クラウディオ・アバド/ベルリンフィル
ドヴォルザーク 交響曲第8番
曲目/
ドヴォルザーク:交響曲第8番ト長調 作品88
1.Allegro Con Brio 10:27
2.Adagio 10:22
3.Allegretto Grazioso - Molto Vivace 5:57
4.Allgero Ma Non Troppo 9:53
メンデルスゾーン:真夏の夜の夢」序曲Op21. 11:50
R.シュトラウス:交響詩『ティル・オイレンシュピーゲルの愉快ないたずら』作品28 14:27
指揮/クラウディオ・アバド
演奏/ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団
録音/1993/11/16-19 フィルハーモニー、ベルリン
P:ミハイル・ハース
E:トニー・ヒードラー
sonny classical 886973859629
アバドのソニーに残した録音で手元に珍しいドヴォルザークがありましたので取り上げてみます。手元にあるのはドイツの「KulturSPIEGE」から発売されたもので、日本盤とは収録曲目が違います。本来は2枚組で発売されていたものの片割れです。こちらはソニーの音源、もう一枚はグラモフォンの音源が収録されています。
アバド60歳の時のBPOを振ってのドヴォルザーク交響曲第8番で、1993年ライブ録音です。この時の演奏会データは以下のようになっています。
6, 17, 18 & 19 November 1993
Philharmonie, Berlin
Murray Perahia (Klavier)Dovorák
Die Mittagshexe op. 108Beethoven
Klavierkonzert Nr. 3Dovorák
Symphonie Nr. 8 op. 88
アバドのドヴォルザークの録音は非常に少なく、交響曲はこの8番とグラモフォンに9番を、そして、交響詩を2曲録音しているだけです。この事実だけを取るとドヴォルザークを苦手としていたと言ってもいいでしょう。それでも、この残された録音を聴くと捨てがたい演奏であることが再確認できます。
第1楽章は、あっさりした出だしの中にも表情があり、ふとした処でソフトになり段落付けで次に移る際に音量を弱めにに歌わせます。BPOの金属的音質が気になる時はあるのですが今言った「優しさ」がそれを救ってくれます。
第2楽章は特にほのぼのとした室内楽的雰囲気でヴァイオリンと管楽器の遣り取りが実に綺麗です。この当時は安永氏がコンマスですから、ヴァイオリンのソロは彼が演奏しているのかもしれません。音の振れ幅がダイナミックな楽章で、ピークでの管鳴らしは静けさとの対比が巧妙です。カンタービレを効かせた歌い回しは、所謂ボヘミア的自然風景とはやや異なりますが、そのゆったとした歌い回しは音楽を聴く幸せを感じます。
民族舞曲のメロディ線を前面にした第3楽章でもそのテーマの歌わせ方は丁寧にフレーズを積み重ねていって、細かいテンポの変化と強弱工夫を加えて情感溢れる音楽を聴かせてくれます。
最終楽章は冒頭のトランペットのファンファーレがちょっとおとなしいのが残念ですが、活発さを軸にしますが基本的アプローチは今までと同じ、時に聴こえない?くらいピアノで表現し、音楽に幅をもたせています。しかし活発さは失わずメロディを下からしゃくる様にする処にも見られ、躍動感も活きています。中間部のフルートと弦との掛け合いは聴きものです。ちょうどこの頃エマニュエル・パユが首席フルート奏者になっていますから彼のフルートソロでしょうかねぇ。全体としてやや遅めのテンポで音楽が推移しますが、最後のコーダだけは畳み掛けるようなアップテンポで疾駆します。それでもオーケストラは破綻しなくきっちりアバドの棒につけています。
2曲目の真夏の夜の夢」序曲はロンドン響の旧録音より幾分アップテンポで筋肉質の演奏に仕上がっています。また、最後の「ティル・オイレンシュピーゲルの愉快ないたずら』もカラヤンの名園の前で霞んでしまっていますが、いやいや、これもいい演奏です。カラヤンは緻密な演奏テスが、アバドはこの交響詩の物語性を前面に出して非常にわかりやすい演奏になっています。