セルジュ・シュワルツのシベリウス | geezenstacの森

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セルジュ・シュワルツのシベリウス

曲目/
シベリウスViolin Concerto In D Minor, Op. 47 
1 Allegro Moderato 16:12
2. Adagio Di Molto 7:31
3.Allegro Ma Non Tanto 7:43
London Symphony Orchestra
Paul Freeman Conductor
Sergiu - Violin,
4.スヴェンセン/Romance, Op. 26 8:02
Sergiu Schwartz
グリーグ/Violin Sonata No. 3 In C Minor, Op. 45 
1. Allegro Molto Ed Appassionato 9:52
2. Allegretto Espressivo Alla Romanza 7:15
3. Allegro Animato 7:42
Sergiu Schwartz, violin
Rachal Franklin, Piano

録音/1988/02 キングスウェイ・ホール、ロンドン
P:アンソニー・ホッジソン
E:ボブ・アーガー

VOX UNIQUE VU9002

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 レコード棚の中からこんなCDが見つかりました。1990年に発売されたCDですが、発売窓口のなかった日本ではリリースされなかったものでしょう。VOXレコードがまだ元気だったころに録音されたものです。VOXの録音にこんなシリーズがあったとは知りませんでした。レコード時代には「VOX PRIMA」とうシリーズがありましたが、多分そのCD版ではないかと推察します。レギュラーシリーズよりもちょいとお高めの価格設定であったのでしょう。当然売れなくて1996年には廉価シリーズのVOX ALLEGROに移行して再発売されています。

 このCDはセルジュ・シュワルツのデビュー盤でもありました。日本ではほとんど知られていないヴァイオリニストでしょう。イスラエルのアカデミー・オブ・ミュージックで学びアイザック・スターンやユーディ・メニューインのマスタークラスで頭角を現します。その後すぎリスに渡り、ロンドンのギルドホール・スクールに進みさらに、アメリカ-イスラエル文化基金の助成でジュリアードでも学んでいます。

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 デビュー盤を北欧の作曲家の作品でまとめるというのもなかなかユニークです。ジャケットはダリの「マリアンヌ」が使われています。これはフランスの切手のためのデザインがで1979年に発行されています。

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 セルジュ・シュワルツのシベリウスは非常に男性的な演奏です。よく、第1楽章の出だしから細い線で奏でる演奏がありますが、これだとどうも曲想とマッチしないような気がします。名盤といわれるものは女流奏者のものが多いのですがどうも個人的には馴染めません。最初のとっかかりがスピヴァコフだったというのもあるのでしょうかね。とにかく豪快になります。曲は交響曲第2番と3番の間ぐらいに書かれていて、だんだんと交響曲から交響詩のような構成に変わりつつある時期ですが、ここではしっかり協奏曲の3楽章形式を守り、シベリウスらしい世界が広がっています。バックもいいのでしょうなぁ。ポール・フリーマン指揮のロンドン交響楽団です。シベリウスには定評のあるオーケストラですから、サポートはばっちしです。フリーマンについてはあまり知らなかったのですが、アメリカの黒人指揮者ということを今回調べて初めて知りました。ブリリアント全集にモーツァルトのピアノ協奏曲全集で伴奏指揮をしていますが、ほとんど聴いた記憶がありません。晩年はチェコ・ナショナル交響楽団の指揮者を務めていたことぐらいは知っていましたが、2015年に亡くなっていたのですなぁ。アメリカの黒人指揮者というと、ディーン・ディクソンが思い出されますが、この演奏に触発されて今度改めて聴いてみることにします。

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 VOXの録音というと焦点の定まらない、音が気が小さくまとまってしまうという印象があったのですが、ここではデジタル収録ということもあり、ダイナミックレンジの広い豪快なシベリウスを捉えています。助成らしいシベリウスを好む向きにはちょいと暴れまくっているという演奏ですが、シュワルツの若さと気鋭がいい方にプラスしている演奏です。

 それたとは対照的に2曲目のスヴェンセンの「ロマンス」はしっとりとした演奏です。バックもヴァイオリンのメロディに寄り添うようなサポートで好感が持てます。

 最後のグリーグのヴァイオリン・ソナタがまた聴き物です。こちらもシベリウス同様線の太い表現で、デビューアルバムにこのソナタを持ってきた自身のほどを感じさせます。それほど演奏される機会は多くない作品ですが、グリーグの3つあるソナタの中では一番有名で、小生はこの第3番は好きな曲です。

 もともとは女性ヴァイオリニストに捧げるために作曲したという経緯がありますが、実際は民族色の濃いなかなか骨太の曲ということもあり、シュワルツに向いているのでしょう。

 ナクソスのミュージックライブラリーの中にこのアルバムが残っているということでは、魅力的な一枚ということなんでしょうなぁ。