バック・トゥ・1971/05−2 | geezenstacの森

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バック・トゥ・1971

レコード芸術1971年5月号 2

 

 5月号の目次です。

 

 この号の特集は「商品としてのレコードを考える」というもので、

・ライナー・ノートの効用/荻昌弘

・ジャケットの美学-パッケージとしてのジャケット/富永壯彦

・廃盤・再発盤は避けられないのか/相沢翔八郎

・国内録音・廉価盤/高柳守雄

の4つの記事が組まれています。また、話題の新盤をめぐってとして、

・新しき歩みを止めぬ創造者ブーレーズ/大宮真琴

・バロック音楽における通奏低音と即興演奏/高野紀子

・同曲異版のレコードを探る

の3つの記事が組まれています。それらはおいおい紹介するとして、この号に掲載されているグラビアの続きです。

 

 

キョン・ファ・チョンとシェリング、アレクサンダー・ギブソン

 

 キョン・ファは1970年にチャイコフスキーとシベリウスのヴァイオリン協奏曲でデビューしています。バックはプレヴィン/ロンドン響です。当時22歳という若さです。シェリングはギブソン/ニュー・フィルハーモニアとくんでモーツァルトのヴァイオリン協奏曲全集を完成させています。

 

スメターチェクとプラハ交響楽団

 当時は第2のカラヤンと目されていたスメターチェクの演奏がスプラフォンから発売されるというのでこのグラビアが掲載されています。

 

クラウディオ・シモーネとイ・ソリスティ・ベネティ

 バロックブームに便乗するかのように、この頃続々と室内合奏団がデビューしています。

 

パスカル・ロジェ

 ロジェはリストのアルバムでこの年デビューしています。

 

若き日のマイケル・ティルソン=トーマス

1970年にスタインバーグの代役でボストン響デビュー

チェンバロ奏者のイゴール・キプニス

ヴァイオリニスト、ルジェーロ・リッチ

ネルソン・フレイレ

 

 


 話題の新盤の一つ「新しき歩みを止めぬ創造者ブーレーズ」の記事で取り上げているブーレーズの「運命」です。1枚のレコードを4ページ使って広告しています。このブーレーズの「運命」の登場時は世界最長の「運命」ということで話題になりました。何となれば、この運命では第3楽章のトリオの終わった後(235小節と236小節の間)は、旧来のブライトコプフ版スコアではダブルバーになっていたのです。ベートーヴェンは、初演の時まではここに慣例通りにリピート記号をつけてスケルツォ冒頭にダカーポすることにしていたのですが、後に彼自身の手でこのリピート記号を削除した、とされているとしたのです。ですから形の上では5部形式で演奏されているんですなぁ。

 

 で、当時はこの部分を取り上げて大宮真琴氏がその真意を探っているのですが、否定的な結論です。また、この号の巻頭言でも村田武雄氏も否定的な見解ですが、それよりもブーレーズの遅いテンポのことに言及していて、これ以上遅いテンポではアンサンブルが破綻するであろうとしています。

 

 さて、結論的にはこの第3楽章のスケルツォのリピートは1977年にはペータース社からダ・カーポを採用したペーター・ギュルケ校訂の新版が刊行されています。そして、古楽器の世界では一般的になっていて、ベーラ・ドラホシュ、ノリントン、ホグウッド、アーノンクール、そしてデル・マー版使用と銘打ったジンマンなども採用しています。ということで、「運命」の常識が変わったターニングポイントの一枚としては記憶にとどめておくといいのかもしれません。テンポにも注目してみて下さい。

 

 

 

 そして、問題の第3楽章以降です。