夜想曲 | geezenstacの森

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夜 想 曲

 

著者:太田忠司

出版社:光文社

 

 

 あのオルゴールは呪われている。命が惜しければ手を出すな。天才的修復師・雪永鋼のもとに持ち込まれたものは、壊れたオルゴール、忘れられていた手紙、隠された真実。そして、謎めいた遺産と脅迫状。清廉な筆致で静かな感動を呼ぶ、傑作本格推理。---データベース---

 

 これは先日取り上げた「レストア」の続編です。ただし、まだ文庫本化されてないからなんでしょうが、表紙にはそれらしきことは一言も謳っていません。時間的には前作から8年経過しています。この巻では、雪永鋼はすでに結婚しています。前巻の最後で飯村睦月とハグをしていましたが、結婚した相手は睦月ではありません。この巻の章立てです。今回はすべてショパンの曲名でまとめられています。

 

子犬のワルツ

木枯らし

別れの曲

英雄

雨だれ

夜想曲

 

 前作は、主人公が鬱病の辛い時に周りに振り回される状況で、鬱々とした雰囲気だったのですが、今作は結婚して気持ちも安定したせいなのか、淡々としているけれど主人公が生き生きしているように感じられます。そして、時間の経過はありますが主要人物は前作を引き継いでおり、唯一違うのが、遠江女史の運転手だったスキー好きの望月は独立して起業していて、後任は津賀という若い男に変わっています。それだけ年月が経過している証拠なんでしょうなぁ。

 

 

 さて、冒頭から妻が登場します。その存在は鋼に優しく寄り添うように、しかし、鬱病には良い緩衝材のような存在として描かれています。この妻の名は最後の方で明かされますが、8年の月日は鋼にとっては良い月日の流れ方をしたようです。

 

 

 鋼はどうもアシュケナージの弾くショパンが好きなようです。

 

 

 鋼の家系も複雑なようですが、表面上は会社を継いでいる姉ともそこそこ良い関係を築けている様子です。前作は遠江女史に絡むお家騒動がオルゴールを巡ってありましたが、今回はその火の粉が鋼自身にも降りかかってきます。 

 

 

 ストーリーの流れから妻が喫茶店を開くことになっていきます。喫茶店モンシェリを経営していた夫妻から引退するので店を引き受けてくれないかと言われたのです。鋼は妻の好きなようにさせて喫茶店を引き受けます。新しい店の名前は「ステラ」、鋼が飼っている犬の名前です。

 

 

 まあ、ストーリーの流れから前作を読んでいれば妻の存在が誰であるかは推察できます。妻も前作にはさりげなく登場していました。

 

 

 喫茶店のオープンの日にはたくさんのお客さんが駆けつけてくれます。店にはシンボルのディスク式オルゴールのポリフォン104がデーンと置かれ存在感を示しています。そのオープンで最初に流れるのが夜想曲第2番です。それは妻のリクエストでした。

 

 

 これがポリフォン104です。ペニー硬貨を投入するとディスクが回転してオルゴールがなる仕組みになっています。ただねメットを探してもこの104がショパンを奏でている音源はありませんでした。だも、こんな尾根ゴールのある喫茶店はさぞかしユニークでしょうなぁ。

 

 小説としてはソフト推理小説ですが、それを抜きにしても楽しめる小説に仕上がっています。