベルングの指輪は1966年1967年に上演されたものをが収録されています。モーツァルトのオペラからワーグナーの学劇に至るベームの人生を凝縮したようなこの演奏はライブと言う地図があってもおかしくない腫瘍ではありますが、一気に演奏されたということでは熱いドラマが展開しているような気がします。セッション録音で完成されたショルティの指輪とある意味対局的な位置にあるのが、このベームのリングではないでしょうか。

 

 

 本当の意味で新録音による全集は、このノイマンチェコフィルによるドヴォルザークの交響曲全集でした。こちらも一気呵成に録音されたという意味では、ノイマンの勢いのある指揮が全体の統一感をもたらし、ある意味、素晴らしい出来に仕上がっていたと考えられます。この時までにケルテスがロンド交響楽団で、またロヴィツキがまたクーベリックが全集を完成させていて、そのクーベリックも推薦盤になっていました。ただその中で1頭抜き出ていたのがこのノイマンによる全集なんでしょう。まぁ1つ言えるのは全部が本場物と言う点が特に評価された点ではないでしょうか。

 

  小澤征爾パリ管によるストラヴィンスキーのバレー音楽「火の鳥」全曲は1910年が使用されています。ただ自分にはこのレコードの記憶はほとんどありません。このジャケットも見た記憶がないのです。今となっては、幾多の名盤の中に埋もれてしまっているような演奏で、ここでも三浦淳が書いていますが、戦隊の響きとしてはパリ管を使いながらどこかソフィストケイトされた部分があり、切り込みにかける迫力のない仕上がりになっています。なぜこれが選ばれたかと言うと、多分日本人贔屓と言う部分があったのではないでしょうか。

 

 面白いことにここで論評を書いている人は選定作業には加わっていない人です。だからどちらかと言うと第三者的な意見でこのレコードを評価しています。小澤征爾も合わせ物のうまい指揮者だったとよく言われますが、オーマンディもその部類に入る指揮者ではなかったでしょうか。個人的には80歳を越したこの時期の再録音されたラフマニノフは、技巧的にも衰えがあり、これがルービンシュタインの音楽なのかという気がしないでもありませんでしたし、個人的にはもうその時代は終わっていたということがあり、全く注目をしなかった1枚でもあります。

 

 

 ウルリッヒ弦楽四重奏談のこのハイドンは予想だにしなかった1枚でもあります。コロンビアは宣伝が下手で、まさかこのレコードが推薦盤の中からアカデミーを受賞するとは思っていなかったのではないでしょうか。それが証拠にほとんど販促らしい販促はされていなかったような気がします。コロンビアレコードが他社にレーベルをどんどん奪われていく原因がこの広告戦略の失敗にあったような気がしてなりません。

 

 

ポリーニのショパンは選ばれて当然と言う1枚なのではないでしょうか。

 発売元はビクターですが、日本でのレーベルとしては新世界レコード扱いでした。この録音今はどこから発売されているのでしょうか?旧メロディア系列の音源は散逸してしまっていて、まともな扱いを受けていないのです。グローバルレベルではメロディアはEMIと提携していましたからEMI系のワーナーから発売されるとは思いますが、さて、国内盤はどうなんでしょう。

 

 

 この音源が果たして音楽史に分類されるのが正しいのかどうか分かりませんが、ホリガーがこういう録音を残してくれていたことが嬉しいですね。

 

 

 現代曲はツインマーマンといっても、ピアニストのツインマーマンとは違います。1970年に52歳で自殺をした作曲家のことです。このレコードには3つの作品が収録されていますが、多分ほとんどの人が耳にしたことがないでしょうし自分もこの作品を聞いた事はありません。

 

 武満徹の作品は、各社が争って録音するほど、日本人作曲家としては広く知られた作曲家でした。通常は日本でアルバムが制作されるのが常ですが、これはグラモフォン本体が録音をしています。そういうところにも武満徹の評価が評価の高さが伺えます。

 

 

 レベルをどんどん失っていた。コロンビアはソースを埋めるために、自社録音に台湾ざるを得なくなっていました。この園田隆弘をフューチャーしたバッハの平均律クラビア曲集は、抜粋と言う形ではありますが、バッハの宇宙感を克明に描いていて、評価できるものであります。ただこれも今では忘れ去られているんだろうなぁと言う気はします。

 

 

 この全集は企画賞ということで受賞しています。ベームがシューベルトの交響曲全集をグラモフォンで録音したということで、カラヤンはEMIにシューベルトの交響曲全集を残しています。多分かなり対抗意識があったのではないでしょうかねぇ。

 

 

 次はこの年のノミネート盤の一覧を紹介します。