ヴァージル・フォックス
バッハ・オルガン名曲集
曲目/バッハ
1.Toccata And Fugue In D Minor, BWV 565 8:42
2.”Little" Fugue In G Minor, BWV 578 3:40
3.Jesu, Joy Of Man's Desiring 4:05
4.Now Thank We All Our God 4:39
5Air For The G-String 4:10
6.Sheep May Safely Graze 6:34
7.Arioso (from Cantata No. 156) 4:33
8.Sleepers, Wake!, BWV 645 4:30
オルガン/ヴァージナル・フォックス
P:ピーター・デルファイム
E:Sam Stellato
録音/1974 ロイヤル・アルバート・ホール 1,2 ロンドン
リバーサイド教会 ニューヨーク
RCA RVC-2091
日本では1976年に発売されたアルバムです。ヴァージル・フォックスといつても日本ではそんなに知られていないのではないでしょうか。レコード時代はレーベルごとにオルガンアーティストは決まっていて、グラモフォン/アルヒーフはヘルムート・ヴァルヒャ、エラートがマリー・クレール=アラン、デッカ/テレフンケンはカール・リヒターやダニエル・コルゼンパ、CBSがパワー・ビッグス、EMIはウェルナー・ヤコブ、そしてRCAがヴァージル・フォックスと色分けされていました。
その中でも、ヴァージル・フォックスはちょっと異色な存在でした。何しろバッハを大衆化するためにかなり、ロック寄りの演奏を展開したからです。そんなことで、評論家からは酷評されたりもしていました。ただ、若者ウケは良かったようでアメリカではレコードがよく売れていました。日本ではCD化はRCAビクター時代は発売されませんでしたが、アメリカではこのレコードがVICVROLAシリーズで発売されました。下がその写真です。
このレコードの面白いところは1、2曲目がイギリスのロイヤル・アルバートホールで収録されていることです。このホールは1871年に建てられていますが、最初からオルガンも設置されています。高さ21メートル、パイプ数は9999本。1871年の制作当時に世界一と言われたこのパイプ・オルガンは、圧倒的存在でした。
ロイヤル・アルバート・ホール
パイプオルガン
ただ、ホールは円形ドーム構造のため長年ひどいエコーに悩まされていましたが、1960年代後半にさまざまな実験が行われた結果、85個のファイバーグラス製の拡散器を天井から吊るすことで解決しました。この装置はその形から「マッシュルーム」と呼ばれています。
ここに収録されている音源はこのマッシュルーム効果を確認できる貴重な録音です。その迫力ある響きとフォックスのユニークな演奏を聴いてみてください。
普段耳にするオーソドックスな演奏とは一味もふた味も違うことがわかるでしょう。でも、楽しい演奏です。次は有名な小フーガです。本来は可愛らしい曲ですが、フォックスの手にかかると巨大な作品に聴こえてしまいます。
上記の2曲以外はニューヨークにあるリヴァーサイド教会のエオリアン・スキナー製のパイプオルガンを使用して演奏されています。ここも1万本以上のパイプを誇りますが、チョイスされた曲のせいでそれほどスケール感は感じません。しっとりとした味わいは楽しめます。「主よ、人の望みの喜びよ」です。
ヴァージル・フォックスは編曲も手がけていて、G線上のアリアは彼の編曲になるものです。
次はカンタータ208番の中のアリアで、一般には「羊は安らかに草を喰む」と呼ばれています。これも親しまれている曲です。
「アリオーソ」はカンタータ156番の第1局のシンフォニアです。
最後は「目覚めよと呼ぶ声が聞こえ」です。元々はカンタータ147番の曲ですが、バッハはのちにBWV.645としてコラールに編曲しています。
後半はおとなしめの曲が並びますが、ヴァージル・フォックスはバッハの作品をより若者に親しんでもらうために積極的に編曲してアプローチしています。国内盤はCDでもありませんから中古レコードを探すか、海外盤を見つけるしかありません。