ストコフスキーの革命
曲目/
ショスタコーヴィチ/交響曲第5番ニ長調Op.47「革命」
1. Moderato
2. Allegretto
3. Largo
4. Allegro non troppo
指揮/レオポルド・ストコフスキー
演奏/ニューヨーク・スタジアム交響楽団
ヒューストン交響楽団*
録音/1958/10,ニューヨーク
日本コロムビア MS1029(エヴェレスト原盤)
1000円盤恋歌レコードの火付け役となった「ダイヤモンド1000シリーズ」の一枚です。初期のシリーズはあまり触手が動きませんでしたが、途中から手持ちの契約レーベルを総動員してカタログが充実してきました。その最初の一枚がこのストコフスキーの「革命」で、この後リヒャルト・シュトラウス物やプロコフィエフのピーターと狼などがこのシリーズに投入されています。いずれもエヴェレスト原盤で、ジャケットにも記載がありませんが、もとは35ミリのマグネチック・フィルム・レコーディングされたもので、発売当初はハイ・ファイ録音として話題になったものです。ショスタコーヴィチの方はオーケストラはニューヨーク・スタジアム交響楽団の演奏と表記されていますが、れっきとしたニューヨーク・フィルハーモニックの演奏です。当時、ニューヨーク・フィルハーモニックといえばCBSの専属で、契約の関係でこういう名前になったようです。ストコフスキーは1946-1950年のシーズンこのニューヨーク・フィルハーモニックの常任をしていますからまんざら縁がない訳でもありません。
ストコフスキーはショスタコーヴィチの交響曲をけっこう録音しています。CD化されているものは第1、5、6、7、10、11番です。まさに同時代を生きた作曲家ということで現代音楽を積極的に初演していたストコフスキーの面目躍如と言った所でしょうか。
古今の名曲ではかなり、ストコ節を効かせてデフォルメしている演奏も多いのですが、けっこうまっとうな解釈を聴かせています。
第1楽章は緊張感漂う入りでドラマティックです。アクセントの付け方辺りはかなりロマンティックな表情です。ただ、オケの出来は今ひとつで、金管にしろフルート・ソロにしろミスが結構あります。ニューヨーク・フィルの一時低迷していた事を証明するようで残念です。まあ、ストコフスキー自体があまり細かい所は気にしていないみたいですがね。マルチマイクを使っているようで所々ソロの音を拾うのに伴って盛大にハムノイズが混入してきます。しかし、音の鮮度は50年代の録音としては最高水準で、壮大なショスタコーヴィチ・サウンドが楽しめます。ピアノの音も中央に定位するし、木琴の音も他の楽器にかき消される事無くちャんと聴き取れます。
第2楽章は一番楽しい仕上がりになっています。叙情楽章で始まる曲なのでこの楽章は快活なアレグレットになっています。
ラールゴの第3楽章は最もショスタコーヴィチらしい旋律に溢れる楽章です。ストコフスキーは現にヴィヴラートを掛けてよく歌わせています。ここでも、一本調子のフルートの音色だけがやや違和感がありますが、オーケストラのサウンドはバランスが録れていてそれこそ、御得意のバッハのオルガンのような響きを作り出しています。低弦のアクセントがやや強調されて響きに芯が通っています。
第4楽章は早からず遅からずのテンポで入ります。ちょっと緊張感には欠けるのですが、ティンバニのおどろおどろして響きはインパクトがあります。トランペットの響きなどちょっとムーディに流れるのが残念です。しかし。この時代の演奏はみんなこんなもんですから無い物ねだりといえない事もありません。まあ、ストコフスキーの演奏に精神的深みを求めてもあまり意味がありません。それよりも音色を楽しみましょう。多分ストコフスキーは指揮はアシスタントに任せてモニタールームで各楽器の音のバランスのチェックをしているのではないでしょうか。そんな光景が目の前に浮かびます。きらびやかなサウンドは各楽器の音を過不足無く響かせています。コーダに向かっての低域主体の地響きを伴う音の洪水はストコフスキーの面目躍如で最後のティンパニとバスドラムのなんと力強い事か!