浅草妖刀殺人事件―耳袋秘帖 | geezenstacの森

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浅草妖刀殺人事件―耳袋秘帖

 

著者/風野真知雄

出版/大和書房 だいわ文庫

 

 

 凶悪な盗人「おたすけ兄弟」が隠した金を、町奉行所の中間が使い込んだ。病に罹った娘を救うために、高額の薬代を用立てなければならなかったのだ。おたすけ兄弟から追われる身になった中間だが、奉行所には頼れない―。奇談集『耳袋』を書き記した赤鬼奉行根岸肥前が、江戸に起きる怪事件の謎を次々解き明かす痛快お裁き帖。シリーズ第三弾。

 

 耳袋秘帖シリーズ3巻。刀屋ばかりを狙う盗人「おたすけ兄弟」の現場に偶然居合わせた坂巻ですが、それを嘲笑うかの如く忽然と消える軽業師の強盗たちです。その「お助け兄弟」が近所の神社に金を隠すのを見た町奉行所の中間・与之吉は、病弱な娘おかよの薬代にとこれをネコババしてしまいます。しかし、それは彼らに知られるところとなり、やがて兄弟に嗅ぎつけられ、身の回りに危険が迫ってきます。

 

 このメインストーリーを縦軸に、根岸が拾い上げる市井の奇怪な現象を探索する坂巻と粟田です。縁の下に引きこもる娘おもんの謎や、怪異「髪切」から発覚していく大酉藩御家騒動が絡んでいき、タイトルにもなっている妖刀「村正」までもが登場して事件は大団円を迎えます。この「村正」こそおたすけ兄弟が狙っていたものでした。しかし、粟田と坂巻との死闘の末、お助け兄弟は村正とともに倒れます。

 

 事件の背後にはこの村正を所有していた武具屋が一枚噛んでいました。このシリーズは、短編を繋ぐように1つの大きな事件が軸となる連作になっていることで、最後には見事な決着を見ます。そして、前巻では十辺舎一九が登場しましたが、この巻でも

のちに大泥棒になる鼠小僧次郎吉がさりげなく登場します。そういうちょっとしたエピソードも紛れ込ます作者の語り口は読んでいて痛快です。

 

 そして、最後は粟田と雪乃の祝言のエピソードまで盛り込まれています。

 ここでは「だいわ文庫」版を取り上げていますが、すでに絶版になっています。小生は中古を漁りましたが今は文春文庫で読めます。