名フィル 第81回市民会館名曲シリーズ 〈欧州音楽紀行Ⅰ ハンガリー〉 | geezenstacの森

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名フィル 第81回市民会館名曲シリーズ

 〈欧州音楽紀行Ⅰ ハンガリー〉

 

プログラム

▊ バルトーク:ハンガリーの風景 Sz.97
▊ バルトーク:ピアノ協奏曲第3番 Sz.119*

▊ バルトーク:ミクロコスモス 第6巻より 第146番「オスティナート」 
▊ バルトーク:『中国の不思議な役人(不思議なマンダリン)』 作品19,Sz.73組曲
▊ コダーイ:ハンガリー民謡『孔雀』による変奏曲

 

指揮/高関健

ピアノ/金子三勇士

演奏/名古屋フィルハーモニー交響楽団

 

 27日は名フィルの第81回市民会館名曲シリーズ 〈欧州音楽紀行Ⅰ ハンガリー〉へ出かけてきました。この名曲シリーズは多彩な指揮者が登場するので、今年もシーズン券を購入しました。ということで、今シーズンの第1回目はハンガリーでした。個人的にはコダーイが1曲だけだったのはちょっと寂しいところでしたが、バルトークの普段コンサートではあまり聞くことができない曲を堪能できたということでは良しとしましょう。指揮者の高関健氏とピアニストの金子三勇士氏の共演というのも聴きどころではありました。ただ、ここのところコンマスが首席客演の植村太郎氏ばかりなのが少々気がかりです。

 

 
 この日のステージは上記のような大編成でした。ヴァイオリン軍の後ろにはハープ、チェレスタ、ピアノが陣取っています。なぜかピアノは下手袖にももう一台置かれていました。
 
 冒頭は「ハンガリーの風景」と紹介されていますが、以前は「ハンガリアン・スケッチ」と表記されていて、小生はこちらの方が馴染みがあります。バルトークは1979年にキングがハンガリーのフンガロトンやクアリトン原盤を使って1300円の廉価盤が発売されて色々入手しました。その中にこの「ハンガリアン・スケッチ」も含まれていて親しんでいました。バルトークの中では比較的親しみやすい曲です。民族音楽を採譜し、そのメロディをバルトークは作品の中に使っています。
 
 1曲目『素描』第5曲「豚飼い?の踊り」を民族音楽研究でも知られるBartók自身が村人に実際に演奏してもらい、Edison式蝋管録音機で収集した原曲がハンガリーのフンガロトンによりYouTubeにアップされています。

 

 

 高関健氏の指揮は初めて接しましたが、以前何かのほんでベルリオーズの幻想交響曲に対するアナリーゼでその解釈に深く共鳴したのを覚えています。的確な指揮で、冒頭のクラリネットの響きからハンガリーの田園のフア系が目の前に広がりました。

 

1. セークレルの夕べ Ein Abend am Lande (An Evening in the Village)  

2. 熊踊り Bärentanz (Bear Dance) 

3. メロディ Melodie (Melody)  

4. ほろ酔い加減 Etwas angeheitert (Slightly Tipsy)  

5. 豚飼いの踊り Uröger Hirtentanz (Swineherd's Dance)

 

 元々はピアノ曲からの編曲作品ですが、緩ー急ー緩という曲の配列で見事な音画になっていました。そのため、最初から盛大な拍手が起こりました。

 

 2曲目は一つの聴き物としてのバルトークのピアノ協奏曲第3番です。妻のために作曲した曲ですが、完成を待たずにバルトークは亡くなっています。最終校訂譜には指揮者のショルティも関わっています。そんなバルトーク最晩年の作品を今回はハンガリーにルーツを持ちバルトークを得意とする金子三勇士氏が演奏するのですから興味津々でした。実は金子三勇士氏は2017年にも一度名フィルとこの曲を演奏しています。その時の演奏が下の映像です。

 

 

 今回はさらにタッチにキレがあり、冒頭のさざ波のようなオーケストラに乗って透明な鋭いリズムが、ハーモニーにプラスして、新たな次元を生み出している演奏になっていました。終演後にはここでも盛大な拍手に応えて、アンコール曲としてミクロコスモス 第6巻より 第146番「オスティナート」が演奏されました。そうそう、金子氏は5月7日のテレ朝系の題名のない音楽会

にも登場しますぞ。

 

終演後のオフショットオフィシャルツィッターより

 

 後半は、これも代表曲ながら滅多に演奏されない、「中国の不思議な役人」です。この曲は時代的にはブーレーズの名演を聴いて開眼したのですが、吹奏楽では意外と広く取り上げられています。元々が狂気の混じった音楽で暴力的な響きがこの曲の魅力なんですが、冒頭のトロンボーンの響きからして異様な世界を感じさせます。どこと亡くストラヴィンスキーの「春の祭典」を思わせる節回しを感じさせます。まあ、この二つの作品はどう時代の産物なんですな。打楽器奏者が6人も必要とされる曲で、そのサウンドの交通整理も大変なのでしょうが、高関健氏は見事な交通整理で名フィルの高いポテンシャルを引き出していました。名フィルの技術も上がったものです。

 

 最後のコダーイのハンガリー民謡『孔雀』による変奏曲も民謡を主題とした曲ですが、アムステルダム・コンセルトヘボウ管弦楽団の創立50周年を記念して作曲されました。 初演は、1939年11月23日にウィレム・メンゲルベルク指揮、アムステルダム・コンセルトヘボウ管弦楽団により行われています。16の変奏曲によって成り立っていますが、小生には聞き分けられません。(^_^;)

 

 金管が活躍するということで、この作品も吹奏楽ではよく取り上げられています。コダーイは「ハーリ・ヤーノシュ」ばかりが突出して人気がありますが、この孔雀はハンガリーの民謡を強く石工させる構成になっていてねこたーいらし沢感じるにはこちらの作品の方がいいでしょうなぁ。そういう意味では色々な曲を楽しめた充実したコンサートでした。

 

終演後のカーテンコール