オーケストラ名曲集 1
The Collection of the Best Classical Music
曲目/
1.モーツァルト/歌劇「魔笛」序曲 7:13
指揮/カール・ベーム
演奏/ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団 1964
2.ウェーバー/歌劇「魔弾の射手」序曲 10:00
指揮/ラファエル・クーベリック
演奏/バイエルン放送交響楽団 1964
3.ワーグナー/歌劇「さまよえるオランダ人」序曲 10:21
指揮/カール・ベーム
演奏/バイロイト祝祭劇場管弦楽団 1971
4.ロッシーニ/歌劇「セヴィリアの理髪師」序曲 7:15
指揮/トゥリオ・セラフィン
演奏/ローマ歌劇場管弦楽団 1963
5.トーマ/歌劇「ミニヨン」序曲 7:57
指揮/ルイ・フレモー
演奏/モンテカルロ歌劇場管弦楽団 1965
6.ボロディン/歌劇「イーゴリ公」より「ダッタン人の踊り」 10:39
指揮/ルイ・フレモー
演奏/モンテカルロ歌劇場管弦楽団 1963
DGG HRC0015
今年の4月に捕獲したほるぷ出版の「The Collection of the Best Classical Music」全30枚の中の一枚です。この管弦楽曲集は第2巻の「管弦楽・声楽」編に含まれていたもので、多分市販されたことのない組み合わせの一枚です。
冒頭のベーム/ベルリンフィルの「魔笛」は全曲盤からの抜粋です。ベームはのちにモーツァルトの序曲集をリリースしていますが、その中で唯一ベルリンフィルを振っているのがこの「魔笛」です。この歌劇「魔笛」はベームにとって2度目の録音(第1回録音はDECCAレーベルにウィーン・フィルと録音、1955年)。若きヴンダーリヒのタミーノをはじめ、フィッシャー=ディースカウのパパゲーノなど、素晴らしい布陣による「魔笛」です。ベルリン・フィルの格調高く豊かな響きが作品全体を包み込み、唯一無二の名演を確固たるものにしています。
2曲目のクーベリックの「魔弾の射手」はウェーバーの序曲集として1964年に録音されたものの中からの選曲で、このクーベリックの序曲集はグラモフォン・スペシャル1300シリーズで再発されています。のちにクーベリックはこの歌劇を全曲録音していますから、そういう意味でもこの「魔弾の射手」がチョイスされたのでしょう。
3曲目はこのアルバムの中で最も録音が新しいのが「さまよえるオランダ人」です。同年のザルツブルク音楽祭でのライブ録音ですが。発売時には話題になった記憶があります。ベームは実演がすごいと元々言われていましたが、それを実感せしめたのがこの録音であったのですな。冒頭から緊迫感みなぎる序曲から凄い迫力で、聴き手を引きつけます。当時はデッカのスタジオ録音になるソニックステージが全盛で、ライブといえば添え物的な部分がありましたがこれはそういう風潮をふきとばす魅力がありました。録音はクラウス・シャイベが担当で、彼の手腕が光ります。
トゥリオ・セラフィンといえばこの時代のイタリアオペラをアルベルト・エレーデとともに引っ張っていました。だから、間違いがありません。イタリアオペラの真髄を聴くことができます。1963年10月ローマRCAスタジオでの録音です。ディレクターはハンス・ウェーバー、録音技師はギュンター・ヘルマンスという布陣ですからカラヤン/ベルリンフィルのコンビの録音したものです。序曲集として発売された中の一曲で、カラヤンのような厚化粧の演奏ではなくさっぱりといた歌い回しの中にキレのいい音楽がなっています。まさにオペラハウスの雰囲気を感じることのできる演奏で思いの外楽しめました。
B面最後はルイ・フレモーの演奏する作品が2曲収録されています。演奏するモンテカルロ歌劇場管弦楽団は今ではモンテカルロ・フィルハーモニー管弦楽団と名乗っていて2016年からは山田和樹がシェフを勤めています。その3代目の指揮者がこのルイ・フレモーで1956年から1965年まで10年間音楽監督を務めていました。このモンテカルロ時代オペラをてがけていたこともあり、収録されている録音が残ったのでしょう。ただ、この「ダッタン人」を聴いてびっくりするのではないでしょうか。他の演奏では見たことのない変なカットがあります。
それは冒頭部分で、いきなり頭がカットされていて、曲が第15小節目のオーボエのソロから始まります。冒頭に演奏されることが多い「ダッタンの娘の踊り」をカットすることはよくありますが、それ以上にカットした演奏というのは初めて聴きました。また、この録音典型的なドンシャリの昔のDGGの音を彷彿させる録音で反対に聞き惚れてしまいました。実にユニークな響きのする「ダッタン人の踊り」になっています。