幻想古書店で珈琲を 2
青薔薇の庭園へ
著者/蒼月海里
出版/角川春樹事務所 ハルキ文庫
本や人との「縁」を失くした者の前にだけ現れるという不思議な古書店『止まり木』。自らを魔法使いだと名乗る店主・亜門に誘われ、名取司はひょんなことからその古書店で働くことになった。ある日、司が店番をしていると亜門の友人コバルトがやって来た。司の力を借りたいと、強引に「お茶会」が開催されるコバルトの庭園へと連れて行かれてしまう――
(「第二話 ツカサ・イン・ワンダーガーデン」より)。
本と人で紡がれた、心がホッとする物語。待望のシリーズ第二弾。---データベース---.
第一作では、それほど感じなかったのですが、この小説はファンタジーでありながら女性が全く登場しないという、かなりBL寄りの作品ということができます。魔法使い亜門の古書店で働く名取司くん。そんな古書店「止まり木」には今日も円を亡くした人が現れます。この本の章立てです。
第一話 司、亜門との関係に悩む
幕間 公共の場の珈琲
第二話 ツカサ・イン・ワンダーガーデン
幕間 それぞれの珈琲
第三話 司、亜門と将来を考える
この間で登場する作品は第一話がサン・テグジュペリの「夜間飛行」で、悩めるIT企業社長に進路を教え心の平安をもたらす話
悩めるIT企業社長に進路を教え心の平安をもたらす話。第二話は
ルイス・キャロルの「不思議の国のアリス」の世界が描かれており、司がアモンの古い友コバルトに奇妙な庭園に招かれて茶会を体験する話です。そして、第三話はライマン・フランク・ボーム
のオズの魔法使い」がベースで取り上げられていて、悩む絵本作家志望の青年を手助けする話で構成されています。
ということで、ある程度元ネタの本を知っていないと理解が難しい点があります。小生なんかはサン・テグジュペリなんかは「星の王子さま」しか知らないわけで、原題が「Little Prince」ということも知りませんでした。(^_^;)そんなわけで、WIKIで「夜間飛行」を検索して、あわててあらすじを確認して読み進めました。
また、「不思議の国のアリス」なんかは、子供時代にも読んだことがなく、タイトルこそは知っていても内容はチンプンカンプンでした。かろうじて、「オズの魔法使い」はジュディ・ガーランドの主演した1939年の映画を見ていましたから分かってはいたものの小説としては読んでいません。
さて、この巻では司の友人、三谷太一がようやく亜門と対面します。ところが場所は「止まり木」ではありません。なぜか、神田神保町駅から皇居方面に向かう途中にある学士会館の一階にある喫茶店です。多分「止まり木」は「縁」を失くした者しか入れないということなんでしょうなぁ。
また、第二話でコバルトはティーパーティを開催するという設定ですが、肝心のティーポットの中には眠りネズミが住んでいるのです。でもって、止まり木にやってくるときは珈琲を所望するという矛盾もあります。ただ、この中で描かれるコバルトの読書術、本を途中から読んでどうしてこうなったか想像し、クライマックス直前に最初から読んで答え合わせするというのは意外とおもしろいかもしれないですなぁ。
第三話では司の人生の方向性が少し見えてきます。そういう意味でも、このシリーズのファンタジックな面白さが少し見えてきたのかなと思えます。