口入屋用心棒 45 火付けの槍 | geezenstacの森

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口入屋用心棒 45  火付けの槍

 

著者/鈴木英治

発行 双葉社双葉文庫

 

 

 江戸の町は騒然としていた。相次ぐ地鳴りに、連日の大火。さらに顔を潰された浪人の仏が見つかった。南町奉行所同心・樺山富士太郎はただちに探索を始め、木場および老中の下屋敷、この二つの火元に疑いの目を向ける。するとそこに、さる大名家の“奇妙な取り潰し”との関係が浮かび上がってきた!大人気書き下ろしシリーズ第45弾。

 

 このシリーズ、最初はタイトル通りの口入屋としてのストーリー展開だったのですが、ここ最近の数巻は口入屋としての活躍は全くしていません。ということではテーマからは外れていっています。言ってみれば口入屋の後日談的な展開ですな。何となれば、主人公の湯瀬直之進は秀士館の師範代ですし、宿敵だった倉田左之助もまた秀士館の師範代です。そして、竹馬の友である口入屋の米田屋の主人に収まったのは琢之介です。

 

 この巻では最後に火山性地震が続いた後で、富士山が噴火します。江戸時代で富士山が噴火したのは1707年の宝永の大噴火です。このことで、この小説の時代が特定できることになりました。冒頭から地震が頻発して不安を煽ります。ただし、家屋が倒壊するような大地震は起こっていません。実際は富士の大噴火の49日前に宝永の大地震が起こっています。これは今で言う南海トラフ地震で、被害が大きかったのは東海や大阪地方であったことから江戸ではそれほど被害は出ていなかったようです。

 

 事件としては幕閣の老中に端を発する殿中刃傷事件とお家取り潰し、更には放火事件による大火事、そして、直之進の務める秀士館もこの火事で焼け落ちてしまいます。この家事が放火事件であると知れると直之進は正義感に萌えてこの犯人の征伐に乗り出します。

 
 小説はちゃらんぽらんなところがあり、この犯人を追うのは本来は火付盗賊改なんですが、南町奉行所も富士太郎が駆り出され、地道な捜査を続けます。ところがラストでは途中なんの活躍もしない直之進が突如現れ、火盗改や町奉行所を出し抜いてあっさりと犯人を見つけ自らが切り捨ててしまいます。いえばストーリーの大半が無駄な展開で終わっているとも言えます。ひとつの変化は富士太郎に待望の子供が生まれることでしょう。これが富士山の噴火の日に生まれるのは何かの伏線なんでしょうかねぇ。
 
 もう一つ残念なのは犯人が槍の達人という設定なので、富士太郎の上司である土岐之助とその妻の薫子が登場します。最初は槍ということでこの薫子が活躍するのかと思ったのですが、それは絣もしませんでした。ただただ登場人物を増やしてサブストーリーでごまかしているようなところも見受けられます。もうそろそろ、シリーズとしては終わっても良いような気がしますねぇ。