懐かしのレコード芸術 1973年9月号 その4 | geezenstacの森

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懐かしのレコード芸術

1973年9月号 その4

 

 コロムビアは現在進行形中のマズア/ドレスデンフィルハーモニー管弦楽団、アンネローゼ・シュミットのモーツァルトピアノ協奏曲全集を発売中でした。こちらはシャルプラってんとオイロディスクの共同企画だったのでしょう。それもあり、日本ではコロムビアから発売されていたと思われます。この年の9月に来日公演していますから、タイミング的にはバッチリです。ただ、気になるのはコロムビアは当初全曲発売するつもりはなく、選集という形で発売しています。

 

 

 

 コロムビアは新・栄光のフルトヴェングラーシリーズとしてレギュラープライスで発売していました。下には新シリーズの1000円盤が登場しています。レコード番号からするとReが頭につきますからエラートのシリーズの続きみたいに見えますが、ジャケットデザインは全く異なります。まるでヒストリカル1000シリーズのような内容でステレオとモノラルが混在しています。REはステレオ、REMはモノラルと区分されています。エリー・ナイのピアノですから「コロッセウム」原盤でしょうか。ストコフスキーのスクリャービンとプロコフィエフはエベレスト原盤ですから、このシリーズは

 

 

 

 

 

 この号の目玉の特集はグラビアページで展開された「20世紀の演奏を考える」というものでした。そこで最初にまとめられたのは「20世紀前半を代表する24人の演奏家たち」という切り口です。

 

 

 この選定には柴田南雄、関根俊郎、黒田恭一というメンバーが記載されています。これはちょっと癖があるぞと思ったら案の定の選定になっています。本来は当時手に入るディスコグラフィが掲載されているのですが、カラヤンだけは膨大すぎて割愛しています。分類別にABC順に使用解されています。でも、カラヤンがいてバーンスタインがいないという現時点で見るとなんとも不思議な人選です。

 

 

 アバドはこの時代のホープであったことは確かです。ロンドン交響楽団とウィーンフィルという大陸を股にかけての活躍と、オペラという軸足をきっちり抑えていました。それに比べて、ブーレーズはいささか突飛といえないこともありません。ただ、1971年からはBBC交響楽団首席指揮者とニューヨーク・フィルハーモニック音楽監督を兼ねていましたし、この後1976年から1980年にはバイロイト音楽祭に出演。パトリス・シェロー演出の『ニーベルングの指環』は賛否両論を巻き起こしたことは記憶に鮮明に残っています。

 

 

 当時の音楽業界からすればこのメータのチョイスはあり得たのでしょう。メータはこの後ニューヨークへ転出していきますが、どうもそこでうまく波に乗り損なったのでしょう。ソニーのマーケティングがメータと合わなかったんではないでしょうかねぇ。一方のマリナーのチョイスも意外です。確かに当時は室内楽のホープとして色々新しい可能性を追求していましたが、旧来の枠の中での活躍でした。やがてピリオド勢が台頭してくるとちょっと霞んでしまいましたからねぇ。

 

 

 小沢も当時としてはやや提灯持ち的なことがあって取り上げられた気がしますが、着実に地歩を固めていました。ボストンに軸足を置きつつヨーロッパにも着実に地盤を築き、ベルリンフィルやパリ管、ロンドン響と活躍していました。何よりもバイタリティがありましたね。

 

 

 

 そして、カラヤンです。クラシック界の帝王という地位を築いていましたし、ベルリンフィルの終身指揮者で、さらにウィーンにも足場を持っていましたからやはり、最強でしょう。ただ、競合のバーンスタインの侵食を少しづつ受けつつあり、DGGもカラヤン一辺倒からバーンスタインにじつ足を移しつつあった時期とも言えます。膨大な録音量はレパートリーの広さを窺わせます。DGGを筆頭にEMI、DECCAとうまく使い分けていたのはさすがです。なを、ディスゴラフィは次の見開き2ページ以上にわたつていましたからカットしています。

 

 

 今から思うと、バロック中心だったカール・リヒターがリストアップされているのはいささか意外ではないでしょうか。

 

 

 ここからはピアニストです。グレン・グールドがリストアップされていますが、これは順当でしよう。録音点数は多くありませんが一枚一枚が話題に事欠きません。

 

 

 以外にもラドゥー・ルプーとフリードリッヒ・グルダがチョイスされています。この時点ではルプーはまだ新人の領域です。それでもピックアップされていることに驚きます。指揮界の異端児ブーレーズに続いてピアノ界からはグルダです。当時はホルスト・シュタインと組んだベートーヴェンのピアノ協奏曲全集が話題になっていました。ジャズもこなす2党流でウィーン三羽烏の中では抜きん出ていたような気がします。

 

 

 ポリーニも順当なリストアップでしょう。この時点では録音もまだ少なかったですが、その後のDGGと契約して話題作を連発します。10年間の隠遁生活は伊達ではなかったということでしょう。次のゲルハルト・ツァハーは全く知りませんでしたし、ウィキにもその名はありません。なぜ取り上げられたのかは疑問の残る一人です。

 

 

 チェロのジークフリート・バルムも未知の人です。ディスコグラフィから現代音楽に強い演奏者という評価なんでしょう。小生の範疇の人ではありませんが、1969年に「ドイツ・レコード賞」を、1972年に「国際レコード大賞」を受賞したようです。アイザック・スターンについてはその後も日本と深い関わりを持ちながら世界的に活躍していますから言わずもがなでしょう。

 

 

 

 この当時、ズーカーマン、バレンボイム、パールマンそしてデュプレなどは若手としてイキイキと活躍していました。その中でズーカーマンがピックアップされたのはいささか意外です。フランス・ブリュッヘンはリコーダーから指揮者に転向していきますが、まさに古楽からロマン派まで水準以上の演奏を聞かせてくれました。

 

 

 ヴィンコ・グロボカールも知りません。ここで取り上げられている未知の人はどうも現代音楽の奏者のようです。人選が偏っているような気もします。ハインツ・ホリガーは自他とも認めるオール・マイティーなオーボエ奏者でしょう。最近は指揮者としても活躍していてね今年も名古屋フィルに登場します。

 

 

 声楽のアーティストはなかなか評価しにくいものです。確かに当時はこの名を聞いていましたが10年経つたら忘れていました。

 

 

 声楽で印象に残っている筆頭はこのフィッシャー・ディスカウでしょう。オペラに歌曲に大活躍でしたからねぇ。

 

 

 ソプラノを二人取り上げるくらいならメゾ・ソプラノかアルトから一人チョイスした方が良かったのではと思います。もちろんギネス・ジョーンズの名前も記憶にありますが、10年経ったら忘れています。花の命は短いですなぁ。イ・ムジチは今でも活躍している団体で今年も来日しています。でも、今のトップは誰かと言われてもついぞ名前も出てきません。

 

 

 ラサール弦楽四重奏団は四重奏団の名前はジュリアード音楽院があったマンハッタンの通りの名前に由来する団体でしたが1987年に解散しています。一代限りの四重奏団はなかなか存続が難しいようです。

 

 

 ジュリアード弦楽四重奏団はメンバーを入れ替えながら現在でも活躍しています。そうそう、ラサール弦楽四重奏団もジュリアードの出身者なんでしたよねぇ。代替わりができるという意味では一人も登場していないロシアのボロディン弦楽四重奏団をピックアップしても良かったのではと思えてしまいます。

 

 まあ、色々突っ込みたくなるような内容ですが、こんなところが1973年時点の今後活躍するであろう演奏家たちでした。