鼠、狸囃子に踊る
著者:赤川次郎
出版:株式会社KADOKAWA
女医の千草の手伝いで、一人でお使いに出かけたお国。帰り道に耳にしたのは、お囃子の音色。フラフラと音が鳴る方へ覗きに行ったはいいが、人っ子一人、見当たらない。次郎吉も話半分に聞いていたが……。
鼠シレーズは第1作しか取り上げていませんが、実はもう何作か読んでいます。ただ、どの話もテレビを意識した原作見たく、展開が早すぎて面白いのですが、取り上げるにはちよっとなぁという気持ちが先行しパスしていました。たまたま、この一作は4話しか収録していなくてあっという間に読み終わってしまいます。ちなみに内容は、
鼠、影を踏む(『デジタル野性時代』2013年12月号・2014年1月号)
鼠、夢に追われる(『小説野性時代』2014年1月号)
鼠、狸囃子に踊る(『デジタル野性時代』2014年2月号・3月号)
鼠、狐の恋に会う(『小説野性時代』2014年2月号・3月号
という内容で、テレビ化の放送に合わせて急遽発売されたことが想像されます。そんなことで、解説にはこのシリーズの脚本を担当した川崎いずみ氏が書いています。そういうこともあり、この作品で一番面白かったのはこの解説の部分でした。(^_^;)
基本的に赤川氏は推理小説作家で、時代小説は唯一の作品ということで認識していますから、ストーリー展開は設定だけが時代小説で、人物の行動は現代的なスマートさで話はキビキビ進んでいきます。
この巻のエピソードは、テレビを意識してかかなり、会話調のテンポでどんどん先に進んでいくところが伺えます。そのほとんどは誰が発したのかの説明もありません。なので会話の流れを頭からしっかりと追いかけていかないと、あっという間に話の流れを見失ってしまいます。そう、字面を眼で追いかけるだけで聞き流してはいけないのです。しっかりと彼ら、彼女らの会話に聞き耳を立てていなくてはストーリーについていけません。
まだ場面転換が早く、行間を読んでいないと今の話がどこに切り替わっているのか一瞬理解できない時がままあります。そんなことでは流し読みしているとストーリーに置いて行かれます。それは自分の想像力が試されているようでもあります。
他作はシリーズとしては7作目です。どこから読んでも違和感のないシリーズは主要メンバー以外はほとんど変わらないからでしょう。唯一時系列で影響している部分は、女医の千草と次郎吉の関係性だけでしょう。ただ、赤川小説では多分ハッピーエンドで終わることはないような気がします。
ここまで巻数が進むとこの本で忍び込んだのって表題作だけで、盗みもほぼしてない展開になっています。つまりは、盗人よりも世話好きの私立探偵のような性格になってきています。そこがちょっと気がかりかな。