リビングステレオ/ハイフェッツ
バッハ、モーツァルト、ブラームス
曲目/
バッハ 2つのヴァイオリンのための協奏曲 ニ短調 BWV1043
1. Vivace 3:45
2. Largo ma non tanto 6:04
3. Allegro 4:53
ヴァイオリン– ヤッシャ・ハイフェッツ、エリック・フリードマン
指揮– マルコム・サージェント
演奏– ロンドン新交響楽団*
モーツァルト 協奏交響曲 変ホ長調 K.364 (for Vn,Va,1779)
4. Allegro maestoso 12:19
5. Andante 8:50
6. Presto 6:00
指揮– アイズラー・ソロモン
演奏 – RCAビクター交響楽団
ヴァイオリン– ヤッシャ・ハイフェッツ
ヴィオラ– ウィリアム・プリムローズ
ブラームス ヴァイオリンとチェロのための二重協奏曲 イ短調 Op.102 (1887)
7. Allegro 14:47
8. Andante 6:49
9. Vivace non troppo 7:43
ヴァイオリン– ヤッシャ・ハイフェッツ
チェロ– .グレゴール・ピアティゴルスキー
指揮– アルフレード・ウォーレンシュタイン
演奏 – RCAビクター交響楽団
Producer – エリック・スミス*, ジョン・ファイフナー
Engineer – ジェームズ・ニコラス
録音 – 1-3 1961/05/19,20 ウォルサムストウ・タウンホール、ロンドン
4-6 1956/10/02 リパブリック・スタジオ9, ハリウッド
7-9 1960/05/19,20 リパブリック・スタジオ9, ハリウッド
RCA Red Seal – 88765414972-53
ハイフェッツが1950年代から1960年代にかけてステレオで再録音した一連の協奏曲シリーズは、いずれも不朽の名盤として発売以来一度もカタログから消えたことがありません。このアルバムは、2人の独奏者用に作曲された協奏曲を3曲収録しており、盟友ピアティゴルスキー(チェロ)、プリムローズ(ヴィオラ)、そして弟子のフリードマン(ヴァイオリン)とハイフェッツの共演を堪能することができます。
ただ、個人的にはレコード時代のハイフェッツは既に過去の人で、全く興味がありませんでした。RCAはサポート体制が場当たり的で、共演者については無頓着なのか、指揮者やオーケストラは適当にチョイスしたかのような印象です。モーツァルトなどは最たるもので、アイズラー・ソロモンなんて他では耳にしたことはありません。ハイフェッツの名前だけで売れると思っていたのでしょうなあ。
最初のバッハは、1946年のモノラル録音(ハイフェッツ自身による多重録音)以来2度目の録音です。プロデューサーにエリック・スミスの名前があったのでちょっとびっくりしました。確かにモーツァルトやブラームスにはない音の響きがあります。本家のRCAは3チャンネル録音でしたが、ロンドンでデッカのスタッフによって収録されたためオリジナルは2チャンネル収録です。デッカツリーでの録音なんでしょう。しかし、この曲だけ音場が広く感じます。初出はベートーヴェンの「クロイツェル」とのカップリングで発売されていました。この3曲の組み合わせになったのはCD時代になってからで、CDでは1986年に発売されています。
ヴィヴラートをかけた録音のため今となってはちょっと古めかしい音がします。手元に1987年のレコ芸の「名曲名盤500」というムックがあるのですが、そこではこの演奏はチョイスされていません。まあ、編集の仕方もあるのでしょうがこれはやっぱりハイフェッツを聴くべき演奏なのでしょう。
続くモーツァルトはハイフェッツ唯一の録音で、初出はジョージ・ベンジャミンの「ロマンティックな幻想曲」とのカップリングでした。ここで指揮をしているアイズラー・ソロモンはヴァイオリニスト出身の指揮者で、当時はインディアナポリス交響楽団の首席指揮者をしていた人物です。
アイズラー・ソロモン
新進気鋭の指揮者として登用したのでしょうが、そつなく纏めてはいますが、それ以上でも以下でもありません。これもやはり、ハイフェッツやプリムローズの演奏を楽しむ録音なんでしょう。ハイフェッツの音色はビロードのように美しくその技巧は冴え渡っています。まさに名手のぶつかり合いの迫力はあります。ただ、先の名盤500では7人の選者のうち高橋晃氏一人だけが票を入れているだけで、もうこの時代はアーノンクール/クレーメル、カシュカシアンがぶっちぎりで1位になっています。
最後のブラームスの初出は豪華仕様のソリア・シリーズでした。よほど売上が見込まれたのでしょうかねぇ。でも、名盤500ではモーツァルトと同じ結果です。トップはオイストラフ、ロストロポーヴィチ、セル/クリーヴランドが7人中6人の得票でダントツのトップです。この当時はこの名盤はまだ日本ではメロディアから発売されていました。
こちらもハイフェッツとピアティゴルスキーの丁々発止のやり取りは聴きものですが、サポート陣がアルフレード・ウォーレンシュタイン/RCA交響楽団と弱いのが難点ですわな。RCAはシカゴ響やボストン響を抱えていながらそれらをうまく利用しなかったこの60年代の録音の失敗がCBSとの大きな差になって現れたと言ってもいいでしょう。
リビングステレオで聴くこれらの録音は音も良く、一つ一つ聴けばそれぞれは個性的でいい演奏なのでしょうが、どうも単品となればなかなか触手が動かないのも事実です。
ソリストはハイフェッツ、ピアティゴルスキーのままでの指揮者がバーンスタイン/ニューヨークフィルでのライブ録音があります。音は貧弱ですがこちらの方がはるかに聞きごたえがあります。