ミステリなふたり
a la carte
著者/太田忠司
出版/東京創元社
鬼刑事の景子さんと、料理上手な新太郎くん。二人はごく普通じゃない出会いを経て(殺人現場)、ごく普通に結婚しました―京堂家の食卓に並ぶのは、旦那さまお手製のご馳走と名推理。キッチンの安楽椅子探偵が大活躍の8編を収録。--データベース--
昨日取り上げた作品の前の作品ということになります。ということで、シリーズ3冊目。1冊目が2001年(文庫が2005年)、2冊目が2008年(文庫が2011年)そして、この3冊目が2013年(文庫が2016年)刊行と、だいぶ間が空いています。ただ、1作目と2作目は出版社は幻冬舎です。しかし、シリーズですから内容はさほど変わっていません。登場人物が少し増えたぐらいでしょう。鉄女、氷の女王の異名を持ち、同僚、部下、そして、キャリアの上司すら恐れさせる女刑事の京堂景子ですが、家に帰ると年下の夫・新太郎に甘え、彼の作る料理を堪能するというパターンで構成されています。この落差がこりシリーズの魅力でしょう。そんなこともあってか、2015年には地元のテレビ局、メーテレでドラマ化されました。まあ、このドラマかも原作に劣らずライトな感覚に仕上がっています。
今回は一編ずつ料理を絡ませた章名で、新太郎さんが作るその料理が美味しそうで、謎解きよりそちらに目が行きそうで困りました(≧▽≦)!一編がやや短めで、事件の背景がさらっと語られていて、一作、二作より、より軽い感じでした。そういう軽妙さが好きです。警察官は生田刑事と間宮警部補が続いて登場、景子警部補の職場の様子は変化なし。でも、六品目とデザートに登場する、築山瞳がこれからどう関わっていくのか楽しみです。
事件の事を愚痴ると新太郎が思わぬ真相を導き出して、という安楽椅子探偵もの。殺されたシェフの部屋で発見された思わぬものや、かつて子供番組でヒットした曲になぞらえた殺人、バニラの香りがする現場と遺体など、風変わりな事件も読みどころですが、新太郎が景子のために用意する料理、焼きパプリカのマリネ、鯵の竜田揚げ、ベーコン入りの即席のがんもどきなどがとても美味しそうで良かったです
この小説の章立てです。
目次
一品目――密室殺人プロヴァンス風
二品目――シェフの気まぐれ殺人
三品目――連続殺人の童謡仕立て
四品目――偽装殺人 針と糸のトリックを添えて
五品目――眠れる殺人 少し辛い人生のソースと共に
六品目――不完全なバラバラ殺人にバニラの香りをまとわせて
七品目――ふたつの思惑をメランジェした誘拐殺人
八品目――殺意の古漬け 夫婦の機微を添えて
デザートの一品――男と女のキャラメリゼ
一品目の密室殺人プロヴァンス風は鮭のムニエルに後からトマトソースをかけることで、プロヴァンス風に変えてしまうというトリックのような殺人事件です。そして、2品目ではシェフの気まぐれサラダ等の気まぐれについてのウンチクには納得させられました。曰く、
<あれはね、イタリア料理によくある「カプリチョーザ」って言葉の直訳だよ。イタリア語で「気儘」とか「気まぐれ」って意味なんだよ>
小生は料理についてはあまり興味がありません。自身が糖尿を患っているせいもありますが、胃袋が満たされればなんでもいいのです。ただ、長く菓子類の仕入れに携わっていたこともあり、デザート類には少々こだわりがあります。そんなことで、最後に登場する書き下ろしの一編、「男と女のキャラメリゼ」は興味深く読みました。この一編、主役は鑑識課の築山瞳です。そう、「あなたにお茶と音楽を」では捜査一課に配属されることになる人物です。ストーリーはこうして第4作に繋がっていくんですなぁ。
さて、アメブロにYouTube以外の画像が貼り付けられませんが、それ以外のところでこの「ミステリなふたり」が公開されています。これはドラマオリジナルな作品として公開された第7話です。小説とは微妙にニュアンスが違いますが、まずまず楽しめます。