ぼくたちクラシックつながり | geezenstacの森

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ぼくたちクラシックつながり

ピアニストが読む音楽マンガ

 

著者/青柳いづみこ

出版/文藝春秋 文春新書

 

 

 どうして音楽を聴いただけですぐに弾けるの?オーケストラが鳴る指揮者とは?『のだめカンタービレ』『ピアノの森』『神童』など音楽マンガを読み解き、クラシックの世界の深奥に誘う。---データベース---

 

 この本は先日訪れた豊橋の友人宅にあったもので、もう読んだから持ってっていいよということで、譲ってもらったものです。まあ、小生が読めば、ブログに取り上げると思ったんでしょうな。まあ、その策にはズッポリはまってますけどね。

 

 て、この本は2008年に出版されています。テレビで「のだめ・カンタービレ」が放送され話題になったのは2006年でしたが、マンガとしての作品は2001年からスタートしていました。何しろあのお方いレコード芸術でもこの「のだめカンタービレ」が紹介されたこともあるほどギョーカイでは知られた存在でした。かくいう小生もレコ芸でその存在を知り、テレビドラマでハマったクチです。この頃までのフジのドラマは活気がありましたからねぇ。

 

 さらにこの本では、のだめに加えて、同じ音楽マンガの「ピアノの森」と「神童」についても触れながら、ピアノの周辺の話題をエッセイ風に書き綴ったものです。といっても、メインは「のだめ」で後の2作は付け足し的に登場します。この本の章立てです。

 

第1章:一回読譜したらとっととやるぞ! 

第2章:楽譜どおり弾け! 

第3章:バレンボイム対ホロビッツ!? 

第4章:コンクール派と非コンクール派 

第5章:留学 第6章:指揮者の謎 

第7章:コンサートで受けるプログラム 

第8章:音楽は人間が出る? 

第9章:ピアニストは本当に不良債権か? 

 

 ピアニストの視点で書かれていますから、勢いその流れが中心ですが、のだめ中心ということでは指揮者の千秋を無視することはできませんから「プラティニ指揮者コンクール」での千秋の優勝への道筋にも少しは触れられています。ただ、この本は進行形の時点で書かれていますから、ちょっとやっつけ仕事的な内容で、最後の章なんか、全く関係のないピアニストを目指して成功するかという話題でお茶を濁しています。スポーツ選手でもそうですが、成功して世の中に認知される人物なんてほんの一握りであることはどの業界でも一緒です。ことさら、ピアニストだけが不良債権になるとは思いませんから、この章はなくても良かったんではないでしょうかね。

 

 長年クラシック音楽を聴いてきていますから、この本に登場するピアニストは大体はわかりますが、どういうものかフランスのピアニストが中心になっていて、じゃかすか名前が登場します。でも、読者にはほとんどわからないのではないでしょうかねぇ。7王巻末にクラシック用語の説明が書かれていますが、これをやるなら、登場するピアニストについても一言紹介文をつけても良かったのではないでしょうか。

 

 余談ですが、その中で、最近フランソワ・デュシャーブルの名前を聞かなくなったなぁと思ったらなんと引退していたんですなぁ。wikiには2003年に演奏活動と決別し、引退。としか書かれていませんが、この本では音楽会を取り巻く商業主義に絶望してグランドピアノを湖の底に沈め、燕尾服を街頭で燃やすという行動でそれを示したことが語られています。

 

 プロとして生活していくには並外れた努力と幸運が必要なのがよく分かる。音楽では食べれなくても、音楽で繋がっているという纏めは、うがった見方で言えば、止めたくても止めらない麻薬のような芸事ということなんでしょうかねぇ。