口入屋用心棒 : 46 江戸湊の軛 | geezenstacの森

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口入屋用心棒 46  

江戸湊の軛

著者:鈴木英治

出版:双葉社 双葉文庫

 

 

 富士山の噴火によって江戸市中が混乱する中、江戸湾の入り口に三艘の船が碇を下ろし、湊に入ろうとする船を攻撃した。海上を封鎖しようとする一党の真の目的は何なのか!? 秀士館の師範代、湯瀬直之進と倉田佐之助がその真相に迫る! 人気書き下ろしシリーズ第四十六弾。

 

 前巻で南町奉行所状町廻り同心樺山富士太郎に待望の男の子が誕生したのですが、なんとそのタイミングで富士山が大噴火をしたのでした。宝永の大噴火として知られていますが、この噴火wikiに依ると、時系列的には

■11月23日(12月16日):昼前から噴火が始まる。火口の近くには降下軽石が大量に落下し江戸まで白っぽい火山灰が降った。午後3時頃小康状態となるが夕方から再度激しくなる。夕方からの降灰は黒色に変わり、火口近くにはスコリアが降下した。噴火は夜も長い時間続いた。

■11月24日(12月17日):朝方一旦静まるが、その後小田原から江戸にかけて終日断続的に降灰。

■11月25日(12月18日):前日同様朝小康状態のあと、断続的に噴火。江戸にも降灰。

■11月26日(12月19日):江戸では断続的な降灰が続くが、小康状態の期間が多くなってくる。

■11月25日 - 12月7日(20日 - 30日):噴火の頻度や降灰量が減っていった。

■12月8日(12月31日):夜になって噴火が激しくなる。遅くに爆発が観測され、その後噴火は終焉した。

 

 つまり、宝永4年11月から12月にかけて発生しています。ということでこの小説の時代設定が分かったのですが、どうもあまり史実とはリンクしていないようです。なぜならこの小説、年末から発生して、翌年2月まで続いていることになっています。

 

 まあ、富士山の噴火はこのストーリーのためのこじつけのような存在です。主人公の出身地は架空の沼里藩ですが、これも実在しません。ただ、沼津藩がモデルかなぁという程度です。噴火の影響での降灰は小説では伊豆半島方面で史実の江戸方面ではありません。また、この巻の事件の発端となる40年前の木曽の御嶽山の噴火は、史実では存在しません。

 

 このシリーズ自体が、最近荒唐無稽な展開になっていますが、ここでもとんでもない事件が発生します。なんと3隻の樽廻船が江戸湾を封鎖します。この時代に鉄製大砲を民間人が保有存在するというのも唐突ですが、この3隻の船で江戸湾を封鎖し、さらに日本橋に広がる幕府の米倉を爆破するというとんでもない事件に発展していきます。


 その中で湯瀬直乃進や倉田佐之助たちが活躍するのですが、どれもが描き方が中途半端で主人公はほとんど活躍しませんし、奉行所も今回は南町奉行が活躍する描写になっていて肝心の定町廻り同心樺山藤太郎はそれほど活躍をしません。


 また、敵方となる五十部屋唐兵衛のほうも、40年前の現老中首座本田因幡守に受けた恨みを晴らすということだけに目的があり、私怨を晴らしたところでこの物語は終わっています。そんなことで、米倉を爆破するまではスケール感のある展開ですが、その後は尻すぼみで、終わってみれば大山鳴動して鼠1匹という気がします。