ミステリなふたり あなたにお茶と音楽を | geezenstacの森

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ミステリなふたり

あなたにお茶と音楽を

 

著者/太田忠司

出版/東京創元社

 

 

 愛知県警捜査一課内で広く敬われながら同時に恐れられている、通称〝氷の女王〟こと京堂景子警部補。ずば抜けた捜査能力と体術で犯人を追い詰めるクールビューティーな姿は、新人刑事・築山瞳にとって密かな憧れであり、目標だ。そんな京堂警部補は、自宅に着いた途端こう呻いた。「ただいまあ。ねえ新太郎君、お腹空いたあ」「お帰り。今作るから――」

職場では鋼鉄の刑事、だが家ではデレデレの景子さんと、料理と推理の達人・新太郎君の名コンビによる謎解き七編。--データベース--

 

 シリーズ4作目のようです。というのも、タイトルが気になって読み始めた一冊だからです。シリーズと言っても前2作と後2作は出版元が違いますし、さらには単行本発売時と文庫本とではタイトルが変わってしまっているというややこしいシリーズです。

 

 この本はタイトルが気になって手に取った一冊です。作者もあとがきで書いていますが、日本で最初の民間FM放送局として誕生したFM愛知(現在の愛称は@FM)の1970年代に放送された平日午後に放送されていた「あなたにお茶と音楽を」という番組から取られています。多分名古屋人でしたらこの番組を知らない人はいないのではないでしょうか。その番組のおしゃべりと曲をつなぐ間に流れていたのが、ディック・ハイマンの演奏するソロピアノの演奏の「ユア・ソング」でした。もちろんエルトン・ジョンの最初期のヒット曲です。デック・ハイマンはジャズ・ピアニストで作曲家でもあるのですが日本ではほとんど知られていません。「The Sensuous Piano Of Dick Hyman」というアルバムの3曲目に収録されていました。この曲が収録されたレコードも当時はマイナーなProjectというレーベルから発売されていたので、まあ知らない人がほとんどでしょう。

 

 

 しかし、名古屋では毎日この曲が掛かっていたといってもいいほどなので、よく知られていて当然なのです。こんな曲でした。

 

 

 

 この作品を取り上げるまでにシリーズはほぼ読んだのですが、途中から読むとあれれということがあります。前作では鑑識だった築山瞳が新人刑事になり捜査一課に配属されて登場しています。同じ一課の先輩刑事の生田より断然できる子という設定になっています。この間では彼女目線で事件が進むため、本来主人公の京堂景子警部補は夫の新太郎くんとの夫婦の食事の会話シーンがメインとなっています。その新太郎くんは、ついにお菓子作りにまでてを出しています。美味しいごはんにお菓子に紅茶、そう、この巻では新太郎が担当している本の関係で紅茶も重要なファクターとなっていて、妻の京子の胃袋ガッツリ掴んでさらには事件を解決しちゃうというなかなかの展開になっています。推理小説として読むと、ちょっとがっかりな展開もありますが、紅茶を飲みながら気楽に読めば、この小説のユーモアな世界にどっぷりと浸かることができるでしょう。

 

 この小説の章立てです。

 

目次

第一話「白い恋人たち」

第二話「小さな喫茶店」

第三話「雨にぬれても」

第四話「バードランドの子守唄」

第五話「夏の日の恋」

第六話「華麗なる賭け」

第七話「僕の歌は君の歌」

 

◆第一話「白い恋人たち」

 

 日本語タイトルはむちゃくちゃかっこいいのですが、映画の元タイトルは「13 Jours en France」は、「フランスにおける13日間」の意味の1968年にフランスのグルノーブルで行われた第10回冬季オリンピックの記録映画のことです。テーマ音楽はフランシス・レイが書いていて、大ヒットしました。

 

 

 ここでは雪が降っていないのにしたいには雪が積もっていたというミステリーが展開されています。

 

第3話 雨に濡れても

 

名古屋市の中村区、中村公園近くの鳥居通りで起こる事件です。歩道橋の上での殺人事件ですが、殺された男は雨に濡れていませんでした。こちらも死亡時刻と雨の関係が事件解決のヒントになっています。この話は試し読みができます

 

 

この後も、「夏の日の恋」ゃ「華麗なる賭け」といった名曲が登場します。そして、最後にはエルトン・ジョンの「僕の歌は君の歌」まで登場しています。これは読まないわけにはいかないでしょう。

 

 そうそう、太田忠司さんは名古屋出身の作家で、10月12日に名古屋市の鶴舞図書館で「名古屋で書く、名古屋を描く」という講演があります。残念ながら仕事で参加できそうにありませんが、次回は参加したいものです。