素顔のアマデウス 10
コンチェルトの花束
曲目/モーツァルト
ヴァイオリン協奏曲第1番ロ長調 K.207
1. Allegro Moderato 7:20
2.Adagio 6:45
3. Presto 6:11
セレナーデ第11番変ホ長調K.375*
1. Allegro Maestoso 7:47
2.Menuetto I 4:16
3.Adagio 5:42
4.Menuetto II 3:10
5.Allegro 3:47
フルートとハープのための協奏曲ハ長調K.299(297c)**
1.Allegro 10:40
2.Andantino 8:20
3.Rondeau、Allegro 11:39
ヴァイオリン/ヤープ・シュレーダー
フラウト・トラヴェルソ/フランス・フェスター**
ハープ/エトヴァルト・ヴィセンブルク**
ダンツィ五重奏団*
オーボエ/本間正史、長谷川敏行
クラリネット/ピート・ホーニング、ハリー・ビルホルト
ホルン/アドリアーン・ファン・ウーテンベルク、ペーター・ステイマン
ファゴット/ブライアン・ポラード、フランス・ベルクフート
指揮/フランス・ブリュッヘン
演奏/アムステルダム・モーツァルト・アンサンブル
録音/1973/10、1971/08** ドープスヘジンデ教会,アムステルダム
1977* ルター派教会、ハールレム、オランダ
P:ヴォルフ・エリクソン
E:ディーター・トムセン
SEON BVCC-9101-03
このCDは1990年から91年にかけて発売された「素顔のアマデウス」という10巻からなるボックスシリーズの最後を飾るセットでセットです。この時代セオンはBMGグループに吸収されていて、同時にドイツ・ハルモニアムンディもその中に取り込まれていました。で、元々はそのドイツ・ハルモニアムンディのコレギウム・アウレウム合奏団をメインにした内容で、要はオリジナル楽器によるモーツァルトの演奏を集めたシリーズでした。ですから10巻の内9巻はDHM音源で、この最後の10巻だけがSEONの音源で纏められていました。
「セオン」は、テレフンケンの「ダス・アルテ・ヴェルク」シリーズのレコード・プロデューサーであったヴォルフ・エリクソンが1969年に設立し、グスタフ・レオンハルト、フランス・ブリュッヘン、アンナー・ビルスマ、クイケン兄弟といったベルギー、オランダのオリジナル楽器奏者を中心とするアーティストによる優れた演奏の録音を制作したレーベルです。「セオン」レーベルの録音活動は1983年まで続き、第2次大戦後に興ったバロック音楽やオリジナル楽器演奏への関心を継承し花を開かせ、現在の古楽ブームの隆盛へつなげる原動力の一つとなりました。
さて、1992年はモーツァルト没後200年で沸いた年ですが、このセットもそれに合わせての企画でした。ただ、DGGやフィリップスに比べてソースの少ないBMGはかろうじて古楽器の演奏を集めてこのシリーズで対抗していました。
ここで取り上げた第10巻も3枚組で、取り上げているのはその中でも3枚目です。他の2枚はヴァイオリンのための協奏曲作品を集めたものと、フルートのだめの作品を集めたものが収録されています。そして、取り上げている3枚目はヴァイオリンための作品とフルートとハープのための作品、そして管楽のためのセレナーデというオムニバスになっています。
最初はヴァイオリン協奏曲第1番です。バロック・ヴァイオリンの名手ヤープ・シュレーダーの独奏で、オリジナルのストラディバリを使用しての演奏となっています。ヤープ・シュレーダーは、こののちホグウッドの組織したエンシェント室内管弦楽団でコンサートマスターを務めています。
ここでの演奏はピッチが現代楽器と違い通常のA=440Hzよりも半音低いA=415Hzのピッチが用いられているようで、現代楽器の演奏に比べると半音低くなっています。また、当然ながらノン・ヴィヴラートで演奏しているために、通常の感覚で聞いていると違和感を覚えるのも事実です。そんなことで、最初聴いた時はなんて潤いのない響きなんだとがっかりしたものですが、人間とは不思議なもので、ピリオド奏法の音に慣れてくるとこちらの方が心地よく感じられてくるから不思議なものです。
中間で演奏されるのはセレナーデ第11番変ホ長調K.375です。当初はこの演奏が一番聴きやすかったのもそのためでしょうか。こちらは現代のピッチで演奏されています。このダンツィ五重奏団には本間正史や長谷川敏行が参加しています。本間正史さんは2016年に亡くなっていますから貴重な録音です。本間さんはこの後ブリュッヘンの18世紀オーケストラでも活躍して数々の名演を残しています。
エトヴァルト・ヴィセンブルクとフランス・フェスター
最後はオランダのフルートの名手フランス・フェスターが、フルートの原型となったフラウト・トラヴェルソを使用しての演奏で、モーツァルトのフルートとハープのための協奏曲を演奏しています。これらは録音当時、モーツァルトの作品をオリジナル楽器で録音した意欲的なアルバムでした。バックも、クイケンやビルスマなどオランダの古楽器名手ばかりで、ブリュッヘンの的確なサポートを得て、当時の響きが美しく再現されています。