名古屋ブルックナー管弦楽団第28回演奏会 | geezenstacの森

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名古屋ブルックナー管弦楽団第28回演奏会

 

名古屋ブルックナー管弦楽団第28回演奏会

日時 2023年7月29日(土)18:15開場 18:45開演

場所 愛知県芸術劇場コンサートホール

指揮 新田ユリ

曲目 シベリウス 交響曲第4番イ短調

   ブルックナー 交響曲第6番イ長調

 

 

 チケットをいただきましたのでこのコンサートに出かけてきました。曲目的には昨年と一緒のシベリウスとブルックナーというプログラムです。多分これは指揮者の新田ユリさんに配慮したものなのでしょう。何せ日本シベリウス協会の会長を務めていますからねぇ。そして、結論からいえば素晴らしい演奏でした。シベリウスの交響曲はこの4番以降だんだん内省的な音楽を志向するようになり、交響曲というスタイルよりも実際は交響詩のスタイルに近いものに変化して生きますが、この第4番はまた、4楽章構成に戻っています。

 

 

 当日のステージ構成です。ティンパニの左横に何やら変わった楽器が置かれています。この交響曲第4番は第四楽章ら「グロッケン」という楽器が指定されています。そのまま解釈すればグロッケンシュピール、つまりは鉄琴になるのですがここではこの楽器が使われました。拡大すると鐘だということがわかります。

 

 

 実際カラヤンなんかの録音には鉄琴が使われています。ですから、今回の演奏ではこの鐘が結構クリアに響いて曲を一層引き締めていました。

 

 演奏はコントラバスの重低音に始まり、それがチェロに引き継がれて主題を奏でますがこの入りと全体のテンポはじっくり目のテンポでドライブされ聴き応えがありました。第2楽章はアレグロ・モルト・ヴィヴァーチェで少しは明るい音楽になりますが、全体はピンとした緊張感の溢れる音楽に終始していて、シベリウスの深遠な音楽を響かせていました。全体に木管が活躍するのですが、その響きも乾燥した北欧の空気感にマッチした音楽になっていました。そして、クライマックスの第4てせも、チェロに導かれてグロッケンが高らかにその響きを打ち出し、なかなかのバランスでこの曲の味を引き出していました。昨年のシベリウスの6番もそうでしたが指揮者の新田さんは北欧音楽に造詣が深く、細かい指示も相まって素晴らしいシベリウスの音楽が繰り広げられました。多分、今の日本においてはシベリウスの第1人者と言ってもいいでしょう。

 

 困るのはこの曲コーダが短く、それも弦によって静かに奏でられて終わるので拍手のタイミングが難しいことです。オーケストラも今年はたっぷりリハーサルの時間が取れたのでしょうか、まとまりのある演奏でしっかり指揮者のタクトについていっていました。

 

 後半はこのオケの代名詞とでもいうべきブルックナーです。昨年は練習不足がちょっと露呈して散々な演奏でしたが、今年は大丈夫でした。編成を見てもこのオーケストラが低弦部の構成が分厚いのがわかります。今年はコントラバスが7挺です。個人的にこの6番はカイルベルトの演奏がディフェクト・スタンダードです。今回はステージやや左奥で聞いていましたがそれでもヴァイオリンの付点リズムに乗って、低弦が第1主題を提示し始めるともう独自のブルックナーの世界に引き込まれてしまいます。といっても、一番ブルックナーらしくない作品で特徴的なブルックナー原始雲は登場しません。新田氏はこのブルックナーでもゆったりとしたテンポで全体をまとめ上げサウンド的にはややシベリウスの延長上にある演奏に思われました。シベリウスでもそうでしたが、1楽章づつしっかりと間をとってはやる学院の手綱を締めながら実に丁寧な音楽づくりで見事にブルックナーワールドを作り上げていました。それは最後の拍手にも表れていて、きちんと最後の一音が終了してからブラベーの掛け声とともに割れんばかりの拍手が起こりました。

 

 

 下は前回第6番が演奏された時のものです。まだミスが目立ちました。

 

 

 このコンサート、チケットもペーパーレスの電子チケットなら、プログラムもネットからのダウンロードということで、チケット確認後のプログラムと大量のパンフレットもなく非常にすっきりとしたコンサートでした。たた、ホール内はスマホの電波抑制装置が作動していて、スマホで自由にプログラムを見ることができないというジレンマがあり、ここら辺が今後の問題でしょうなぁ。

 

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