カラヤンのシューベルト 4
交響曲第7番「未完成」、8番「ザ・グレート」
シューベルト/
交響曲 No.8 ロ短調 D.759 「未完成」 (1822)
1. Allegro moderato 12:25
2. Andante con moto 13:48
シューベルト 交響曲 No.9 ハ長調 D.944 「ザ・グレイト」 (1826) *
1. Andante - Allegro ma non troppo 13:03
2. Andante con moto 13:12
3. Scherzo. Allegro vivace - Trio 14:17
4. Finale. Allegro vivace 11:56
指揮/ヘルベルト・フォン・カラヤン
演奏/ベルリン・フィルハーモニー・管弦楽団
録音/1975/01,1978/01* フィルハーモニー、ベルリン
P:ミシェル・グロッツ
E:ウォルフガング・ゲーリッヒ
EMI 5 12038 2
カラヤンのシューベルト全集の最後の録音です。この全集の中で、「未完成」だけは1975年の録音です。この録音当時は4ちゃる録音の全盛期で、その流れの中でオリジナルはクォドラフォニックで録音されていました。面白いことに録音データを見ると、この1975年1月の録音時にトラブルにより第1楽章は編集ミスで使えなかったという記述がネットにありました。ただ、今現在このソースが発売されているということは、これは憶測ですがステレオ録音のソースがトラブルとなったのではないかと考えます。何となれば初出ではこの「未完成」はハイドンの交響曲第104番「ロンドン」とのカップリングで1976年に4チャンネル盤で発売されています。ただし、国内盤(EMI EAC-80297)はステレオ表記しかありません。
さて、この演奏についてですが、ちょっと時間を置いたのには理由があります。小生はシューベルトの交響曲のなかで、未完成だけはどうも好きになれません。レコード時代は定番といえば、ベートーヴェンの「運命」とシューベルトの「未完成」が定番でしたが、小生は一枚も所有しませんでした。世の中未完成は2楽章だけで完成されているといいますが所詮未完成です。スケッチもあるのにシューベルトが放置したのはそれなりの理由があるのでしょう。
ここでのカラヤンのテンポは、アレグロと言うよりはアンダンテのテンポで、しかもずっしりと重量感のある響きで開始されます。これがちょっと重苦しいと感じます。個人的には、第1楽章がこのゆったりとしたテンポで始まる曲はあまり好きでは無いようで、例えばチャイコフスキーの交響曲第6番「悲愴」も、レコード時代はほとんど購入した記憶がありません。
先ほどもちょっと書きましたが、この録音多分4チャンネルのソースから2チャンネルにトラックダウンしたものが使用されているのではないでしょうか。カラヤンのドイツグラモフォンの録音ではもう少し早いテンポ(11:28 12:34)で演奏していたのですが、このEMIの録音のテンポはそれよりも遅いと言うことで、ますます聴く気がしなくなってきてしまいます。ただ、演奏自体は立派でフルオーケストラのシューベルトならではのゴージャスな響きがします。
シューベルトの8番と9番が一緒に収録されていると言うCDは珍しいのですが、この第9番もカラヤン美学の頂点を極める演奏だと言えます。DGGのカラヤンの録音はどちらかというとちょっと馬力で押し切るやや硬めの響きですが、この時代のEMIのカラヤンの録音は同じホールで録音しているのに包み込むようなサウンドで音がDGGに比べてやわらかく、刺激的な音になっていません。これがこのシューベルトにはベストマッチの響きになっていると言えます。
そう言えばカラヤンはモーツァルトの交響曲もほとんどをEMIに録音していますが、柔らかい響きでのモーツァルトを好んだような気がします。