オイゲン・ヨッフムのシューマン、シューベルト | geezenstacの森

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オイゲン・ヨッフムの

シューマン、シューベルト

 

シューマン/交響曲 第4番 ニ短調 作品120

1.第1楽章: かなりゆっくりと - いきいきと

2.第2楽章: ロマンツェ(かなりゆっくりと)

3.第3楽章: スケルツォ(いきいきと)

4.第4楽章: ゆっくりと-いきいきと

シューベルト/交響曲 第4番 ハ短調 D417 《悲劇的》

5.第1楽章: Adagio molto - Allegro vivace

6.第2楽章: Andante

7.第3楽章: Menuetto (Allegro vivace)

8.第4楽章: Allegro

 

指揮/オイゲン・ヨッフム

演奏/ロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団

 

録音/1960/12/15-19 コンセルトヘボウ

 

フィリップス 13PC123

 

 

 

 

 

 両曲ともヨッフムにとってはこれが唯一の録音です。もともとヨッフムはそんなにレパートリーの広い指揮者ではありませんでした。中心になるのはドイツ本流の作曲家で、ベートーヴェン、ブラームス、ブルックナー、そしてモーツァルトでしょう。ここで収録されているシューマンは知る限りはこの1枚、シューベルトは他にバイエルン放送響との5番と8(9)番ぐらいしかありません。

 

 この一連のレコードは、フィリップスから「ヨッフム1300」というシリーズで1979年に発売されたものです。13PC-1から127まで2期に分けて全17点が発売されています。その中にはドレスデン国立管弦楽団とのハイドンが一枚、モノラル時代のバイエルン放送交響楽団とのワーグナーが一枚以外は全てコンセルトヘボウとの録音でした。ベートーヴェン以外はモーツァルトが2枚そして、このシューマン、シューベルトが一枚、ブルックナーが一点とレパートリーはかなり偏っています。

 

オリジナルジャケット

 

 で、やはりこのシューマンは異色です。マトリックスナンバーは835071ですが、レコードのジャケットは日本独自のデザインです。本来はシューベルトが先に来て、シューマンはB面収録となっていました。レコードの解説は大木正純氏で、最初に演奏について、ヨッフムの人となりから筆をとっています。

 

 

 商業録音のシューマンがこれ一曲というのも不思議なものですが、ここで聴かれるシューマンは立派なものです。個人的にはシューマンは表題のある1番や3番よりもこの4番が一番好きです。第1楽章冒頭から重厚な響きで一瞬にして聴くものを引きつけてしまいます。後はひとつひとつの旋律線をくっきりと描きながら、オーケストラが上手いのもあって雄大な音楽を奏でていきます。1961年から形の上では共同統治という形でハイティンクとコンセルトヘボウを率いていきますが、個人的には60年代はヨッフムのオーケストラだったような気がします。

 

 

 シューベルトの交響曲ではなぜか交響曲第4番が手元に多くあります。ワルターのものしかり、ペーター・マークしかりです。もともと学生時代は「未完成」が好きではなく、シューベルトを聴くとなると当時の9番「ザ・グレート」かこの4番というのが相場でした。まあ、タイトルもそうですが、この作品からモーツァルトやハイドンの影が抜けてベートーヴェンの接近が伺える作品となり、ロマン的な香りを際立たせる作品になっています。表題をシューベルト自身が付けたというのもそういう意気込みがあったのでしょう。

 

 ここではヨッフムはじっくり腰を落ち着けたテンポで、かなりスケールの大きな展開を見せています。ここでも、コンセルトヘボウのアンサンブルのうまさが目を引きます。それをヨッフムはシューベルトの歌謡性に合わせて十分に歌わせながら緻密な構成で曲を組み立てています。ペーター・マークの演奏はさらっとしていますが、ヨッフムはそこにドイツ的な訛りのようなものを取り入れやや粘りのある音楽を作り出し、音楽に深みを持たせています。今聴いてもこれは珠玉のアルバムです。