ジャン・マルティノン アルルの女 | geezenstacの森

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ジャン・マルティノン

アルルの女組曲1、2

 

ビゼー/「アルルの女」

組曲第1番

1.前奏曲 7:11

2.メヌエット 3:13

3.アダージェット 2:53

4.カリヨン 4:02

組曲第2番
1.パストラール 6:16

2.インテルメッツオ 4:31

3.メヌエット 4:09 

4.ファランドール 3:26


指揮:ジャン・マルティノン

演奏:シカゴ交響楽団

録音:1967/04/26  オーケストラホール  シカゴ 

RVC株式会社 RGC-1015(原盤RCA)

JLY-2166,2167

 

 

 1972年9月5日に一挙40枚が発売された「RCAグランプリ1000クラシカル」シリーズはビクター音楽産業から発売されました。その最初の発売にこのレコードは含まれていたのですが、このデザインとは違います。下がその時のデザインで、ジャケットトップには赤い帯がデザインされていました。

 

 

 手元のレコードは1975年にRVC株式会社から再リリースされたものです。当然価格は1300円になっていました。ただ、レコード番号は一緒です。まあ、どちらの会社もRCAの資本が入った会社で単に組織体が変わっただけですからこういうことができたのでしょう。新しいデザインは安っぽさが消えてよかったのではないでしょうか。

 

 マルティノンのシカゴ響時代は1964年から1968年の4ねんかんでしたが、その評価は一般的に高いものではありませんでした。楽員と衝突して解雇を巡って裁判沙汰になったり、理事会と組合の抗争に巻き込まれたりしていました。

 

 また、録音もライナーのレパートリーの補完のようなものが多く、一般的なものが少なかったのも影響しているのではないでしょうか。この「アルルの女」組曲はサンな中でも一般的レパートリーとして売れた方ではないでしょうか。少なくとも日本では初期ロットが完売したのでこのデザインのものが発売されたと思われます。

 

前奏曲 7:11
 かなり肉厚のシンフォニックな表現の演奏です。当時のシカゴ響のち密なアンサンブルに乗って、サックスのソロはかなり豊満で甘い表情を持っていて美しいです。ライナーの鍛えたパワフルな響きはこの曲のイメージを一変させるものです。

 

 

メヌエット 3:13
 弦と絡むフルートをはじめ木管は意外なほどしなやかで美しい表情です。木簡が美しく絡み合い、躍動感がありまた良く引き締まっています。キラキラと輝くハープと木管とのアルペジオやきっちりと揃った減のアンサンブルのうまさにも圧倒されます。
 

 

 

アダージェット 2:53
 甘くなりすぎず、弦楽は繊細な響きで妖艶な旋律を歌い上げています。

 

 

カリヨン 4:02
 張りのある表現でアクセントが効いていてダイナミックな表現でオーケストラのうまさをひきだしています。中間部のフルート、オーボエのソロや掛け合いは生気があり感傷的な雰囲気もあります。こういうあたりはマルティノンらしい表現だと思います。

 

 

パストラール 6:16
 分厚い弦による堂々とした押し出し感が十分で厚いです。パンチの効いたリズムでシカゴ響の弦と管の咆哮が絶妙なバランスで名演を作り出しています。

 

 

インテルメッツオ 4:31
 サックスとコルネットのメロディが聴きものの曲です。メリハリがよく効いています。フレーズの歌い回しも見事で、シカゴ響の金管に加え木管群の情感を込めた歌いまわしもマルティノンマジックです。この演奏があまり知られていないのが不思議なくらいです。

 

 

 

メヌエット 4:09 
 編曲者のぎろーがひぜーのた作品の「美しきパースの娘」から借用した曲ですが、今ではアルルの女の曲として定着しています。フルート(ドナルド・ペック?)は装飾音は控えめでカビにならず、清々しく見事なソロです。手綱は引きつつもソロは自由に吹かせているところは流石です。この曲に限らず全体にフルートは朗々とした安定感があります。

 

 

ファランドール 3:26
 開始からシカゴ響の金管の鳴り方が尋常でなく、フルパワーがさく裂します。プロヴァンス太鼓の音色もびしっと決まっていて、キレが良く高揚感も十分。圧巻なのは終盤で、信じ難いような猛烈なダッシュがかかり、ほとんど演奏
 不可能なテンポまで加速します。まあ、フルベンの第九のような加速ですが、違うのはそのテンポでもシカゴ響は怒涛の如く最後まで一糸乱れず突っ走ります。燃えるマルティノンの意外な一面がうかがえます。

 

 

 残念なのは録音で強音部での音の割れ(特にコーダ)がかなり著しいです。現在はRCAに残した録音の全集(上の音源)が発売されていますが、その録音でもこの音の我を確認できます。レコードでは内周に行くにしたがって音のひずみは発生するのですが、この分だともともとリミッター以上の大音量で録音されていたのかもしれません。

 不覚にもこの録音は初めて耳にしていますが、従来のマルケヴィチやカラヤンの演奏よりも面白いと感じます。ただ、収録曲数が少ないのでそういう意味では廉価盤でCPは低かったのかなとはは思います。