村上春樹の音楽図鑑 | geezenstacの森

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村上春樹の音楽図鑑

 

著者:小西圭太

出版:ジャパン・ミックス

 

 

 

 村上春樹ワールドのBGMをすべて教えます!「風の歌を聴け」「レキシントンの幽霊」まで小説の中に流れる、ジャズ、クラシック、ロックなどすべてピックアップ、写真満載で徹底解説!村上春樹の新しい魅力に触れる音楽ガイドブック。---゛ータベース---

 

 手元にある本は1995年発売利書板本です。この後改訂版が1998年に発売されていて、そこまでに発売された村上春樹の著作情報も追加されているようですが、基本的な内容には変化は無いようです。

 

目次

風の歌を聴け
1973年のピンボール
羊をめぐる冒険
中国行きのスロウ・ボート
カンガルー日和
蛍・納屋を焼く・その他の短編
世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド
回転木馬のデッド・ヒート
パン屋再襲撃
ノルウェイの森

ダンス・ダンス・ダンス

TVピープル

国境の南、太陽の西

ねじまき鳥クロニクル

その他の短編

村上文学における音楽

索引

 

という内容になっています。キャリアからいって初期から中期の作品ということになりますが、これらの作品がなんて音楽にあふれていることでしょう。デビュー作の「風の歌を聴け」からして、もう彼の作品の特徴は感じ取れます。まあ、この作品はすでに氏がジャズ喫茶を経営していた頃に書かれていますから当然といえば当然なんでしょう。この本でも、「ミッキー・マウス・マーチ」から始まります。ということで、決してジャズに傾注した作品ということでもありません。次にはブルック・ベントンの「レイニー・ナイト・イン・ジョージア」、邦題は「雨のジョージア」ですな。

 

 

 そうかと思えば、C.C.Rの「フール・ストップ・ザ・レイン」、ビーチ・ボーイズの「カルフォルニア・ガールズ」、さらにはベートーヴェンのピアノ協奏曲第3番」なんかも紹介されています。本命・のジャズではマイルス・デイヴィスの「ア・ギャル・イン・キャリコ」が登場します。レは小説の中では主人公の彼女がチョイスする曲なんです。なんてハイセンスな彼女なんでしょうね。曲は1955年6月録音のモノラルです。録音は先に紹介した「ジャズの秘境」に登場する「ルディ・ヴァン・ゲルダー」が手がけた録音です。

 

 

 この本は村上春樹の長編小説だけでなく、短編も取り上げられています。そして、各作品の紹介の扉にはその作品に使われている楽曲の訳詩まで掲載されています。「中国行きのスロウ・ボート」の扉にはC.C.Rの「雨を見たかい」の訳詞が載っています。

 

ずっと昔、誰かが教えてくれたんだ

嵐の前には静けさがあるってことを僕はずいぶん前から

そんな嵐の到来を予感してる

そして嵐が去ったあとには晴れた日がやってくるという

陽の光は水のようにきらめきながら

降り注いでくるという

教えておくれよ

キミは雨を見たかい?

教えておくれよ

キミは雨を見たかい?

晴れた日に降る雨を見たことがあるかい?

 

ってなもんです。曲はこうです。

 

 

 こんな調子で、曲とアーティストが紹介されていくわけです。まあ、ポップスの場合は曲とアーティストがが一致しますからそれほど問題はないのですが、クラシックの場合は曲目だけが文字として表現されていてねアーティストと結びつくことはあまりありません。必然的に間違いも起こります。例えば「ノルウェーの森」の項目でのマーラーの紹介で、ワルターが交響曲全集を録音していると紹介していますが、ワルターはモノラルを含めても第1番、第2番、第4番、5番、9番しか録音していません。

 

 そんなことで、巻末の索引ではポップスはちゃんとしていますがクラシックは参考にはなりません。著者の作品ではのちに、『村上春樹を聴く。』と言う著作もありますが、そちらは村上をワールドの世界観を音でも聞けるようにCDがついています。