シュターミッツ四重奏団のドヴォルザーク | geezenstacの森

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シュターミッツ四重奏団のドヴォルザーク

 

曲目/ドヴォルザーク

弦楽4重奏曲 第12番 ヘ長調 作品96 B179 「アメリカ」 

第1楽章    7:29

第2楽章    8:35

第3楽章    3:58

第4楽章    5:48

弦楽4重奏曲 第13番 ト長調 作品106 B192 

第1楽章    10:15

第2楽章    10:34

第3楽章    7:22

第4楽章    11:19

 

演奏/シュターミッツ四重奏団、プラハ

第1ヴァイオリン/ボフスラフ・マトゥシェク

第2ヴァイオリン/ヨゼフ・ケクラ

ヴィオラ/ヤン・ペルシュカ

チェロ/ウラジミール・レクシネル

 

録音/1987

P:ルドルフ・バイヤー

E:クリスチャン・シュルツ

 

Brilliant 99949/10 (原盤ドイツBayer)

 

 

 もともとはドイツBAYERから発売されていたのですが、今ではブリリアントから再発されているもののほうが流通量は多いでしょう。小生が購入したのもそのブリリアント盤です。多分廉価版で発売された最初のドヴォルザークの弦楽四重奏全集だったと記憶しています。

 

 ドヴォルザークの弦楽四重奏曲というと第12番の「アメリカ」が突出していてその他の作品は殆ど知られていません。彼の交響曲にしてもそうで7番から9番は頻繁に演奏会にも登場しますが、その他の作品は一向に見向きもされません。しかし、個人的にはチャイコフスキーよりも好きな作曲家で交響曲全集もチャイコフスキー2に対してドヴォルザークは10種類以上所有しています。

 

 まあ、そんな中での弦楽四重奏曲です。ここでは12番の「アメリカ」と最後の作品となる13番を取り上げます。このシュターミッツ弦楽四重奏団は、1985 年にプラハで結成された。その名は同郷のボヘミアの作曲家Johann Wenzel Stamitzに由来しています。結成当時のメンバーは第1ヴァイオリン/ボフスラフ・マトゥシェク、第2ヴァイオリン/ヨゼフ・ケクラ、ヴィオラ/ヤン・ペルシュカ、チェロ/ウラジミール・レクシネルで、第1ヴァイオリンのボフスラフ・マトゥシェクは1977-79年には読売日本交響楽団のコンマスを努めていたので知っている人も多いのではないでしょうか。なお、現在では第1ヴァイオリンはインドゥジフ・パズデラに交代しています。

 


 その演奏は、テンポからいえばややゆっくり目でしょうか。 弾むような調子の良さという方向ではないですが、その分誠実にじっくりと弾いている感じです。繊細でよく歌っており、スメタナ四重奏団のような緻密な演奏ではありませんが、郷土愛を感じ慈しみのある演奏です。時々、はっとするような旋律が耳に届き、新鮮な感覚に包まれます。

 

 

 アメリカの第二楽章はゆったりしているがこその美しい味わ いがあります。歌うような第1ヴァイオリンのマトゥシェクの響きは哀愁を誘います。

 

 

 アメリカ生活での鳥のさえずりを模したと言われる旋律に溢れた楽章ですが、それをじっくりとしたテンポで緻密に描いています。 

 

 

 終楽章も元気良過ぎるということはありません。それでいて演奏は地についた響きだ聞くものに曲の醍醐味を着実に伝えています。

 

 2曲めはドヴォルザーク最後の作品番号を持つ弦楽四重奏曲です。よく四重奏曲は最小のオーケストラだと言われますが、この曲はまさにそれを感じさせる曲になっています。ドヴォルザークは稀代のメロディメーカーだと焼成は思っていますが、この曲もそういう魅力的な旋律にあふれています。この第13番は、アメリカから帰国して半年後のドヴォルザークの傑作と言われている曲です。4楽章全体では40分程度という非常に長い曲ですが、これより前に着手され完成が遅れた第14番とともに最後の弦楽四重奏曲として高い評価を得ています。

 

 

 「アメリカ」もそうですが、この曲も序奏なしにいきなり始まります。あふれるメロディで包まれる曲で、短いフレーズでメロディが次から次に紡ぎ出されます。シュターミッツ四重奏団は丁寧にそれらのメロディを奏で飽きさせません。

 

 

 第2楽章は口ずさめるような明るい楽しいものではなく、亡くなった人への思い(この年、若い頃憧れていた現夫人の姉が亡くなっています)、祖国への愛、人生をあきらめる気持ち、ボヘミアの草原ーさらさらした草原ではなくて、何かしらの湿度を感じる感じる曲調です。

 

 

 第三楽章もなにやら悲しみの風の中で踊りを踊っているようで切ない響きです。第14番を差し置いてこちらの完成を急いだのは妻の姉への追悼という意味での気持ちが優先したのでしょうなぁ。

 

 

 第4楽章でここがクライマックスでしょう。辛口で地味な感じな曲なんですけど、最終的に彼の祈りが出ている、賛美歌風でもあり、初恋の人に対する追憶というかそれが一番顕著に出た部分と思います。全体で40分ほどかかる曲ですが、ドヴォルザークは1ヶ月ほどで書き上げています。それだけ集中して作曲したということでしょう。奇しくも12番もそんな早描きの曲ということもあり、このCDは傑作2曲が収録された

 

 

シュターミッツ弦楽四重奏団

現在のメンバーは、インドゥジフ・パズデラ(第1ヴァイオリン)、ヨゼフ・ケクラ(第2ヴァイオリン)、ヤン・ペルシュカ(ヴィオラ)、ウラジミール・レクシネル(チェロ)である。1986年にザルツブルグで行われた国際室内楽コンクール(EBU後援)で第1位に入賞して以来、高い注目を集め、プラハの春はもとより、世界の名だたる音楽祭や主要な都市に招かれており、演奏は国際的な評価を得ている。アメリカでは「チェコの伝統に根付いた音楽の理解、バランスのとれたトーン---、メンバーがそれぞれに完全なパートナーとして弾力性と叙情性をもって演奏した」と評された。レパートリーは幅広く、中でもチェコの作曲家たち、ヤナーチェク、スメタナ、ドヴォルザーク、マルティヌー、ハバの作品の演奏では高く評価されており、ドヴォルザークの弦楽四重奏曲Op.96&106及びマルティヌーの弦楽四重奏曲のCDは、シャルル・クロアカデミーのディスク大賞を2度受賞した。チェコ文化庁から名誉賞を贈られており、現在、世界で注目を集めている弦楽四重奏団の一つである。