コレギウム・アウレウムのブランデンブルク協奏曲
曲目/J.Sバッハ:ブランデンブルク協奏曲全集
第1番へ長調,BWV 1046
A1 Allegro 4:37
A2 Adagio 3:22
A3 Allegro 5:19
A4 Menuetto; Trio; Polacca; Trio 7:20
Bassoon [Baroque] – Werner Mauruschat
Cello – Angelica May
Double Bass – Heinz Detering
Harpsichord – Gustav Leonhardt
Horn [Natural] – Erich Penzel, Gerd Seifert
Oboe [Baroque] – Alfred Sous, Helmut Hucke, Ingo Goritzki
Viola – Franz Beyer, Günther Lemmen
Viola da Gamba – Johannes Koch
Violin – Brigitte Seeger, Doris Wolff-Malm, Günter Vollmer, Jan Reichow, Ruth Nielen, Wolfgang Neininger
Violino Piccolo – Franzjosef Maier
Bassoon [Baroque] – Werner Mauruschat
Cello – Angelica May
Double Bass – Heinz Detering
Harpsichord – Gustav Leonhardt
Horn [Natural] – Erich Penzel, Gerd Seifert
Oboe [Baroque] – Alfred Sous, Helmut Hucke, Ingo Goritzki
Viola – Franz Beyer, Günther Lemmen
Viola da Gamba – Johannes Koch
Violin – Brigitte Seeger, Doris Wolff-Malm, Günter Vollmer, Jan Reichow, Ruth Nielen, Wolfgang Neininger
Violino Piccolo – Franzjosef Maier
第3番ト長調, BWV 1048
B1 Allegro 6:34
B2 Allegro 5:23
Cello – Horst Beckedorf, Reinhold Johannes Buhl, Rudolf Mandalka
Double Bass – Paul Breuer
Harpsichord – Gustav Leonhardt
Viola – Doris Wolff-Malm, Franz Beyer, Günther Lemmen
Violin – Brigitte Seeger, Franzjosef Maier, Werner Neuhaus
Cello – Horst Beckedorf, Reinhold Johannes Buhl, Rudolf Mandalka
Double Bass – Paul Breuer
Harpsichord – Gustav Leonhardt
Viola – Doris Wolff-Malm, Franz Beyer, Günther Lemmen
Violin – Brigitte Seeger, Franzjosef Maier, Werner Neuhaus
第4番ト長調, BWV 1049
B3 Allegro 7:21
B4 Andante 3:45
B5 Presto 5:05
Cello – Horst Beckedorf
Double Bass – Paul Breuer
Harpsichord – Gustav Leonhardt
Recorder – Günter Höller*, Hans-Martin Linde
Viola – Günther Lemmen
Violin – Günter Vollmer, Werner Neuhaus
Violin [Solo] – Franzjosef Maier
Cello – Horst Beckedorf
Double Bass – Paul Breuer
Harpsichord – Gustav Leonhardt
Recorder – Günter Höller*, Hans-Martin Linde
Viola – Günther Lemmen
Violin – Günter Vollmer, Werner Neuhaus
Violin [Solo] – Franzjosef Maier
第5番ニ長調, BWV 1050
C1 Allegro 10:20
C2 Affettuoso 5:43
C3 Allegro 5:33
Cello – Angelica May
Double Bass – Johannes Koch
Flute [Solo] – Hans-Martin Linde
Harpsichord [Concertato] – Gustav Leonhardt
Viola – Erich Koch
Violin – Günter Vollmer
Violin [Solo] – Franzjosef Maier
Cello – Angelica May
Double Bass – Johannes Koch
Flute [Solo] – Hans-Martin Linde
Harpsichord [Concertato] – Gustav Leonhardt
Viola – Erich Koch
Violin – Günter Vollmer
Violin [Solo] – Franzjosef Maier
第2番ヘ長調, BWV 1047
D1 Allegro 5:26
D2 Andante 3:25
D3 Allegro Assai 2:57
Cello – Horst Beckedorf
Double Bass – Paul Breuer
Harpsichord – Gustav Leonhardt
Oboe [Baroque] – Helmut Hucke
Recorder – Hans-Martin Linde
Trumpet [Clarin] – Edward H. Tarr
Viola – Günter Lemmen*
Violin – Günter Vollmer, Werner Neuhaus
Violin [Solo] – Franzjosef Maier
Cello – Horst Beckedorf
Double Bass – Paul Breuer
Harpsichord – Gustav Leonhardt
Oboe [Baroque] – Helmut Hucke
Recorder – Hans-Martin Linde
Trumpet [Clarin] – Edward H. Tarr
Viola – Günter Lemmen*
Violin – Günter Vollmer, Werner Neuhaus
Violin [Solo] – Franzjosef Maier
第6番変ロ長調, BWV 1051
D4 Allegro 7:06
D5 Adagio Ma Non Tanto 4:38
D6 Allegro 5:50
Cello – Angelica May
Double Bass – Paul Breuer
Harpsichord – Gustav Leonhardt
Viola – Günther Lemmen, Ulrich Koch
Viola da Gamba – Heinrich Haferland, Johannes Koch
Cello – Angelica May
Double Bass – Paul Breuer
Harpsichord – Gustav Leonhardt
Viola – Günther Lemmen, Ulrich Koch
Viola da Gamba – Heinrich Haferland, Johannes Koch
演奏/コレギウム・アウレウム合奏団
録音/1966,67 キルヒハイム、フッガー城「糸杉の間」
テイチク ULX-3032-3( Deutsche Harmonia Mundi)
1972年に日本コロムビアから「エラート1000-バロックの大作曲家たち」という20枚のシリーズが発売されたのが小生のバロック音楽の入り口でした。ただし、このシリーズでは、ブランデンブルク協奏曲は第5番が収録されていただけで、クルト・レーデル/ミュンヘン・プロアルテ室内管弦楽団の演奏でした。エラートのやや冷ややかな音質によるクールな演奏でしたが、一度にこの曲のとりこになりました。面白いもので、このシリーズではブランデンブルク協奏曲はこの第5番だけ、管弦楽組曲は第2番だけが組み込まれていたのに対して、「音楽の捧げもの」は全曲がリリースされ、これも、クルト・レーデルの演奏で投入されていました。ブランデンブルク協奏曲は当時は高根の花だったんですなぁ。
さて、当時は輸入が自由化され、個人でレコードを輸入することが可能になっていました。デパートや大手レコード店でも盛んに輸入盤セールはしていましたが、欲しいものが手に入るとは限りません。そこで、愛好家のサークルに入り個人輸入の方法の伝授を受けチャレンジして入手したのがコレギウム・アウレウムのブランデンブルク協奏曲全曲でした。最初はアメリカ盤で所有したのです。それが下のジャケットのものでした。
なんと、アメリカではこのハルモニアムンディのライセンスはRCAが持っていて、しかもRCA VICTROLAという廉価盤のシリーズで発売されていたのです。シュワンのカタログを見ながら驚喜したものです。当時、イギリスとアメリカのショップに口座を作り、ロンドンレーベルのSTSシリーズやこのVICTROLAシリーズをせっせと個人輸入にいそしみました。今回捕獲したテイチク盤は最初のリリース盤で、2枚組で4400円もしましたが、VICTROLAなら$6.98で通関税込でも1000円ちょっとでした。
さらに、うれしいことにこのコレギウム・アウレウムの演奏、当時は「オリジナル楽器による auf Originalinstrumenten」と謳っていました。もちろんブランデンブルク協奏曲の録音は当時も山ほどあったし、古楽のチャンピオンレーベルであったアルヒーフには名盤の誉れ高いリヒター / ミュンヘン・バッハ管盤が、また古楽の老舗ダス・アルテ・ヴェルクには元祖ピリオド系のアーノンクール / コンツェントゥス・ムジクス・ヴィーン盤がありました。それに比類するレコードが僅か1000円ちょっとで手に入ったのですから極上の喜びでした。まあ、唯一のアメリカ盤の欠点はオートチェンジャー用の仕様になっていて、A面の裏はD面という作りになっていたことぐらいでしょうか。こと、ブランデンブルク協奏曲に関しては1曲がそれぞれの面に収録されていたので何ら問題はありませんでした。
しかしその後レオンハルト、ブリュッヘン、クイケン盤(SEON)やアンドリュー・パロット / タヴァナー・プレイヤーズ盤(EMI)、ムジカ・アンティクア・ケルン盤(Archiv)など、それ以後のピリオド系の演奏に触れるうちに、コレギウム・アウレウムは確かにオリジナル楽器、あるいはそれに近いものを使っていたであろうが、演奏様式はピリオド的ではなく現代的なものであることがわかってきました。ヴィブラートの常用、メッサ・ディ・ヴォーチェに拠らない現代的な歌い込み方、ピッチが現代の標準である a≒440 であることなど、ピリオド的と言われる演奏法や感覚とは明らかに違っていたのです。特に弦楽器の和音の鳴り方はまったく現代的なものです。
そこに気づいてからは、コレギウム・アウレウム盤の「オリジナル楽器による」という権威には、自分の中ではちょっと影が差したかなぁ、と感じるようになりました。あれはピリオド楽器と現代奏法のハイブリッドで、いわば古楽受容の歴史の上での過渡的な産物に過ぎなかったのではないか、というわけです。そういえばアルヒーフレーベルについての記事の最後に書いた、エドゥアルト・メルクスとカペラ・アカデミカ・ウィーンの演奏も、やはり楽器はオリジナル、奏法は現代的というハイブリッドであったように思います。ピリオド奏法とその響きが一般に受容される前の1960-70年代に行われた、一種の経過措置みたいなものだったのでしょうかね。まあ、そんなこんながあって、CD時代の到来とともにアメリカ盤はオークションで処分してしまいました。
数十年ぶりに聞くコレギウム・アウレウム盤のブランデンブルク協奏曲、かつての私のものさし・・・ああ何て豊かであったかい響きだろう!ホルンやトランペット、トラヴェルソなどは紛れもなくピリオド系の音がしてるけど、何より弦楽器群が楽器を豊かに鳴らしているし、全般にテンポもアンサンブルのたたずまいもゆったりとしていて、それにおそらくこのホール、フッガー城の「糸杉の間 」の響きもあるのでしょう、研ぎ澄まされたピリオド系のアンサンブルにありがちなどこか冷たい響きとはまったく違う、明るくあったかい音がしています。
それに腕達者なソリストたちが、ピリオド奏法にこだわらず伸び伸びと演奏していて、その表情がまたとてもよいのです。たとえば第4番のブロックフレーテなんて、息の圧力は音がひっくり返る寸前くらいに高く、大きなヴィブラートを終始かけまくりなんですが、楽器が芯まで鳴っていて「歌」がはっきりと感じられるから、それが許せちゃう。もちろんピリオド奏法でも楽器を芯まで鳴らすことはできますが、もしこのソリストたちがピリオド奏法にこだわって演奏したとしたら、これほど伸び伸びと朗らかな表情にはならなかったでしょう。この日本盤の解説は宇野功芳氏が書いているのですが、演奏者についてはあまり詳しく書かれていません。まあ、ブロックフレーテにハンス・マルティン・リンで、チェンバロはグスタフ・レオンハルト、コンサートマスターはフランツ・ヨーゼフマイアーぐらいは紹介されていますが、それぐらいです。ただ、裏ジャケットには曲ごとの詳しい演奏者リストが書かれています。改めてそのリストを眺めていると、チェロにアンジェリカ・マイの名前が見えます。女性のチェロ奏者で、のちにスプラフォンにドヴォルザークのチェロ協奏曲も録音しています。こんなところでも活躍していたんですなぁ。
というわけで、数十年ぶりに聞いたコレギウム・アウレウムのブランデンブルク協奏曲は、やっぱりとても楽しめるいい演奏だったのです。「オリジナル楽器による」を標榜しながら清く正しい純潔ピリオド系ではないけれど、ゆったりと暖かくのびのびと明るい雰囲気が身上ですね。ソロも文句なしに達者だしアンサンブルも整っていてきれいだし、録音も45年ほど前(1965~67年)のものながら、クリアで古さを感じさせません。改めて、この小生にとってのディフェクト・スタンダードに浸っています。