紀尾井シンフォニエッタ東京の「英雄」 | geezenstacの森

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紀尾井シンフォニエッタ東京の「英雄

 

 

NPO法人 紀尾井シンフォニエッタ東京 NSAF−1005

 

 このCDが制作されたのは2007年です。価格の記入はなく非売品となっていますから会員に頒布されたものでしょう。これは、小生が「英雄」を集めていることを知っている友人から頂きました。

 

 紀尾井シンフォニエッタ東京が結成されたのは1995年です。この「英雄」は結成間もない1997年12月の定期の演奏会の記録です。年間5回ほど公演していますから第9回か10回目の定期でしょうか。HPには演奏会の記録がありませんから詳細は不明です。また、このオーケストラ、2016年に改称していました。現在は「紀尾井室内管弦楽団」というのだそうです。常任指揮者も尾高忠明氏からライナー・ホーネック氏に替わっていて、そのホーネック氏は2022年まで任期が伸びたようです。地方に住んでいると、こういう情報はなかなか目に触れないですからねぇ。こちとら、2009年にアントン・ナヌート氏が定期を振った頃の情報しか知りませんでした。(^_^;)

 

 まず最初にモーツァルトの「フィガロの結婚」序曲が収録されていますが、これは本当にオマケのような演奏で、音が団子状態で低域も不足していて、天吊りのマイク一本で収録したもののようです。2000年の録音にしては音質的には鮮度が足りません。

 

 それに対して、「英雄」の方は録音を意識した音作りがなされていて、音の広がりを感じます。元々室内オーケストラの編成で、メンバー表がインナーに印刷されていますが40人強の編成で演奏されているようです。ジャケットの写真は何故か指揮者のいない編成の演奏が使用されていますが、この写真とは楽器のポジションはかなり違うようです。

 

 写真ではティンパニが右に配置されていますが、録音では中央やや左目に聴こえ、ホルンは右奥から聴こえます。コントラバスは中央奥、やや右手に聴こえます。中央にヴィオラとチェロが配置され、第2ヴァイオリンは右手と対向配置になっているようです。

 

 第1楽章はピオド楽器のような速いテンポではなく、フルオーケストラのようなゆったりしたテンポでありながら小編成の特徴を生かしたリズミカルな演奏で、エネルギーがほとばしるはつらつとした音楽になっています。その分、各奏者の力量がストレートに現れる録音で、ホルンはやや力みが感じられ音が揺れているのが残念です。また、トランペットもコーダの部分でオリジナル通りに吹いてはいるのですが、音が引っ込んでしまっているところがあるのが残念です。

 第2楽章は飾らず自然な演奏ですが、リズムが少々硬くて音楽が流れていないところがあるのが惜しい演奏になっています。このオーケストラはこの後商業録音をエクストンレーベルで何点か発売していますが、そういうものに比べるとやはりちょっとレベルが足りていないという印象です。そのため、多分頒布に回されたのではないでしょうか。

 この録音は尾高忠明氏が50代の録音ということもあって、まだベートーヴェンのアプローチに少し迷いがあるのではないかという印象を感じます。というのも、最近同様の室内楽団によるFOC(フューチャー・オーケストラ・クラシックス)の演奏を聴いているので、どうしてもそちらと比較してしまいますが、アプローチ自体が大オーケストラによるどっしりとした演奏の影を引っ張っているような演奏スタイルだからです。

 

 第3楽章も第4楽章もテンポは安定していいますが、オーケストラの響きとリズムの間に齟齬があるように聴こえてしまいます。
 

 この2月には、先の久石譲率いるFCOがこの東京オペラシティ コンサートホールで第2回目の演奏会を開催します。長野を離れたことにより、より自由な環境で伸び伸びとした演奏を繰り広げるような気がします。紀尾井室内管弦楽団は800席ほどの紀尾井ホールのレジデンスオーケストラですが、一回目こそこの紀尾井ホールで演奏会を開きましたが2回目からはキャパ2倍の東京オペラシティ コンサートホールを使うということは、人気のほどがうかがえます。ここは、一番ホーネックに頑張ってもらわなければいけませんな。