レコード復権
NHKのWEBニュースで最近、「“底なし”のレコード需要 ~人気再燃のなぜ?~」という記事がありました。CDに主役の座を奪われ、一時は消滅の危機にあったアナログレコード。しかし数年前からレコード人気が再燃し、アメリカでは去年、CDの売り上げを34年ぶりに上回るなど世界的なブームになっています。
最近はあえてアナログレコードでしか新譜をリリースしないアーティストも出てきています。
日本レコード協会によるとアナログレコードの生産額は、41年前の1980年がピークで1812億円。
しかし、そのあと登場したCDやインターネットの音楽配信サービスに取って代わられる形で2010年には1億7000万円まで落ち込みました。
しかし、それからじわじわレコード人気が再燃。
2020年の国内での生産額は21億1700万円と、この10年で12倍に増えています。
しかし、製造現場は今まで大変でした。日本のレコード会社だけでなく、欧米の大手も全ての工場でレコード製造は停止し、唯一国内で製造していたのは「東洋化成株式会社」というところだけでした。カッティングについては、日本国内では東洋化成の他に日本コロムビア、JVCケンウッド・クリエイティブメディア、ソニー・ミュージックスタジオ(2017年より)、STUDIO Dede(2015年より)、ミキサーズラボ(2017年より)が行っているのですが、プレスはこの東洋化成が一手に引き受けていました。ただし、この需要の高まりを受け、ソニーが2017年から静岡県の大井川工場で、プレス事業を再開しています。この工場現在で土日を含め24時間3交代でフル生産を行なっているそうです。
さて、このレコード製造には多くの工程が必要です。先にカッティングは数社で行なっていると書きましたがそのマスターのラッカー盤を製造しているのはこれまた、現在では長野県上伊那郡宮田村にあるパブリックレコード(株)という会社1社しかありません。この会社、1976年に創立、1982年からラッカー盤の製造をスタートさせています。音楽再生メディアがCDに移り変わった時代になっても、ラッカー盤の製造をやめずにその技術を現代まで継承し続けてきた会社です。本業は塗装屋でもあり、金属板に「一切のゴミを入れず、完全に真っ平らに」ラッカーを塗布する非常に高い技術を有する会社でなのです。
2020年2月まではアメリカのカリフォルニア州にApollo/Transcoという会社があり、これまで世界のラッカー盤の供給の大多数を担っていました。それが火事で甚大な損傷を発生し、製造不能になってしまったのです。ですから今では日本のパブリック・レコードが全てを供給しているというわけです。
カッティングマシンでラッカー盤に音を刻んでいきます。
レコード製造にはこのラッカー盤が必要なんです。上の工程表の一番左の部分です。レコード時代には音の良いものを求めて、2つ目の金属マスターからいきなりレコードをブレスする「マスタープレス」なるものも存在はましたが、通常は凸→凹→凸を経てレコードがプレスされます。
この黒いペレット状のものが塩化ビニールです。
すっかり息を吹き返し、絶好調にみえるレコード市場ですが、すべて順風満帆という訳ではないようです。レコードは、「塩化ビニール樹脂」というプラスチックの一種でできています。160グラムほどの樹脂を蒸気で溶かし、粘土状に固めたものを金型でプレスして作られます。その原材料は「石油」と「塩」。このため最近の原油価格の高騰の影響を避けることができないのです。神父レコードは値上げされることはあっても値下げは無理でしょうなぁ。
そんな中、日本の中古レコードが世界の注目を集めているようです。日本人はその国民性から、日本の中古レコードは欧米のものと比べて傷が少ないものが多く、保存状態が良いため、海外で特に人気が高いといいます。また日本独自の仕様としての帯が付いているということでも、付加価値をつけているといいます。