朝比奈隆の「ロマンティック」
ブルックナー/交響曲第4番変ホ長調「ロマンティック」
1第1楽章 快速に、速すぎぬように 19:24
2.第2楽章 アンダンテ・クワジ・アレグレット 15:22
3.第3楽章 スケルツォ.快速に 12:29
4.第4楽章 フィナーレ.快速に、しかし速すぎぬように 21:07
指揮/朝比奈隆
演奏/大阪フィルハーモニー交響楽団
録音:1993/07/21.22 大阪フィルハーモニー・ホール
1993/07/23 サントリー・ホール
1993/07/25 大宮ソニックシティ
P:平井ひろし
RD:江崎友義
E:高瀬広見
ポニー・キャニオン PCCL-00191
先日、ヨッフムのブルックナーを取り上げましたが、日本人の指揮者ならやはりこの人でしょう。まず、日本人指揮者として真正面からブルックナーに取り組んだ指揮者はこの朝比奈隆しかいません。みんなマーラーにはしゃかりきになっていますが、こと、ブルックナーに関しては消極的です。単発的に録音している指揮者はいますが、少なくとも、全曲と向かい合って全集を残しているのは今の所、朝比奈隆が唯一です。
小澤征爾にしても、マーラーは全集録音していますが、ブルックナーについてはここで取り上げている第4番だけです。まあ、他の指揮者も似たり寄ったりで、マーラーは積極的に取り上げるのにブルックナーはそれなりにしか取り上げていないような印象は拭えません。
さて、この1933年の録音は5日間3会場で収録されたテイクをミックスしたのになっています。ポニーキャニオンとしては最良の録音をディスクに残したいとしたのでしょう。実際、朝比奈隆はここまでに、守兵の大阪フィルと1976年の録音を皮切りに、新日フィルと1979年、日本フィルと1980年、1985年ホノルル交響楽団、大阪フィルと1989年、そして1992年の新日フィルと録音を残しています。
ただ、この録音はそれまでの録音を凌駕する進歩が見られます。聴けばわかるのですが、ブルックナーの重厚長大なスケール感がそれまでの演奏よりも充実しています。
オケが大フィルということもあり、野暮ったさは拭えないのですが、1990年代にはサイトウキネンが世界レベルで活動するようになり、日本のオーケストラレベルも格段に上がってきました。ここでも、大フィルの音のエッジは良く立っており、特に弦楽の響きは縦の線が揃い透明感があり、各声部の見通しが良くなっています。ただ、金管は今一歩というところでしょうか。ここでも、第1楽章の冒頭でのホルンは音が安定していないような部分も聴き取れます。ここでは5日間の演奏からのベストテイクをチョイスして収録しています。
しかし、通しての演奏自体は非常に安定したもので、どの楽章も突出したものがなく、中庸的なテンポを採りながら悠久とした流れを感じさせてくれます。
YouTubeにはこの録音のベースになっている映像がアップされています。これを聴いてみると、多分サントリーホールでの演奏がベースになっているのではないかということがわかります。
いいとこ取りをしているせいでしょうか、演奏が進むに従い音楽が生き生きしてきています。ここがライブのいいところでしょう。俗にいうツボにはまった状態で、ホールの聴衆と一体になった演奏が繰り広げられています。